【なろう500万字達成記念】知らない男から婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの学園を止めさせると叫びだしたんだけど
2020年の5月になろうで本格的に書き出して総合計の文字数が500万字に達成しまた
その記念です。
『電子書籍化決定】王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』8/26コミックシーモアで先行配信もよろしく。
この話はそのスピンオフです。
現代に蘇ったお義兄様と愛莉です。
「お前との婚約を破棄する!」
私はいきなり知らない男から婚約破棄を宣告された。
私は目を見開いて男を見た。
はああああ!
そう叫ばなかった私を褒めたい!
そんな事をしたら淑女としてなっていないとかまたお義兄様から怒られるところだった。
というか、ここは乙女ゲームの世界ではないし、異世界恋愛の世界でもないのだ。
現実世界だ。
何故、知らない男からいきなり婚約破棄されなければならないのだ?
というか、私は婚約なんてしていないし……
この目の前のスカポンタンなんて見た見た。
さすがの私も開いた口が塞がらなかった。
というか、私、城後愛莉は今日、この学園八峰学園に入学してきたところなのだ。
何で入学してきたところでこんな事を言われないといけないのだ?
元々私は私学の名門、白鳥中等学園にいた。
そのまま高等学園に入学すれば良かったのだが、白鳥高等学園に行けば、また煩いお義兄様がいる。
私も高校生活を少しはエンジョイしたいのだ。
部活に入ったり、男の子とお付き合いしたり、云々……
中等部の時は本当に最低だった。
男と付き合うのは厳禁だの、門限は17時だの、テニス部に入るというとあんなナンパな部活はダメだの、入るならお義兄様のいる剣道部にしろだの……誰が剣道部なんて入るのよ!
あんなむさくるしい部活は嫌だとお義兄様に言ったら、怒ったお義兄様が一週間口をきいてくれなかった。
でも、別に私は何も問題は無かった。
煩いお義兄様がいないうちにと、門限の17時は無視して、男の友達とマクドに行って、これ幸いとテニス部に入ろうとしたら、何故か顔を腫らした部長が出て来たのだ。
「いやあ、愛莉君。君、玲音の義妹なんだって。自分としてはぜひとも入部してほしいのだが、反対する奴がいてね」
と嫌そうに言われて、断られてしまったのだ。
絶対にお義兄様が何かしてくれたに違いない。
「お義兄様、どういう事! なんでお義兄様が私の中学生活を邪魔するのよ!」
私がムッとして突っかかると、
「何を言っている。愛莉。俺は邪魔なんてしていないぞ」
「じゃあ、何でテニス部の部長の目が腫れていたのよ」
「たまたまひじが当たっただけだ」
お義兄様はひょうひょうと言ってくれたが、絶対に嘘だ。
お義兄様がわざと肘鉄を食わせたに違いない。
何しろお義兄様は剣道合気道空手柔道云々。全部足したら両手両足では足りない段位を持っているのだ。
喧嘩してお義兄様が負けたなんて聞いた事が無かった。
その過保護なお義兄様から離れるためにお母さまに相談して、財界では白鳥学園と双璧をなすこの八峰学園に入学したのだ。
それを後で知ったお義兄様の怒った事と言ったらなかったが、私は無視した。
「愛莉、お前、いくら英語の嫌味が嫌だからって、何も名門の白鳥を止めて三流の八峰なんて行くことはないだろう」
とか理由のわからないことを言ってくれるだ。確かに英語の嫌味な先生は嫌だった。名前も忘れてしまったが……。私は元々英語は苦手だったのだ。それをお前の義兄は英語が得意だったのにとか散々嫌味を言われて更に嫌になっていた。高等部でもこの嫌味が担当かと私はうんざりしていたのだが、学園を代わったので、確かにその心配はなくなった。
でも、学園を替えたのはお義兄様と離れたかったからだとは、さすがの私も口に出来なかった。お義兄様に言って良いことといけないことは私にも判るのだ。
そして、煩いお義兄様を何とかなだめすかして、入って来たこの学園の入学式も終わるかどうかの時に、いきなり婚約破棄されたのだ。
してもいない婚約を!
