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悪代官がゆく

作者: 倉 雲

ワシの名前は、徳田 助兵衛。お江戸幕府より地方の天領を預かる代官を代々承っている。


ワシの代官地は、先代まではぱっとせなんだが、ワシの代になってから灌漑や開墾、特産品の出荷などを行うことによって

領地を活性化しておる。

まぁ 幕府には正確に伝える必要もあるまいと少々経費を多く利益を少なく報告し、生活を豊かにしておるがのう。

幕府の上役に広く利益を撒いておるから、査察などの情報も入ってくる。

よっぽどヘマをしない限りはバレることもあるまい


バタバタバタ


廊下を走るでない。何度言えば治るのじゃ。


なに?老中 松木様より早馬がこられたと。

これは大変。すぐ謁見の間に向かう。使者をお通しせよ。


バタバタバタ


ワシは、慌てて謁見の間に向かい、下座に座った。


その後、使者が謁見の間の上座に入ってくる。

「老中 松木様より密命を持って参った。近くへ寄れ。」


ワシが近づくと使者は2通の手紙を差し出した。


「1通は、今度の査察の日程じゃ。もう一通は、読んだら破棄せよと仰せられておる。」


ハハァ


ワシは、恭しく手紙を受け取った。


「では、私は帰らせていただく。」


えっ。持て成させていただこうと考えていましたのに。

鉢合わせすると不味い。

そうですか。残念です。

では、次回は本日分も合わせて持て成させていただきます。


使者は、即時に戻っていった。


何々、尾張のご老公がこの天領を調べているとな。

尾張のご老公かぁ。幾つか派手に横領している代官を糾弾し、罷免していると聞いているなぁ。

ワシの領も豊かに成ってきているから、目を付けたのかも知れんのう。

こういう時は、下手に動くと察知されるというし、大人しくしておこうかのう。


2通の手紙を灰にしながら呟くのだった。



※※※※  数週間後  ※※※



「たのもー。」


ん。誰か来たようじゃな。


バタバタバタ


なんじゃ。騒ぐでない。廊下は走るなといつも言っておろうが。

何度言っても治らんのじゃから。


なに?尾張のご老公がこられたと。

これは大変。すぐ謁見の間に向かう。ご老公をお通しせよ。


バタバタバタ


ワシは、慌てて謁見の間に向かい、下座に座った。


「おい徳田。不正の証拠を出せ。」


えっ 不正なんてしませんけど。


「不正していなければ、この領がこんなに豊かなはずがない。

何か不正しているはずだ。

してなくても証拠を出せば許してやろう。」


あのぅ 言われていることが分かりません。

私が不正を行っているというのなら、ご老公が証拠を持ってくるのでは?


「不正の証拠がないから乗り込んできたのだ。俺は今までこうやって尋問しながら不正の証拠をつかんでいるのだ。

早う出せ。」


不正をしていないのに出せというのはご無体な要求ではないでしょうか。

そこまで言われるのであれば、十分に調べて頂ければ不正がないことが分かると思います。


「好し、そうさせてもらう。」

「まずは、書斎を見せてもらおう。」


承知しました。


トコトコ


※※※  書斎  ※※※


「好し。文机を見せてもらおう。」


ゴソゴソゴソ


「ほれ。やっぱり証拠があるじゃないか。これを見てみろ。」


そこには、江戸の大店に発注した一部をキックバックした金額が記載されている。


あのぉ。私は、その大店と取引をしたことがないのですが・・・


「なんだと。あの老中め、いい加減なことを言いやがって。

じゃあ、こっちの証拠だとどうだ。」


ご老公は、懐から別の帳簿を出してくる。


いやいや じゃあって何ですか。

それに証拠をご老公の懐から出しましたよね。さっきは、証拠がないって言ってましたよね。


「細かいことを気にする奴じゃ。分かった この証拠を文机の中にしまってくれんか。

そうしたら十分に証拠として使えるじゃろ。」


それ捏造って言いますよ。真面な操作するする気ないでしょ。


「うーん。駄目かのう。いつもじゃったらそろそろ悪人からペラペラ話し出してくれる頃合いなんじゃが。」


「その後に『出会え、出会え』って言って配下の浪人を呼び出してくれてよいのじゃぞ。

そしたら俺も護衛の者たちを呼ぶことが出来るからの。」


出来るからのじゃありません。

無実の代官を追い落として何が楽しいのですか?


