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千々のレイライン  作者: 三四
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とある古城の王の話

 吾輩は王である。

 遥か昔よりクラウガルドの南の果てへと根を降ろし、仰々しくも猛々しい古城を守り抜いてきた。

 さて、我は王とは名乗っているものの臣下はこのメイドしか居ない。

 民と呼べる民もおらず、街もない。

 では何故そんな我が王を名乗っているのかと言えば、不遜な輩共より死魂の王と呼ばれているのが原因だ。

 死した肉体から魂を反魂の魔術にて契約・・し使役する。

 約1500年程前からこの土地に居を構え、700年程前には直々に神がやってきたこともあったものだ。

 しかし、昔は良かった。

 死霊の類を契約とはいえ縛る我の存在は周囲に適度な恐れと格を与えた。

 神と祀られ奉られた時期もあった。

 だが、700年前の地滅の出現暴走の時に流石に世界を見兼ねた神が龍脈を開いてしまった。

 この星が生まれてから幾年も溜め込まれた地力は世界へと降り注ぎ、地力は魔力へと呼び名を変え、一部が有していた雅術は法術として広くへ普及した。

 龍脈より程近く、地滅の穴にも近くに位置するこの土地は当時相当な数のケモノが押し寄せたものだ。

 それを力に言わせ、800年溜め込んだ我が死霊達を契約に従い行使し戦線を維持し続けた。

 地滅の出現暴走が終わると周囲に生気は消え失せた。

 200年ほど前に使いを出した時には相当な距離を北に進まねば生者の気配は確認できなかった程だ。

 そんな折にやってきたのがこのメイドであるシェリアという者だ。

 正確に言えばやってきたと言うより拾い受けたという方が正しいだろう。

 大型の魔獣を撃ち落とした死霊が我に報告を上げてきたときは驚愕した。

 魔族とはいえ生まれて間もない赤子が魔獣の住処に持ち替えられる際に我が所へと降り落ちて来たのだから。

 それから、暇も時間も持て余すようになってきた近年の隙間を埋めるためにコレを育ててみる事にしたのだが、初めは死なばそれまでと軽い気持ちでやっていた。

 しかし、我も元は人だからなのか赤子の魅力に毒を侵され気付けば200年以上が経過している。

 高位なエルフの血筋が混じっているらしく、寿命は長く地力への適性も高い。

 妙ななつき方をしたこの娘は150年前に世界を見てくると15年ほど旅をし帰ってきた時には、世界最強はメイドであると言い出しそれからメイドとして振る舞うようになった。

 そしてつい最近といっても50年程前だが、ある1人の女がこの古城へと訪れた。

 年は15.6くらいだろうか。

 白く透き通るような肌に夜のような黒い髪を靡かせた綺麗なおなごであった。

 なんでもシェリアの噂とやらを聞きつけここまでやってきたらしい。

 噂というより伝説のような話ではあるが、100年程前にとある魔族のなんだかという王国に当時最強と呼ばれるメイドが居たらしい。ある時、そのメイドを打ち倒す女が現れ、2人は戦いを通して絆を感じ友となった。その最強と歌われたメイドが死にゆく時には女がやってきて大粒の涙を流し消えたそうだ。

 やがてその王国では2人の絆を称え象が作られるなど神格化されていたのだが、ある時その国が出現暴走にあった。

 その時、女がやってきて一掃し帰っていったらしい。

 それからというもの、この話は絆を現す教訓として、また国の守り神として言い伝えられたという。


 間違いなくウチのシェリアだろう。

 話のタイミングで確かに出かけると言って戻らない日が幾日かあった。

 しかし、まさかその幾日で伝承として語り継がれているとは思うまい。

 どうにもこのエリスという女は、高位のエルフが先祖返りを起こしたらしいのだが、魔族の間で先祖返りは凶星と呼ばれ忌み嫌われる。

 そこで、自主的に村を出てから5年程この土地を探し回り、遂に辿り着いたと言うのだ。

 時間はあるし、暇もある。最近は特にシェリアも手を掛けることが少なくなり丁度新しい事を始めようと思っていたところだった。

 この女へ地力の真髄を叩き込み。凶星等と言った故郷へ名を轟かせてやろう。


 そうして女がやってきてから50年程掛けて我が持てる地力の深淵へとどっぷり浸からせた。

 シェリアも自身を慕ってくれているのは嬉しいのかメイドの真髄と言っては暗器の使い方や礼儀作法を仕込み、遂に我々から見ても十分な力を付けた頃、女はやりたい事が出来たと言う。

 世界情勢の視察で龍人の里を訪れた時に見かけた男がどうも気になるとか。

 我の娘を誑かせたその男を殺してやろうかと思ったが、シェリアに酷く睨まれたので大人しくすると決める。

 ともかく、その男に惚れた女は挨拶もそこそこに行ってきますと元気に城を飛び出していった。

 さて、50年ぶりに2人の生活へと戻ってしまったが少しシェリアが嬉しそうなのは何故だろうか。

 エリスにはただただ無事と幸せを祈るばかりである。

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