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中年おやじの迷走  作者: 佐久間元三
2/4

~ 恋文 ~

明日は愛する妻の誕生日。


愛する?


うん、愛していると思う。

好きか嫌いかと言えば、好きを超えて大好きだ。


いつから愛だの、恋だの気にしなくなったのか。


若い頃は愛の形を求めて、苦しんだ。


形の無いものを愛だと思い、夢中になれるものを夢だと信じ、クリスマスイヴに祈りを込めた。


彼女がいない時は最悪だ。

この世で自分だけが不幸だと思い込み、部屋でクリスマスソングを涙を流しながら聞いて、イヴが終わるのをひたすら待った。


クリスマスの当日には、興味が無い。

クリスマスイヴは、この世で一番尊く、全てだと思った。理由はわからない。誰が何と言おうとイヴなのだ。


子どもの頃、クリスマスプレゼントはイヴだったせいかもしれない。


愛する人とクリスマスイヴに、都内のお洒落な場所で、食事をして、夜景を見る。二人の愛はヒートアップし、まさに夜はこれから!・・・というところで、アッサリとお家に帰る。・・・これが妻である。


彼女はドライだと思う。

クリスマスイヴにも、クリスマスにも特別な感情を持たないらしい。誕生日も同じ。


彼女にとって、特別な日は存在しない。


結婚記念日も入籍記念日も、旦那の私が細かく覚えていて、サインを送っても通じない。


昔からそうだった。


こちらから、「好き?」と聞いても答えない。


クリスマスカードやら、ラブレターやら口説くのに、本当に必死だった。一方通行の空回り。電話をしても会話が続かない。間が空くのが苦手な私は、とにかく他愛も無い話題で繋ぎ止めた。


うん、あの頃の自分頑張った。


一度だけ、妻が手紙をくれ、「愛しています」と。

・・・今でも、あの頃の嬉しさが蘇る。


話を戻そう。


私はロマンチスト。

思春期は、好きな子を想い眠れない夜を過ごした事もある。


綺麗な夕焼けや真冬の蒼い空を見て、誰かとこの刹那を共有したいと涙した事もある。


人生の伴侶は、もう一人の自分だと信じて生きてきた。


・・・だが、縁なのだろう。

自分とは、真逆の性格を持つ女性が妻なのだ。


単身赴任から帰宅すると、妻が優しく抱擁やキスをしてくれるシチュエーションを期待する。


でも、ここでもクール。


真顔で晩ご飯を作り、優しく出迎えてくれない。無理矢理、何か話そうとすると、「ご飯作ってくれるのかな?」と嫌味を言われてしまう。


・・・客観的に自分嫌われてる?


妻曰く、「しつこくしなければ」らしい。


我が妻の性格を簡潔に説明しよう。


ドライで淡白。


記念日はない。


一人が好き。


でも、自分を優先では決してない。


旦那や子供の為に、自分の時間を割いている。


旦那や子供が、部屋でゴロゴロしていても、妻は家事をしてくれる。寝るのも最後。起きるのは最初。関白宣言の歌に出てくるフレーズだ。


・・・妻は、自分と結婚して幸せなのだろうか?


自分は、妻に何をすれば良い?


結婚式では、神父の前で、幸せにすると誓ったはずだ。


自分が汗水流して働いて、妻は家を守る。それだけで十分なのか?


子どもが健やかに育ってる様を夫婦で見守る。これが幸せなのか?


私は十二月に結婚。


入籍した日、ラブラブの甘い夜を過ごした訳ではなく、淡々と普通に会話して寝た。


三つ指をついて、お互いに挨拶を交わした訳でもない。


昔から住んでいる家族の様に、本当に当たり前の如く日常がスタートしたんだ。クリスマスもごく普通の日として過ぎた。


でも、正月。


妻が一言。


「これから、よろしくお願いします」



・・・・・・ 一生、忘れないよ。



ツンデレとは正にこの事だろう。


クールで、ドライ。愛情表現をしてくれない。馴れ合いもダメ。


一見、何故この人と?と思うかもしれない。


だが、自分だけには分かる。


自分よりも家族を大切に考える。

旦那を陰で支える。

自分の親も旦那の親も大切にする。

モノよりも想いを表に出さないけれど大切にする。


指輪は要らないと言った君。


誕生日もクリスマスも、特に何も要らないと言った君。


でも結婚式で使った花を押し花にして、今も変わらず玄関に飾っている君。


年に一度あるか無いかの二人だけの散歩や二人だけの外食の時間。


十六年経っても、付き合っていた頃と同じ様にドキドキするよ。


一緒に年老いていくのも幸せだなあ。



明日は、大好きな妻の誕生日。


単身赴任だから、ラインだけの「おめでとう」


これが我が家のやり取りだ。


週末は、こっそりケーキを買って帰ろう。


「無駄遣いして」と叱られるだろう。


でも平気。


私は妻が好きなのだ。














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