拜島との過去
萩原さんは、ビールを飲んで話し出した。
萩原「俺と拜島が、出会ったのは4歳の頃だ。同じ歳で、同じ場所にいたからすぐに仲良くなった。5歳から家庭での訓練が始まった。俺も同じだった。」
そう言って拜島さんを見てる。
萩原「拜島は、泣き虫で。家庭での訓練も嫌になると、すぐに逃げ出すんだよ。拜島のお母さんはとにかく優しくて、すぐに拜島を甘やかした。今の宮守君みたいにな。」そう言って笑う。
萩原「俺は、こんなやつが社長を守れる人間になれるのかずっと不思議だった。でもな、17歳の時、拜島の母親が突然亡くなって拜島はかわっていったよ。事故死だって聞いてるが、何の事故で死んだのか拜島さえ教えてもらっていない。拜島は、その頃から急に泣かなくなった。」そう言ってビールを飲む。
俺達が、出会った拜島さんになっていくんだ。
拜島「俺は、どうやら泣き虫な拜島が大好きだったらしい。母親を亡くし、何があっても弱音を吐かずに進んでいく拜島を見てたら…。どんどん拜島のいい所が消えていくのを感じた。坊っちゃんに仕えて三年後、拜島はひとりぼっちになった。」そう言ってビールをいっきに飲んで新しいのを取る。
拜島「拜島は、それから坊っちゃんだけが人生の全てになった。元々、訓練を重ねてる時も坊っちゃんは俺達を気に入ってた。特に拜島はお気に入りだったよ。泣き虫だけど、優しくてな。」そう言うと萩原さんは、涙を流している。
拜島「坊っちゃんに刺されたって話が、入った時。俺は驚いた。拜島は坊っちゃんに人生をかけていたのに、そんな事があるのかと思った。意識がない拜島に会った時、酷い話しだけど俺は安堵したんだ。酷いだろ、店長?」そう言って萩原さんは、俺を見つめる。
洋「酷くないですよ。萩原さんは、拜島さんが、目覚めたら死ぬんじゃないかって思ったんですよね?」
そう言うと萩原さんは、俺の頭を撫でて「店長、よくわかってんな。」って笑った。
萩原「俺はな、拜島を失うのが怖かったんだよ。目覚めたら、拜島はいなくなるって、だから毎日目が覚めるなって祈ったよ。灰谷から、目が覚めたって連絡を受けた時は神様を呪ったよ。錯乱状態になった事も聞いた。」萩原さんの目から涙が、どんどん溢れてくる。
萩原「俺、必死で仕事片付けて拜島に会いに行ったらさ。ICUで俺見た瞬間。拓人、なんだよって」そう言って拜島さんを見て笑った。
萩原「俺、ビックリしたんだぞ。だってそこに居たのは、泣き虫な拜島だそ。ハハハ」って笑ってビールを飲む。
萩原「そんな所に普通戻らないだろう?って思いながら、拜島と話した。病室でたら、涙が止まらなかった。でもな、俺は店長と宮守君に会ってハッキリとわかったんだ。」そう言うと俺を見て笑って
萩原「ありがとな、店長」って肩を叩かれた。
洋「俺は、何も…。れんが、すごいだけですよ。」そう言ってうつむいた俺に
萩原「店長、下向くな。顔あげろ。宮守君に対する拜島の愛情がすごいのはわかる。でもな、拜島があのままいれるのは店長のお陰だ。」
そう言って俺をジッと見てる。
萩原「拜島からは、店長に対しての信頼感と同じ想いしか感じない。違うか?」そうだ。あの日、俺と拜島さんは約束したんだ。れんを守るって
洋「違わないです。」
萩原「ハハハ、そうだろ?店長がいる限り、拜島はゆっくりしか大人にならねーのを感じる。でもな、いつか拜島が大人になっていって記憶が少しずつ増えてきた時は支えてやってくれないか?」
洋「俺がですか?」
萩原「店長が支えるんだ。宮守君と拜島を…。」そう言ってまた俺の頭をくしゃくしゃ撫でて
萩原「店長の事は、俺達全員で支えてやるから」って笑った。
俺の目から涙が流れた。
萩原「店長だって、これからあの子を支えなくちゃならないだろ?だから、俺達には嘘をつくな。」
そう言って肩をポンポン叩く。
萩原「皆、店長が大好きで話したがってるぞ。ほら、近づいてきた」って笑ってる。
洋「ありがとうございます。」俺は、そう言って近づいてくる人を見ていた。
東村「二人で話してるのか?」
萩原「店長に俺が、勝手に話してただけだよ。」
東村「私も話せないかな?」
洋「はい、大丈夫です。」
萩原「じゃあ、俺は拜島のところに行くわ。的井、店長とこにビールな」
的井「はい。」
そう言って萩原さんは、拜島さんのところへ行った。
東村さんが、俺の隣に座った。