表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/131

第24話 少女時代

(美花子の期待のもと、子役としてのスタート)


① 幼い頃の望月美紅


「美紅、笑って! もっと楽しそうに!」


母・美花子の明るい声が響く。


カメラの前でポーズを取る美紅は、ぎこちなく笑顔を作った。


——子どもの頃、私は普通の子どもではなかった。


気づけば、母の希望で芸能活動を始めていた。


私の夢ではなく、母の夢。


だけど、当時の私はそんなことを深く考えることもなく、ただ母が喜ぶ顔が見たくて言われるままに演技をしていた。


「すごいわ、美紅! あなた、本当にかわいい!」


オーディションに合格した日、美花子は満面の笑みで私を抱きしめた。


そのとき、母の温もりが心地よくて、私は嬉しかった。


(お母さんが喜んでくれるなら、それでいいや)


それが、子役としてのキャリアの始まりだった。


② 才能の開花と周囲の称賛


「美紅ちゃん、すごいね! セリフ、一発で覚えちゃうんだ!」


現場のスタッフや監督が口々に褒める。


私は何も意識せずに演技をしていただけなのに、大人たちは私を「天才」と呼んだ。


——天性の演技力、表情の作り方、セリフの言い回し。


どれも自然と身についていた。


「美紅、あなたは特別よ」


母の囁きが、私の心にしみ込んでいく。


——“特別”


その言葉が、子どもだった私を強く支配し始めていた。


③ 母の期待と、幼い違和感


「もっと、もっと美紅が輝けるように、頑張ろうね」


母は私に女優としての未来を見ていた。


私はただ、母の期待に応えたい一心で、演技を続けた。


——でも、時々思っていた。


(私は、普通の子どもみたいに遊んだりできないのかな)


同年代の子たちが公園で遊んでいるのを横目に、私はレッスンや撮影に追われていた。


母は、私が普通の子どもであることを許してはくれなかった。


「あなたは、他の子とは違うのよ」


その言葉に、私はただ「うん」と頷いた。


——私は、違うんだ。特別だから。


そう自分に言い聞かせながらも、どこか心の奥で、ほんの少しだけ寂しさを感じていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