第四話 運命的な出会い
ごめんなさい。投稿が遅れてしまいました、本当にすいません。
「くっそー、厳しいか?」
バスに乗って三十分程たった頃ふと小声でいった。しょうがないんだよ、起きれなかったんだ今日。
自分の情けない所をしょうがないで済まそうとするのが三浦奨真の悪い所。
窓の外を眺めるとそこには田舎ならではの、畑があたり一面に広がっていた。まだ朝早いのに、農家さんたちが腰を下ろして作物を採っているのが見える。
「えーと、あれは山根さん家と………佐藤さん家か」
大体、この周辺に住んでいる住人とはみんな顔見知りだし、一度は絶対に会話をしたことはある。これは別に俺に限ったことではなく田舎特有の、地元民ならどんな人とも仲がいい、というやつだ。多分、全国のどこの田舎に行っても共通する事だと思う。
奨真もその節で、ガキの頃は近所のお婆さんの畑で出来たものをよく貰っていた。(夏のスイカはバチくそうまい)
いやー、懐かしいな。
幼い頃の思い出は偉大なものだなと、今日この頃実感している奨真。そんな彼を現実に戻したのはたった一つの香水だった。
くっー!クッセ〜!
思わず口に出してしまいたいくらいの臭さは、ここまでくると逆に尊敬しかねる。
なんと非常に、非常に災難なことにさっき名前を挙げたあの臭い香水をつけている人が俺の前の席に座っている。だが、そんな臭い香水をつけてるのに、後ろ姿だけだと完全に美少女と言わんばかりのスタイルをしている。
綺麗に真っ直ぐと揃った茶色の毛揃いは、少々癪に触るが可愛い。でもその魅力も、一つの香水をつけただけで全部パァッになってしまうのが残念ところ。てか、やっぱり見た事あるよな、この制服。
とにかく、臭いという感情だけが俺の脳内にはある。
「何とか、この臭さを乗り切ってみせる!」と、俺は残りの三十分やり過ごそうと意気込んでいたが、その思いも十分後には破綻した。
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「あー!もう臭いんだよ!」
大声でその言葉を発した直後、乗客の視線が一瞬にしてこっちを向いた。やばい、と焦る奨真だが、もうその頃には遅く何とか言い訳を考える。
「………あっ、いや、これは、…………その、あの、………ほら…………」
詰んだー!!完全に詰みましたね。
言い訳する言葉は全く思い浮かばず、赤裸々な顔を下に向けて黙り込む。
周りからは、小声でぶつぶつ何かを言っているのが聞こえる。「なにあの人?」「静かにしろよ」そんな声だ。
いや、じゃあお前らもこの臭さを体験してみろよって話し。これほんとに尋常じゃない臭さなんだからな。
こんな臭すぎる香水をつけるとか頭おかしいんじゃねーのって思うくらい。
心でそんな事を思っていても、何一つ彼らには届かないと、わかっている。別にいいのだ。だって、臭いから。(なんか、ちょっと名言っぽく言った。)
ただ、なんかみんなの視線が俺にだけ向いてるとなると、流石に恥ずかしい。
なんとか、奨真はその感情を誤魔化そうとした。「俺は間違っていない、そうだ、乗客の奴らが間違っているのだ」「いや、逆にいい匂いまであるな」なんてことで。
洗脳することこそが自分を救ってくれる。
そんな馬鹿馬鹿しいことをしていたら前の人である香水臭いさんが話しかけてきた。
「ごめんなさい、私の事ですよね………」
そうだよ!と、ご期待通り言ってやろうと思っていたが、彼女の体がこっちに向いた瞬間、俺は、恥ずかしさなんてすぐに忘れて、思いもよらない出会いに目を奪われた。
そう、そのつぶらな瞳と、真っ直ぐで長い薄茶色の髪はまるで女優を彷彿とさせた。いや、彷彿とさせたのではなく、彼女は正真正銘の………女優だったのだ。
「女優の、鴨志田恋花!?って、あっ…………」
またもや皆の視線がしょうまの方を向いた。だが、今回、彼はあまりそれを気にしなかった。
「シーー!声が大きいですよ」
彼女は右人差し指を自分の唇の前に置いて言った。おもむろに瞑った目もついには、可愛く見えてきた。
「あっ、ごめんなさい。えっとじゃあ本物ってことですか?」
彼女は指をもじもじしながらコクリと、頷く。
彼女の名は、鴨志田恋花、「天才美少女子役」と呼ばれ、一世紀に一人の逸材とその演技力は高く賞賛された。わずか四歳という若さで彗星の如く芸能界デビューを果たし、六歳の時にサスペンスドラマの主人公の妹役として一気にブレイクを果たすと、その後も知名度を上げていた。今では高校生ながら、国民的スターという存在にもなりかけている。ちなみに奨真と同い年。
(母親が彼女の大ファンなためその影響で俺も好きになった。)
ちなみに俺と同い年。恋花、最高!