私には意味が全く分からなかった。
「あのう、人違いだと思いますけれど……」
私が恐る恐る言うと、
「何を言う、お前は城後愛莉だろうが」
この薄らトンカチの言う事は合っていた。
「そうですけれど、あなたのお名前を私は存じ上げていませんけれど」
「何だと! 貴様、俺様の名前を知らないのか?」
私の質問がこの男のかんに触ったようで、また怒り出したんだけど……
私が知るはずないじゃない!
この学園に入ってきたところなんだから。
「信じられないわ。あなた、三田財閥の御曹司の庵様を知らないの?」
横の偉そうな女が叫んできた。
「信じられない!」
「三田財閥の御曹司の一様の名前を知らないなんて」
「転入生なの、あの子?」
まだ講堂には多くの人がいたのだ。その子達が騒ぎ出した。
「俺の名前はだな」
三田が言おうとした時だ。
「今聞いたわ。三田さんよね」
私が出鼻をくじいて言ってやった。
「ちょっとあなた、横で聞いていたらいい気になって。この学園随一の実力者の三田様の事を三田さんなんて言うなんて、どういうこと!」
横のうるさい女がまたぎゃあぎゃあ言ってきた。
「そう言う貴女は誰なの?」
私はあまりのことに聞いてやったら、
「まあ、あなた、この学園にいて、私のことも知らないの?」
女は馬鹿にして私を見下してくれたんだけど……
「まあ、芹奈様の事を知らないの?」
「転入生っていうのは本当ね」
うるさい女に取り巻き令嬢たちも言ってくれた。
ああん、こんなんだったら、白鳥にいた方が良かったかも。あそこならセッシー達がいたし、ここまでぎゃあぎゃあ一方的に言われることは無かった。
いや、待った。でも白鳥にはもっとうるさいお義兄様がいた。
ここにいないだけマシだ。
「私の名は聞いて驚かないことね」
この女は面倒くさい。
私はいい加減に嫌になってきた。
「門田財閥の一人娘、芹奈よ」
やっと自己紹介してくれた。
「へええええ、門田財閥って聞いたことのあるようなないような……」
「な、何ですって!」
私のいい加減な答えに芹奈は噛みついてきた。だって、財閥って言ってもありすぎて良くわからないのよね。皆財閥って言っているし……
「あなた。門田財閥の私に喧嘩売っているの?」
芹奈が叫んできた。
「本当よ。芹奈様にそんな事を言うなんて!」
「口の聞き方も知らないの?」
「本当に信じられない!」
取り巻きの女たちが叫んで来るんだけど……
「おい、愛莉、どうかしたのか?」
そこに何故かお義兄様が現れたのだ。
「えっ、お義兄様。今日はお義兄様の高校の入学式では?」
私は驚いてお義兄様を見つめた。
「ああ、でも、在校生は関係ないからな」
平然と答えてくれたんだけど、ちょっと待って!
「はい? でも、お義兄様は生徒会長で歓迎のあいさつがあったんじゃないの?」
「まあ、副会長がいるからな。それよりも、愛莉の方が大切だろう。母さんは藍の入学式に行ったからな。父さんは来るのは無理だし、愛莉の入学式には俺が来るしかなかったんだ」
「ええええ! そんな私のために入学式をすっ飛ばしてここにいるってこと?」
義理の妹の入学式に出るために生徒会長の仕事をサボってよかったのかよ?
私は頭を抱えたくなった。
「誰、あのイケメン?」
「あの子の兄みたいよ」
「うそ、知り合いになりたいわ」
何故かお義兄様の登場で更に周りの人間が増えたんだけど。確かにお義兄様はイケメンだし、皆が気にするのはわかるけど。
「それよりも愛莉、どうしたんだ?」
「えっ、いや、そちらの方が、私と婚約破棄したいって」
「はああああ! 愛莉、どういうことだ!
