拜島さんの事
的井さんは、うつむきながら話す。
的井「拜島さんが、坊っちゃんに刺された話を聞いた時。目が覚めたら拜島さんは死んでしまうのではないかと思った。それぐらい、拜島さんは坊っちゃんが全てだったから…。」
洋「だから、拜島さんの心は、出会う前に戻ったんですよね。」
的井「戻れたのは、宮守君と洋のお陰じゃないかな?」
洋「れんはそうでも、俺は違いますよ。」
的井「違わないよ。今の拜島さん洋が大好きだろ。それが答えだよ。」そう言って拜島さんを見てる。
的井「淳一にも、二人みたいな友達がいたら違ったのかもな。」
洋「そんな事ないですよ。」
的井「そんな事あるよ。拜島さんを守ったんだろ?灰谷さんに聞いた。拜島さん守る盾になったって。灰谷さんから、拜島さんと二人が何をしてきたか聞いたよ。」そう言って俺を見つめる。
的井「まだ、汚いって思うか?」
気づかれてるみたいだ。俺は、頷く。
的井「洋は、綺麗だよ。誰よりも綺麗だ。俺にはわかる。」
洋「そんな事ないですよ。」
的井「そんな事あるよ。拜島さんの病室で洋に会った時、思ったよ。宮守君の事、心から好きなんだろ?」
俺は、何も答えられない。
的井「それでも、羽田さんといようと決めたんだよな。自分に似てるからか?」
洋「駄目ですか?」
的井「いいんじゃないか、少なくとも羽田さんは洋がいると救われる。それに拜島さんも、宮守君がいると救われてる。」
洋「俺、的井さんが一人ぼっちになった気持ちわかります。母と二人暮らしだったから…。高校生の時、母親が死んで。俺は毎日死ぬ事だけを考えて生きていたから」
的井「生きるってしんどいよな」
洋「はい。」
的井「俺が生きてるのは、あの人達のお陰だよ。俺も同じ淳一がいなくなって一人になったら生きる意味がわからなくて死のうとしてた。」
洋「それ、わかります。」
的井「だろ?そしたら、萩原さんが飯食わねーから死にたくなるんだろって、毎日毎日うざいぐらい飯持ってくるんだよ。ハハハ」
洋「俺は、れんでした。忘れてたけど」
的井「だから、宮守君が大切なんだな。俺も萩原さん大切だよ。俺の命救ってくれた人だから…。」そう言って笑いかけてくる。
洋「皆さん、独身なんですよね?」
的井「東村さん以外は、そうだな。皆、自分の人生なんか歩いてなかったからな。俺は、萩原さんが幸せになってくれたら何もいらないけどな。」
洋「お兄ちゃんも、幸せにならなくちゃ駄目ですよ。」
的井「フッ、無理して呼ばなくてもいいよ。でも、ありがとな。」
そう言って俺の頭を撫でる。
的井「俺達に興味あるのか?」
洋「そうですね。皆さんといると幸せなんです。」
的井「さっき泣いてたのそれか?」
洋「生きててよかったって、こんなに幸せだって…。ただ思ったんです。」
的井「人の目が怖かったんだもんな。坊っちゃんのせいで」
洋「嫌がらせの話を聞きましたか?」
的井「灰谷さんに聞いた。酷いよな、上っ面だけ見てこいつは悪人って決められるんだもんな。」
洋「だから、あの日も怖かったんです。皆に汚いって思われたらって」
的井「皆、思わないよ。拜島さんに似てるだろ?皆。雰囲気も、話し方も…。当たり前だけど。唯一違うのは、萩原さんぐらいかな?」
洋「救われたんです。あの日の皆さんに…。」
的井「皆と話してみるべきだよ。皆、洋に興味がある。これから先、洋の心が辛い時、悲しい時必ず支えてくれる。宮守君もだけど、誰かを支えてくって本当に大変だよ。だからこそ必要になる。支えてくれる仲間が…。」
洋「俺、皆さんと仲良くなりたいです。」
的井「来ちゃったな。」
萩原「二人で、何話してんの?」
的井「萩原さん、俺の昔の話、聞いてもらってました。」
萩原「もうさんづけよくないか?同期だぞ、これから餃子屋。なぁ、店長」
洋「あっ、はい。」
萩原「ハハハ。的井、拜島が話たがってたぞ。」
的井「嘘ですよね?」
萩原「嘘じゃねーよ。さっき話してたら的井がって言ってたから。ほら、宮守君とも仲良くしてこい」
的井「わかりました。」
そう言って的井さんは、拜島さんとれんと亜香里のとこへ行ってしまった。
すごい、興味もたれてる。