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「プシューーッ、」
扉が閉まる音と同時に、車体の後ろの方から排気ガスを出しながら、それは出発していった。
あれから二十分程たったころ、俺はもうバスを降りていた。何でか今日は早く着いた。
さらに、あの後、なぜか俺は彼女と打ち解け会うことができた。いや、本当なぜか。自己紹介を共に交わした後からずっと。そのおかげで今日はバスを降りて駅に向かうまで一人ではなく、夢にまで見た天才美少女子役と一緒だった。
どうやら、彼女も俺が乗る電車と同じものに乗るそうだ。そのため俺は彼女と一緒に電車に乗ることになった。降りる駅こそ違うが一緒に登校できるなんて幸せでしかない。
「えっ!俺と同じじゃないですか!」
「そうなんですか!?」
「えへ、てっきりお金持ちだからあんなところには住んでいないかと思っていました」
「あ……そうでしたか…………」
彼女に俺はいろいろなことを聞いた。どこの学校に通っている?とか、この辺に住んでるの?とか本当にいろいろな事を。
そして、彼女は一つずつ丁寧に答えてくれた。学校は、駅の近くにあるところに通っているだと。なんだか、県一学費が高いお嬢様学校らしい、まあ金持ち何だと思うからな。住まいは、まさかの俺と同じ街に住んでいるという。あんな田舎に何で?だから、あのバスに乗っていたんだと思う。でも本当になんで?
そんなたわいもない話をしていたらいつのまにか駅のホームについていた。急がなければいけないということを俺は完全に忘れていた状態で。
それと同時に電車の扉が開く。中に入り込み、俺と恋花は車内に乗り空いている席を探した。
都内ならこの時間だと通勤ラッシュや、その他もろもろで非常に混雑するところを流石の田舎、人影一つ見えずに、のんびりと登校できる。
「ここ空いていますね」
俺を席に誘導すると、恋花。
「そうですね。座りましょう」
二人とも腰を下ろす。そして話を始める。さっきのように最初はたわいもない話を繰り広げた。今度は、恋花の仕事の話とか、二人の学校事情とか、そして、なんと彼女は俺の読んでるラノベの読者でもあったため、その話などで盛り上がった。
恋花が降りる駅までは、わずか二十分しかないが、俺と恋花はその刹那なひと時を優雅にすごした。
「へぇー、さすが鴨志田さん」
一応俺は今日が初対面なため、苗字呼びをする。家では恋花呼びだが。
「いえ、全然。でもー、あの最後のところは多分、筆者が狙ってたんだと思いますよ」
「いやー、すごいですよ」
今、話しているのは俺の十八番と言っても過言ではない、「現実主義者な俺は始まりの街で拾った激カワエルフと共にスローライフを送る」の話しだ。この作品は既に完結して二年程経つがまだまだ人気のある模様で恋花も好きらしい。その作品を彼女は完結前の最後段階で結末のストーリーを予想していたものが見事に当たったという。
「いや本当に全然」
照れくさそうに言って、彼女は数秒ほど黙りこんだ。そして、唇を少々上げ、その後、微笑とも言えないが、苦笑ではないような何とも言えない笑顔を浮かべ続けた。
「奨真君は面白い人なんですね。気が合うからそう思うだけかもしれないですけど。私、初めてです。一緒に話せてここまで楽しいって思える人なんて。」
少年は思わず、言葉に行き詰まってしまった。何と返すのが正解なのかはわからない。それもそのはず、少年の経験数では、この状況で何と言えば正しいのかわかるわけがない。彼は十六年間生きてきて、彼女なんて出来たことはないし、そもそも恋愛という言葉についても、疎いのだから。
彼女は顔を赤くしながら、続けた。
「だから、私はもっと、奨真君と仲良くなりたいです。距離を縮めたいので、だから…………」
恋花はためらった。
いや、これは幾ら何でも鈍感な俺にでもわかる。続く言葉が何となく、予想がつく。
少年は心で思いながらも、一つ唾を飲んだ。
“ゴクリ”と言う音と同時に恋花は言った。
「敬語じゃなくて、タメ口で話しましょう!!」
恋花は大きな声でそれを言った。誰もいない車内だったため別に変に目立つことはなく、誰にも見られていなかった。
奨真はポカン、とした表情で固まっていた。
恋花は慌てて言葉を付け足す。
「………ごめんなさい。駄目なら駄目でいいんですけど」
奨真はやっとその言葉が発された時に我を取り戻した。
「…………あっ、ああ、うん。」
それを聞いた恋花は悲しそうに言った。
「あっ、ごめんなさい。やっぱり、駄目でしたよね………失礼ですもんね…………………」
奨真はすぐにカバーする。
「あ、いやそういう意味じゃなくてタメ口で話すのは全然良いっていうこと」
「えっ、本当ですか!ありがとうございます!」
恋花はそれを言った後に本当?!と、また大きな声で言った。今度は微笑とか苦笑ではない、純粋な笑いだと俺の目には見えた。
続く