お前は俺に隠れて婚約なんてしていたのか?」
「するわけないでしょう!」
激怒するお義兄様に私が反論した。
「本当だな?」
お義兄様が確認してくれるんだけど、私は当然のごとくうなずいたのだ。
「ならばこの男が嘘を言っているということか?」
お義兄様は三田を睨み付けた。
「な、なんだと、俺には芹奈がいるのに、親がそこの愛莉と婚約させようとしていると聞いたのだ。お前の妹が色々画策して俺の両親に取り入るか何かしたんだろうが」
「はああああ! 何故俺たちが貴様の両親に取り入らなければならない。貴様のような三流の家に取り入る必要などないわ」
お義兄様が切れていた。
「き、貴様三田家に喧嘩を売るのか」
「貴様こそ城後家に喧嘩を売るのか」
「えっ、城後って日本二大財閥の城後家じゃないの」
「嘘! あのイケメン、日本二大財閥の一つの城後の御曹司なの」
「凄い、私もお近づきになりたいわ」
「私もよ」
私達はあっという間に、女達に囲まれそうになった。
「そうだ。わが城後家が三田なんて三流財閥の機嫌を取る必要は無いだろう」
「何だと、三流だと、貴様言いたいことをいいおってからに」
「ふん、事実だろうが。何ならやるか?」
けんかっ早いお義兄様はすでに腕まくるしているんだけど。
「いやそれは」
三田は慌てて引いた。
いい判断だと思う。お義兄様は本当に殴ってしまうのだ。いつも本当に、それでとても苦労している。
「良いな、愛莉が貴様の婚約者になることなんて金輪際ない。貴様の横の胸がでかいだけの女も安心するが良い」
「な、何だと」
「ななんですって、胸がでかいだけの女ですって」
二人がキィーーーーーと私達を睨みつけるがお義兄様は全く無視した。
「愛莉、入学式も終わったのならば、『カフェ・ロアール』でいちごパフェでも食うか」
「えっ、本当に!」
私の気分はあっという間に最高潮に達した。
カフェロアールはなかなか高いのだ。
パフェなんて1つ下手したら3千円もする。
でも、値段が高いだけにとても美味しいのだ。でも、私の小遣いでは年に一回食べられるかどうかなのだ。
食べに連れて行ってくれるということはお義兄様の奢りだ。こういう時は躊躇してはいけない!
「行く、すぐに行く」
私はぱっとお義兄様の腕にすがりつくと頷いたのだ。
お義兄様がここにいるのも取り敢えず、カフェ・ロアールの前に忘れることにした。こういう時はお義兄様をヨイショしておくに限るのだ。
まだ、何かブツブツ文句を言っている三田等を放っておいて、私達は学園を出て、カフェ・ロアールに向かった。
カフェ・ロアールは、流石に各地で入学式の行われている今日はまだ空いていた。これから混むかもしれないが。見晴らしの良い席に案内されて、私はご機嫌だった。
「しかし、八峰学園も大した奴はいなかったな。なんか三流財閥の子弟とかが多かったぞ」
「そうかな」
お義兄様の言葉を私は右から左に流した。
「そんな三流の奴らほど嫉妬心は強いからな。愛莉、今からでも遅くない。白鳥に転入してだな」
「お待たせしました」
お義兄様の言葉をぶった切ってオーナーが巨大ないちごパフェを持ってきてくれた。
オーナーナイス! 私の困り顔を見かねて出してくれたのだ。
私はお義兄様の言葉を無視して。
「オーナー、めちゃくちゃ美味しそう」
「愛莉様。美味しそうではなくて美味しいのです」
オーナーが笑って私の言葉を訂正してくれた。
「あっ、そうでした。いただきます」
私はそう言うとスプーンで1口すくって食べた。
クリームが口の中で蕩ける。
「美味しい!」
私は満面の笑みで答えた。
「ほら、もう一口」
今度は諦めたようにお義兄様が私の口に持ってくる。
仕方無しに私は口を開けた。
うーん、これも美味しい。
義理の兄に食べさせてもらうのもどうかと思ったのだが、いくら言っても聞かないので、最近は諦めているのだ。
更に一口お義兄様が私の口に放り込んでくれる。
オーナーは私達の食べさせ相いに、呆れたように肩をすくめて、下がってくれた。
