ロックコンサートで
拙作「袖振り合うも多生の縁」内で、主人公が宝物のように思っている日本語教材です。
小学校の国語の教科書みたいな日本語になっています。
彼の手元にあるのは漢字を使わないバージョンで、ひらがなとカタカナの使い分けを説明する用途でした。
ディビッドは有名なギタリストです。
彼が最初の弦を弾くと、それまで五月蠅かった会場がしんと静かになりました。
繊細な音が響き渡ります。
暗いステージの上で、ディビッドとギターだけが明るくライトアップされています。
そこにクリスのドラムが微かに、しかし規則正しくリズムを刻み始めます。
音楽が徐々に大きくなるにつれて、聴衆はシンクロし身体を動かしだしました。
ダダダダダダン。
クリスの連打を合図にステージ全体に照明が広がり、ディビッドのギターが耳なれたイントロを奏でます。
オーディエンスは思わず「うおおっー」と声をあげました。