第10話 6人の食卓
(光一を含めた6人での外食/何気ない時間の中で変わる関係)
① きっかけは光一のひと言
「よし、今日はみんなで外食に行こう!」
昼下がりの教会。
掃除やボランティアを終えたあと、光一が突然そう提案した。
「え、マジですか?」
朔が驚くと、光一は豪快に笑う。
「マジマジ! たまにはみんなで食事でもしないとねぇ!」
「やったー!」
結花が手を叩いて喜ぶ。
「いいですね」
隼人も微笑みながら頷いた。
「どこ行くんですか?」
美紅が尋ねると、光一はちょっと考えるように顎に手を当てた。
「そうだなぁ……みんなの好きなものを聞いてから決めようか!」
「焼肉!」
「寿司!」
「パスタ!」
「ハンバーグ!」
「中華!」
「……意見割れすぎだろ」
幸次が呆れたように言うと、光一は豪快に笑った。
「いやぁ、いいね! みんなバラバラで面白い!」
「どこにしましょうかね……?」
美紅が少し困ったように言うと、隼人が静かに提案した。
「ここから近いところに、洋食屋があったはずです。そこならハンバーグもパスタもあるし、メニューが豊富ですよ」
「おお、いいじゃん!」
「さすが隼人さん!」
「じゃあ、決まりだな!」
こうして、6人での外食が決まった。
② レトロな洋食屋へ
夜、6人は教会近くのレトロな洋食屋にやってきた。
「おおー! 昔ながらの雰囲気ですね!」
結花が嬉しそうに店内を見渡す。
「懐かしいなぁ……喫茶店やってた頃を思い出すよ」
光一は感慨深げに言う。
「光一さんのお店って、どんな感じだったんですか?」
美紅が尋ねると、光一は少し懐かしそうに笑った。
「落ち着いた喫茶店だったよ。コーヒーにこだわっててねぇ……。まあ、隼人もよく手伝ってくれたよな?」
「そうですね。片付けとかよくやらされました」
「“やらされました”って……もっといい言い方ないのかい?」
「はは、冗談ですよ」
隼人の落ち着いた笑顔に、光一も満足そうに笑う。
③ それぞれの時間
料理が運ばれてくると、6人はそれぞれの食事を楽しんだ。
「これ美味しい!」
結花が嬉しそうにハンバーグを頬張る。
「美紅、それちょっとちょうだい?」
「いいけど……結花、私のパスタばっかり狙ってない?」
「いやいや、気のせい気のせい!」
「いや、明らかに狙ってる」
美紅が呆れたように言うと、結花は「えへへ」と笑う。
「幸次くん、どう?」
光一が尋ねると、幸次はゆっくりと頷いた。
「……うまいですね」
「それはよかった!」
幸次はこういう賑やかな食事に慣れていなかった。
60年前は、こういう雰囲気で食事をすることなんてほとんどなかった。
(……悪くないな)
そんなことを思いながら、静かにナイフを動かす。
「おい、幸次。お前ももっと喋れよ」
朔が冗談混じりに言うと、幸次は「いや、喋ってるだろ」と返す。
「いや、もっとこう、賑やかにさぁ」
「賑やかに……?」
「そうそう! たとえば……何が好きな食べ物?」
「……焼き魚」
「渋い!」
「別にいいだろ」
「いいけどさ!」
そんなやり取りに、光一がまた豪快に笑った。
「いいねぇ! みんながこうして話してるのを見ると、本当に楽しいよ!」
光一の言葉に、6人の食卓はさらに温かい雰囲気に包まれた。
④ 何気ない会話の中で
「ところで光一さんは、昔好きだった食べ物とかあるんですか?」
美紅がふと尋ねた。
「お、いい質問だねぇ! 俺はね、実はナポリタンが大好きなんだよ!」
「え、意外!」
「そう? 昔、喫茶店の人気メニューだったんだよ」
「へぇ〜!」
「隼人もよく食べてたよな?」
「そうですね。あれは美味しかったです」
そんな会話が続く中、隼人と結花はふと目が合った。
(……こういう時間、悪くないな)
お互いにそう思いながら、何も言わずに微笑み合う。
⑤ 幸せな時間
楽しい食事の時間は、あっという間に過ぎていった。
「いやぁ、満足満足!」
光一が満足そうにお腹をさする。
「本当に楽しかったですね!」
結花が笑うと、光一は「また行こう!」と明るく言った。
「幸次くんも、どうだった?」
「……楽しかったです」
「それはよかった!」
そんな何気ない会話の中で、6人は自然と笑い合っていた。
変わらないものと、変わっていくもの。
それを感じながら、それぞれの心に温かさが広がっていた。