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この日のために40年間、がんばってきました!!

作者: ソウ マチ

 大好きなお話がありまして♪


 藤原義江という男性オペラ歌手をご存じでしょうか? 大正から昭和にかけて活躍したオペラ歌手です♪ 彼はとても気さくな人物だったそうで、歌だけでなく人柄も素晴らしかったらしい。ある日、彼が自宅で食事をしていたら、床にデザートのケーキを落としてしまった。彼は「うちの床は清潔だから」と、落ちたケーキをひろって食べた。それを知った使用人の夫婦は「先生のおっしゃる通り、うちの床は清潔です! どこに食べ物が落ちても平気なくらい、毎日きれいに拭き掃除をしています! それにしても、本当に拾って食べてくださるとは!」そう泣いて喜んだそうです。


 彼は晩年、寝たきりになってしまいます。気の毒に思った彼の知人や友人たちが、お金を出し合って使用人の夫婦が老後を暮らせるだけのお金を渡していとまを出し、一人きりになった彼を最後の最期まで優しく面倒をみたらしい。彼は何年も帝国ホテル(!!)で寝たきりで暮らして、食事が食べられなくなってからは、ホテルのメニューにない特製野菜スープで命をつないだそうです。最期は言葉が出せず無言で息を引き取ったそうですけれど、その表情はとてもおだやかで幸せそうに見えたそうです。


 それにしても帝国ホテル……。彼の知人や友人たちは豪気だったのですね……。一泊いくらかかるんだ……。それを死ぬまで……。いやはや……。


 このお話で学んだことは「うちの床はいつもキレイにしておくこと!」です。他にも学ぶべきことは多々あるのですけれど、人望があれば帝国ホテルで死ねるというのも大事なポイントですけれど、そこまで大層なことは望んでおらん。人望もないし使用人もいないわたしができるのは、自分の部屋の床をいつもキレイにしておくことです。そうすれば食べ物を落としても大丈夫!!


 このお話を読んだのは、中学生の頃です。それから40年ほどこの教えを守ってきました! 来る日も来る日も床をせっせと磨いてきた!! いつか食べ物を落とした時に、この教えが役に立つと思うの!!


 そんなわたしに先日、僥倖(思いがけない幸運)が訪れました! プリンをいただいたのです!! ビンボー生活をしているわたしにプリン! 買いたくても買えないプリンをもらった!!


 プリンはかなり好きな食べ物です! 甘くてとろり♪ 幸せの味♪ けれどもプリンなんて贅沢なものを買う余裕はない! 野菜や卵を買うだけで精一杯なのに、腹のタシにならんプリンなんて夢のまた夢です!


 そんなプリンを買えないわたしが、プリンへの熱い想いをお話に書いています。先日完結した異世界恋愛のお話「☆お願いですから……」で「ぷりん」が登場します。ww 異世界にはない食べ物として、とろりと甘い「ぷりん」が登場してきます。異世界の人たちは大喜びでこの素敵な食べ物を食べます♪ あまりの美味しさに「天使の味」と感動して、ぷりんは大人気の食べ物になります☆ 


 ビンボーなので食べられないのでお話に書いて満足しようとしていたら、本物のプリンをもらった! しかも箱に入った高級なプリンです! すげええええええええ!!


 気軽に食べるわけにはいかないので、ちゃんとお風呂に入って晩御飯を食べてからプリンに臨みます。準備は万端! お久しぶりのプリン様です! しかも高級品!! 震える手で箱を開けると、プリン様が3つお行儀良くお並びになっていらっしゃいます。一つを取り上げてフタを開けると、容器いっぱいに乳白色でなめらかなプリンさまが充填されている。高級なのでカラメル様は別添えです。さて、どうしたものか……。


 この時点で高級プリン様に失礼がないように、お皿へご移動願うべきでした。ところが早く食べたくて焦っていた。スプーンで一口プリン様をすくって、その場で食べた。おいしいいいいい!! 食べた後には一口分の穴があいています。ここにカラメル様を投入すればいいと思うの!! 


