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中年おやじの迷走  作者: 佐久間元三
1/4

~ 日常 ~

私は、ごく一般的なサラリーマン。

・・・・・・だと思いたい。


最近は、下っ腹も出て来たし、髪の毛も元気がない。


胸元に白い毛を発見し、思わず少し汗ばんだ左の肩付近に鼻を近づけると、ツーンと不快な臭いがする。


妻が、キスをあまりしてくれなくなった。スキンシップで触れようとすると、露骨に拒否。


・・・テレビで見かける幸せな老夫婦は実在するのだろうか?


実は数年前から、仕事という大義名分のもと、単身赴任をしている。


帰宅しようとすれば、二時間。何て事ない距離。


しかし、小言を言われるのが苦痛な自分は、妻と適度な距離を求めて、会社経費で借りたアパートにいる。


誰にも束縛されない空間。


少し埃が溜まっている空間。


インスタントラーメンしか作らない台所。


少々汚れたトイレとお風呂。


敷きっぱなしの布団上に無造作に置かれた雑誌。


この状況は、妻はおろか子供たちにも到底見せられない。見せたら最後、週末にしか見せない「父親像」は呆気なく崩壊するだろう。


家庭では、普通の父親と思っている。


率先して、食器洗いや風呂洗いもするし、整理整頓は勿論、子供の些細な変化にも注意して対応。食事作法を適度に教えたり、近所への挨拶も欠かさない。


娘は中学二年生で部活動が忙しく、あまり家にいなくなった。


小学六年生の息子は、部屋に閉じこもってボイスチャットしながらゲーム三昧。


リビングでは、空気の様な存在となってきた夫婦が、昼間からノンフィクション番組を見ている。特に会話をするわけでもない。ただ黙って、自分たちとは別の人生を傍観しているのだ。


日曜日は、大抵こんなもの。


午前中は、妻と手分けして家事。昼食を食べてからテレビを一時間見て、妻は夕食の買い物。自分はダラダラと寝そべって携帯ゲーム。子供は二階部屋。夕飯のメニューを適切に要望しないと、妻の機嫌が一気に悪くなるので、帰宅する前に考えた案をいくつか提示。


手の込んだメニューなどもっての外。「じゃあ、自分で作ってよ」と言われるのがオチ。面倒くさくなく、かつ、美味しいものを選択しなければならない。


結婚して、十五年もすれば、妻攻略はさほど難しくない。


手料理で美味しかったものは、密かに写真を撮って保存してある。無論、妻には内緒だ。付き合い始めてから、少しづつ妻は強くなった。子供を産んでからは、一気に立場が逆転。いかに波風を立てないかが重要だった。


若い頃は、身体の芯からたぎるような精力もあって、女性にモテたいと精進したものだ。それが、気がつけば、自分の格好にあまり興味がなくなり、どうせ異性にも相手にされないと殻に閉じこもってしまった気がする。子供を授かり、人間本来の「種を残す」目標が達成された今、妻だけに相手して貰えば良いという自分勝手な思い込みだけが生きている。


妻は、よく「老後介護しない」、「熟年離婚より前に見限るかも」などの文句を口にする。


自分では、聞き流しているし、本気にしていないが、これが一番危険なのかもしれない。


妻だけは、「一生自分の味方」の考えは甘過ぎ。自分のような亭主がある日突然、失うのだろう。


・・・相変わらず、言いたい事が支離滅裂かもしれないが、中年オヤジになると、パーツ毎にしか物事を整理出来なくなってくる。常に考えは迷走するものなのだ。











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