周りから黄色い悲鳴が聞こえるが、お義兄様はイケメンなのだ。その辺にいるアイドルよりも。そのお義兄様が私なんて地味な女に食べさせしているから、周りの女どもが騒いでくれているのだと思う。
ムカつくから私もお義兄様にすくってお義兄様の前にスプーンを持っていく。
「はい、お義兄様」
「ン」
お兄様が喜んでパクっと食べてくれた。
なんか顔がニヤニヤしている。
尻尾があれば振っている感じだ。
私としては犬に餌付けしている気分だ。
それもとても強力な番犬に……
周りの黄色い声が木霊したが、私はいつもの如く全く無視した。
気にしていたらおちおち食べてられない。
そして、お互いに食べさせ合いしていちごパフェを私は堪能したのだ。
そして、翌日になった。
今日から授業だ。
私は朝から生まれて始めての電車通学に乗ることにドキドキしていた。
中学の時は車での送迎だったのだ。
それもお義兄様と一緒に。
でも、八峰学園は場所が違う。
私は車通学は絶対に嫌だとゴネて、生まれて始めて電車通学にしたのだ。
そう、電車通学なら、そこで男の子とお知り合いになれるかもしれない。
私はアニメとかラノベとかでの出会いをとても期待していたのだ。
でも、私は通学電車があれだけ混んでいるとは想像だにしていなかったのだ。
駅の凄まじい列に唖然としたが、なんとか、満員の電車の中に押し込まれた。
嘘ーーーーー! こんなに混んでいるの?
もうぎゅうぎゅうに詰め込まれた。
日本の通学電車がこんなに混んでいるとは思ってもいなかったのだ。
「あんた本当にバカね。そんなの常識よ」
後で散々セッシーにバカにされたけれど、本当に知らなかったのだ。
だから、お義兄様とかが止めたほうが良いと言ってくれたのは良く判った。
でも、お義兄様は車で私を送ってから白鳥に行くとか言っていたから、それは私がものすごく早く起きないといけないではないか。運転手の馬尻さんとかがものすごく早起きになってしまうから悪いと思ってしまったのだ。
でも、私は通学電車に乗っただけでもう疲れきってしまった。こんなんだったら、明日からは無理言って送ってもらったほうが良いだろうか?
そう思ったときだ。
さわーーーーっと
おしりが撫でられた。鳥肌が立つ。
ええええ!
何なの?
私が驚いて、キョロキョロした。
後ろのおじさんが触っている。
や、止めて!
でも、おしとやかな私は声が出せなかった!
「何してやがる!」
その時だ。地獄の閻魔様もかくやという低い声が電車内に響いたのだ。
ダアーーーーン
次の瞬間おじさんはお義兄様のパンチをもろに浴びて、吹っ飛んでいた。
満員電車の中を。空へ飛んでいた。
「「「ギャーーーーー」」」
悲鳴が上がる。
満員電車の中を頭上から落ちてきたのだ。
各地で阿鼻叫喚の世界になっていた。
「その男をひっ捕まえろ」
お義兄様の声とともに、何故か社内に乗っていた黒ずくめの男の人達が動き出す。
あっという間に男は捕まって次の駅で降ろされていた。
「大丈夫か、愛莉」
私はがっしりとお義兄様に抱きかかえられていた。
「お義兄様!」
私はお義兄様に抱きついたのだ。
私は震えていた。
本当に痴漢に襲われて怖かった。
でも、お義兄様の胸の中はとても暖かかった。
「愛莉!」
お義兄様は私を抱きしめてくれた。
本当にお義兄様はこういう時は頼りがいがあるのだ。
私は思わず漏れてきた涙をお義兄様の胸に押し付けて、制服を汚してしまった。
あまりのことに動転して、なんでお義兄様が一緒の電車に乗っているのか聞くのを忘れてしまった。
そのまま、お義兄様は校門まで私の手を繋いで送ってくれたのだ。
私は少し恥ずかしかったが、痴漢に襲われたところなので、お義兄様の心遣いが嬉しかった。
「いいか、愛莉、放課後も俺が迎えに来る。それまでは必ず、学校にいるように。図書館にでもいればいいだろう」
お義兄様はそう言ってくれた。
「うん」
恐怖の去っていない私はお義兄様の言葉に素直に頷いたのだ。
まあ、ボディガードとしてはお義兄様以上の人はいないし、今日は素直にその好意を受けようと私は思った。
でも、お義兄様、こんな時間に移動して授業に間に合うんだろうか?