 ちなみにこの作業、台所の流しの床にべったり座ってやっています。いくら部屋がせまくても食卓はあるのですけれど、わたしは流しのすぐそばの床が定位置です。それは、なぜか?? 理由はタバコです。ヘビースモーカーなので起きている間はずっとタバコを吸っている。タバコは吸うがタバコのニオイはキライなので、換気扇に一番近い台所の床が定位置なのです。この時も台所の床に座ってプリン様を開封していた。


 一口だけ食べてあけた穴に、慎重にカラメル様を注ぎ込みます。ところが久しぶりの再会に浮かれていて、ちょっとだけカラメル様がこぼれてしまった! 動揺したわたしは何を思ったか、身体を大きく揺らしてしまいました! すると大部分のカラメル様がこぼれ落ちてしまった!! なんてこったい!! 


 ここで思い出してください! 冒頭の話に戻ります! 床に食べ物が落ちても大丈夫なように、わたしは40年もの間、毎日床を磨いてきました! たとえカラメル様が落ちても大丈夫です! 床はピカピカ☆ 問題ありません!! この日、この瞬間のために床を磨き続けてきたのです!!


 清潔な床に貴重なカラメル様が落ちてしまったとしたら? 清潔な床は、清潔なお皿と同じです! 床に落ちたカラメル様をなめれば(!)よかろう! 床をなめるのはどうかというご意見もあるでしょうけれど、誰も見ていません! だってこの時のために、40年間まいにち床掃除をしてきたのですから! 満を持してなめるぜ! 意を決してかがもうとしたわたしは、絶句しました。なぜなら……、







 カラメル様が落ちたのは清潔な床ではなく、パイル生地のキッチンマットの上だったのです……。いくらキッチンマットが清潔でも、抜群の吸収力で吸ったカラメル様をどうすることもできません……(涙)。


 わたしはボーゼンとしてキッチンマットに吸い込まれたカラメル様を見ました。さっきまで魅惑的な色に見えていたカラメル様が、いまはただの茶色いシミになり果てている……(涙)。なんとかできないかとシミを眺めていましたけれど、どうすることもできません……(涙)。あきらめたわたしは、ため息をつきながら乳白色のプリン様を食べました。おいしいです。すごくおいしいのですけれど、ここにカラメル様がいてくだされば、もっとおいしかったのに……(涙)。


 ガッカリした気分で白いプリン様を食べていると、うっかり茶色いシミを踏んでしまった。ベタベタする……(涙)。口に入れば夢の味がしたはずのカラメル様が、いまはベタベタして困ったシミになっている……(涙)。


 あまりにもショックだったので、2個目のプリン様は食べていません。次に食べるときは、ちゃんとお皿へ移動して食べよう!! 


 40年間も努力してきた「床をキレイにしておけば、いつかイイコトあるさ作戦」は、大失敗してしまいました……(涙)。まさかキッチンマットが邪魔するとは、思ってもいなかった……(涙)。


 あとは「人望が厚ければ帝国ホテルで死ねる作戦」ですか……?? ムリだな……。そんな人望はない。それに万が一にも帝国ホテルに担ぎ込まれたら、キンチョーのあまり寿命が縮む!! 宿泊代を考えただけで「宿泊代がかかる! 一日でも早く死ななきゃ!」そう思う。たぶんあっという間に死ぬな……。


 だけど今日も元気です♪ 元気が一番! 元気に暮らしていたら、そのうち自力でプリンが買えるようになると思うの! それに冷蔵庫には、まだ2つもプリン様がいらっしゃるし! 次は上手にやりますね!! 見ていてください☆


 どうぞ良い一日を~♪♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] なめるぜ! に大爆笑。 妖怪っぽいですね。妖怪トコナメ(床舐め)とか居そうです。多分誰かに目撃されたら、叫び声を上げて逃げられるやつです。(笑)
[良い点] お高級プリンて、みっちみちに入ってますよね笑 [一言] キッチンマット:受け止めたぜ! 俺の繊維が、カラメルを余す事なく受け止めたぜ! と、ドヤ顔のキッチンマットが頭に浮かんだ(◍´ᯅ`◍…
[一言] 帝国ホテル……確かに逆に気が休まらなさそうです笑。 でもすごく素敵なお話ですね。 人望がある方かつお金持ちならではの美談……! 連載作品を拝見した時から、ソウさんのプリンへの愛情は伝わってき…
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