表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/132

第26話 17歳、スキャンダルと炎上

(理想の女優像の崩壊、初めての拒絶と決意)


① 彼の気持ち、私の拒絶


「望月さん……俺、本気なんだ」


そう言われたとき、私はひどく困惑した。


彼——**真宮翔まみや しょう**は、今最も人気のある男性アイドルだった。


ドラマで共演したとき、彼は私に優しく接してくれた。


周囲のスタッフにも気遣いを見せる、誠実な人だった。


「……私は、そういうつもりじゃないの」


「でも、君といると落ち着く。美紅ちゃんも、俺といると楽しいだろ?」


「……」


楽しい、か。


確かに、彼は話しやすいし、一緒にいると笑うこともあった。


でも、それは「恋愛」ではなかった。


私は、誰かを好きになる余裕なんて持っていなかった。


「ごめんなさい」


彼の気持ちを、私は受け取ることができなかった。


——それなのに、スキャンダルは突然だった。


② 突然の熱愛報道


「望月美紅、人気アイドル真宮翔と真剣交際!」


見出しを見た瞬間、頭が真っ白になった。


「……これ、何?」


私は震える手でスマホを握りしめる。


SNSではすでに炎上が始まっていた。


《あんな清楚キャラだったのに、裏では恋愛してたんだね》

《美紅ちゃんのファンだったのに、ショック……》

《真宮翔にすり寄ったのか?》


違う。


私は何もしていない。


恋愛なんてしていない。


「でも、もう……どうしようもないんだよね」


この世界では、“噂”は“真実”になる。


事実なんて、どうでもいい。


人は、自分が信じたいものを信じる。


③ 夢が壊れる音


「美紅……あなた、説明しなさい!」


母の美花子が、怒りに満ちた声で叫ぶ。


「なんでこんな記事が出るの!? なんであなたはこんなことで騒がれなきゃいけないの!?」


「……私が、一番聞きたいよ」


「ダメよ、美紅……! あなたはこんなことでイメージを壊していい人間じゃないの!」


母は、私を叱るのではなく、世間に対して必死だった。


私のイメージが崩れることを、恐れていた。


「もう……限界だよ」


私は、小さな声で呟いた。


「……え?」


「もう、やめる」


「何を言ってるの? まさか、女優を……?」


「うん」


母は、一瞬理解ができなかったような顔をした。


「冗談よね?」


「冗談じゃない」


「ダメよ!! あなたは、私の——」


「“私の” じゃない!」


母の言葉を、私は初めて遮った。


「私は、お母さんのために生きてるんじゃない……!」


初めて、母の期待を拒絶した。


その瞬間、私の世界が音を立てて崩れた。


④ 静かな終わりの始まり


「……好きにしなさい」


母は、すべての感情を失ったように言った。


私は、母に背を向けた。


これで、やっと解放される。


でも、私は知らなかった。


この選択が、母を絶望させることになるなんて——。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