と少し思いはしたが……
「あああら、愛莉さん。あなた、お兄様の送り迎えで学園に来ているの?」
校門に入ったところで、それを見ていた芹奈に嫌味を言われた。
「本当におこちゃまなのね」
私はその言葉にムッとしたが、今日は痴漢に襲われてお義兄様に助けてもらったので、芹奈の言う通りだ。
私は無視することにした。
芹奈の前をそのまま黙って通り過ぎたのだ。
「ちょっと待ちなさいよ。あなた私を無視するの!」
きっとして芹奈は文句を言ってきたが、
「ごめん、ちょっと時間がなくて」
私は教室に向かったのだ。
「ちょっと、あなたに話したいことがあるのよ。放課後時間を開けておきなさいよ」
芹奈が後ろから叫んでくれたが、どうせろくなことはない。
私は全く無視することにした。
授業は英語以外はそんなに難しくなかった。
数学にしても、生物にしても、既に白鳥でやったことが大半だった。お義兄様が、白鳥で学べないものはないと、豪語するだけはあった。
英語だけは相変わらず私は出来なかったけれど……
先生に当てられて、しどろもどろに答えた私は
「何なのあれでも英語を訳しているつもり?」
芹奈らに馬鹿にされた。
さすがにここは敵地と言う感じで、誰も私を援護はしてくれなかった。アウエーとはこんな感じなんだ。
でも、私は負けない!
健気なヒロインは皆に虐められても頑張るのだ。
私は益々やる気になっていた。
その日の放課後、私は芹奈が声をかけてくる前に脱兎のごとく教室を飛び出して、図書館に向かった。
八峰の図書館は白鳥よりも大きくて、いろんな書籍があった。
何と、ラノベまで置いてあった。
私は手近にあった『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』を手に取った。
この本は読んで見たかったのだが、「ラノベなんて下らない」とお義兄様が言って買えなかったのだ。人が買う本までケチをつけるな、と私は言いたかったが、既に社会勉強の一貫で小さな会社を起こして経営しているお義兄様から、お小遣いを援助してもらっている私は逆らえなかった。
そうだ、高校生になったからバイトしても良いかもしれない。
最も、お義父様もお義兄様も私には過保護だったから、聞いても許してくれないだろう。対策を色々考えないといけない。セッシーにでも頼ろうかと、私が考えていた時だ。
「城後さん、少しよろしくて」
私は女の声に顔を上げたら、女達に取り囲まれていた。
ええええ!
何、これ?
これが異世界恋愛でよくあるお呼び出しなの?
でも、ここ現代日本なんだけど、こんなのあるんだ!
私はうんざりした。
せっかく『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』を読み出して丁度面白いところだったのに!
サンタルの皇子がエリーゼを婚約破棄するところだったのだ。
私はいやいや本を閉じて、書棚にしまって女達について行った。
それが間違いだった。
「キャッ!」
女達はとある物置小屋の扉を開けて、私を中に突き飛ばしてくれた。
「生意気なあんたが悪いのよ」
そうリーダー格の女が叫ぶと扉を思いっきり閉めてくれたのだ。
私は慌てて、扉に駆け寄って開けようとしたが、びくともしなかった。
「えっ、私閉じ込められたの?」
私は青くなった。
「ふっ、閉じ込められただけなら良かったんだがな、お嬢さんには俺たちの相手をしてもらうんだよ」
後ろを振り向くと、この学校の制服でない、男達がいたんだけど、何で?
何か、いかにも柄が悪そうだ。
何故こんな奴らが学園にいるんだろう?
「結構可愛い子ちゃんじゃないか」
「これから、この子の体を拝めるかと思うと、本当に嬉しいぜ」
男達が私に向けて、歩いてきた。
「いやあ、助けて、お義兄様!」
私は思わず、お義兄様を呼んでいたのだ。
「ふんっ、おい、聞いたか? お兄様だってよ?」
「とんだブラコンだぜ」
「お兄様の代わりに俺達お兄様が可愛がってやるぜ!」
そう言って、一人の男が私に触れようとしたときだ。
ドカーン
大音響と共に閉まっていた、扉が吹っ飛んで、私に手を掛けようとした男ともう一人が、飛んできた扉に巻き込まれて、吹っ飛んで行った。
「愛莉、大丈夫か!」
そこには怒りのオーラ満載のお義兄様がいたのだ。
「お義兄様!」
私はお義兄様に抱きついていた。
良かった。来てくれた!
