第31話 変わりゆく日常
(誕生日の後、日常に戻る中で生まれる変化)
① いつもの日常、でも何かが違う
8月も半ばを過ぎた。
猛暑が続く中、教会のボランティアに集まった5人は、それぞれの仕事をしていた。
「……暑いー!」
結花がうちわでパタパタと扇ぎながら、ぐったりと机に突っ伏した。
「まだ午前中だろ」
朔が苦笑しながら冷たいペットボトルを差し出す。
「ありがとう! いやー、最近暑すぎてヤバくない?」
「まあ、夏だからな」
そんな賑やかなやりとりを遠くに聞きながら、美紅はふと幸次の姿を探した。
——昨日までなら、こうして探すことなんてなかったのに。
(……私、気づいちゃったんだよね)
私は、幸次さんのことが好きだ。
そう自覚したのは、誕生日の夜だった。
「幸次さんの誕生花なんです」
千日紅を渡したとき、幸次さんはほんの一瞬、驚いた顔をした。
それを見た瞬間、心臓が跳ねた。
そして、そのあと。
——「悪くねぇな」
そう言って花を受け取った幸次さんの姿を、私は何度も思い出している。
(ああ、もうダメだ……)
一度気づいてしまったら、もう止められない。
それに——今も、幸次さんの姿を無意識に探してしまっている。
そんな自分が、怖いくらいだった。
② 幸次の違和感
「……おい、美紅」
突然声をかけられ、ハッとした。
目の前には幸次が立っていた。
「ぼーっとしてたけど、体調悪いのか?」
「えっ……あ、ううん! なんでもない!」
幸次はじっと美紅を見つめたあと、「……ならいいけどよ」と呟いた。
(何だったんだろ……)
美紅は胸の鼓動を抑えながら、思わず幸次の横顔を盗み見た。
——そのときだった。
ふと、幸次は美紅の姿が揺らいで見えた。
(……?)
目の前の美紅が、**ほんの一瞬、過去の誰かと重なった。