「まぁ。暇つぶしじゃな。仕方がない。護衛を見せてやろう。出会え、出会え」


バラバラバラ

天上と床から護衛武士が現れる。


「「「「「「お呼びでしょうか。ご老公。」」」」」」


「こやつが不正の証拠を出さんから、ちと脅してもらおうと思っての。」


脅して証拠を出させるって、そちらの方が不正では?


「オラオラ。ご老公が不正の証拠を出せっつってるんだ。無くても作って出すんだよ。」


それって脅迫では?ご老公が不正を働いて世直しにはなりませんよ。


「そんなこたぁ どおでもいいんだよ。こっちゃあこんなど田舎まで付き合わされてるんだ。

さっさと帰りてえんだよ。」


「「「「そうだ。そうだ。」」」」


「ちょっと待て。お前たち世の不正を正そうと誓い合ったのではなかったのか。」



バカラバカラバカラ


老中 松木様のおなぁ~り~


下座にかしずく一同


「ご老公。やっぱり来ていましたか。さぁ、帰りますよ。」


「なんじゃ、松木。ワシはまだこやつの不正を裁けておらぬぞ。こやつがしぶとくてのう。」


「ご老公。この領は、徳田のおかげで発展してきているのです。将軍も徳田の功績を認めていますよ。

ここでご老公が無茶をして徳田がやる気をなくすと私が将軍に怒られるのです。

さぁ、一緒に帰りましょう。」


ズルズルズル


ご老公ご一行は、松木に引きずられるようにして江戸に戻っていった。



※※※※  数週間後  ※※※



ご老公。なぜここに居るのですか。


「いや な。あの後、老中や息子からこってり説教されてな。

『証拠もないのに代官を懲らしめようとすることはならん』

と口を揃えて言いおる。

そこでじゃ。お主を引き連れて代官共の不正の証拠を見つけ出し、世直しをすることにしたのじゃ。」


いえいえ。私は代官としての役目がありますので、お受けできませんよ。


「ここに将軍様からの手紙ある。俺が中を見るとお主を連れ出すことが出来んことになっておるから見ておらん。

その証拠に封印があるじゃろ。

近頃の若い者は、俺のことを全く信用しておらん。」


それは正当な評価ではないかと・・・


「なんじゃと」


いえ 何も・・・


「俺は見るなと言われておるゆえ。この手紙を書斎で読んで来い。

俺はここで待っておるからの。」



※※※  書斎  ※※※


なになに

”この地の代官は息子に譲ってご老公に付き合ってくれ。

暴走をうまく収められるのはお主だけじゃ。

大人しくさせることが出来たら褒美に大名に取り立ててやろう。


2枚目に目に余る代官を一覧化しておる。どこにするかは任せるので、適当に成敗してくれ。」


将軍 国光”


いやいや いくら将軍様からの依頼とはいえこれは無理でしょ・・・


ん?追伸があるぞ。


”断ったら。松木とともにご老公に成敗させるぞ。”


そんなぁ・・・



※※※  町外れ  ※※※


「ほれ、徳田。次はどこに行くのじゃ。」


’知り合いがいない所がいいから南の方へ行ってみようかな。’


ご老公。南の秋日天領などいかがでしょう。

近頃、めっきり寒くなってきましたので温かい地方へ向かった方が動きやすいかと思います。


「それでは、参ろうぞ。カーカッカッカ」


ご老公一行は、今日も行くのであった。


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