「愛莉!」
お義兄様は私を抱き止めてくれた。
「もう大丈夫だ」
そう言うと、私が頷くのを見て、後ろに庇ってくれた。
「貴様、何奴だ」
「よくもうちの義妹に手を出そうとしてくれたな」
指をボキボキならしながらお義兄様が叫んでいた。
「ふんっ、こっちは五人いるんだ。勝てると思うなよ」
そう言うと、男達はお義兄様に殴りかかったのだ。
でも、お義兄様にそのへんのならず者が勝てるわけないのだ。
真っ先に殴りかかってきた男がお義兄様の渾身の蹴りに吹っ飛んでいった。
二人目は顔面を殴り飛ばされて飛んでいった。
三人目は殴ってきたところを躱して膝蹴り浮き上がったところをお義兄様のアッパーで吹っ飛んでいた。
残り二人、
「この野郎」
二人は刃物を取り出していた。
「そうか、刃物を出したか、では手加減は不要だな」
お義兄様が不吉な声を上げて破落戸が一瞬怯んだ隙に一人は飛び蹴りで顔面をふっとばして、もうひとりは斬りつけを手で捻り上げて、
「痛たたたた」
男が痛みでナイフを取り落とした瞬間、バキット何かが折れる音がしたような気がしたが、投げ飛ばしていた。
七人の男達は一瞬で伸していたのだ。
「愛梨何もされなかったか?」
お義兄様が私を抱きしめてくれた。
「うん、大丈夫。良かった、お義兄様が来てくれて」
私はお義兄様を抱きしめ返したのだ。
恐怖からか目からは涙が煽りれていた。
「玲音様。愛莉様、大丈夫ですか?」
その時には我が家の黒服のシークレットサービス達が駆け込んできた。
そして、ダウンしている男達を次々に拘束していく。
「遅いぞ倉持」
「申し訳ありません。学園の中に入るのに少し手間取りまして」
本来は学園に学園外の人間は入れないのだ。
後で聞いたところ男達は女生徒たちの家族として入校したらしい。
当然そんな事をしたら退学処分は免れなかった。
芹奈は今回の件は知らないとしらを切り通して無事に終わらせたみたいだ。
でも、怒り狂ったお義父様とお義兄様がただで済ませる訳はなかったけれど……
お義兄様の胸の中で泣いていた私をお義兄様はそのまま抱き上げてくれたのだ。
「えっ」
私は唖然とした。
完全なお姫様抱っこだ。
「嘘!」
「あの子お姫様抱っこされている!」
皆の見ている前でお義兄様は歩き出したのだ。
「ちょっとお義兄様!」
「黙っていろ」
私はずんずん歩いていくお義兄様にお姫様抱っこされて、そのまま車の中までおろしてくれなかったのだ。
馬尻さんの同情したような視線を受けつつ、開けてくれた扉の中にお義兄様は私を抱いたまま乗ってくれたのだ。
「ちょっとお義兄様。いい加減に降り……」
反抗する私にお義兄様はなんと私の大好物のショコラアイスを口の中に入れてくれたのだ。
ええええ!
でも、美味しい!
いや、ちょっと待て! これは文句を言わねば!
そう思うたびにアイスを口の中に入れられて、私はずっと子供の時みたいにお義兄様の膝の上に乗せられ食べさせられていたのだ……
結局、この様に治安のなっていない、八峰には私を預けられないと、私の白鳥への編入が即座に決まったのだ。
八峰には二日もいられなかった……
私の自由な高校生活が……
と思うこともあったが、まあ、この身の安全には変えられないと諦めざるを得なかったのだ。
お母様もこうなったら仕方ないわね。と私の味方はしてくれなかったし……
そして、翌日からは上機嫌のお義兄様といっしょに通学することになってしまったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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