喫茶店にて 2
※今回から、一話に載せる文章の量を増やしました。
読みにくければ、ご指摘ください。
「おかえり、北斗」
店の奥から、男の人の声がした。
「ただいま。拾ってきちゃったんだけど、今日うちに置いても良い?」
と、北斗が聞く声がする。
「またかい?」
話しながら、二人して店の奥から出て来た。
そして、声の主と目が合った。
おそらく、私と同じか少し上。20代半ば位の男の人だった。
しばし、沈黙が落ちる。
「北斗、人はね、拾ってきたって言うんじゃないよ。連れてきたって言うんだよ。前にも言っただろう?」
と、彼は北斗君に言った。
論点が明らかにずれている。
全力で突っ込みたかったが、何とか堪えた。
「すみません。北斗がご迷惑をかけたみたいで・・・あ、どうぞ、座って下さい。今、コーヒー淹れますね」
そう言って、カウンターの奥に消えてしまった。
どうする事も、何かをいう事も出来ず、とりあえず言われたままにイスに座った。
北斗君は、あたしの正面に座りながら奥の男の人に話しかける。
「泊るところ無いって言うから、拾って・・・連れてきたんだけど。英兄、家に置いても良いでしょ?」
「それは、構わないけど・・・」
言いながら「英兄」と呼ばれた彼は、コーヒーを持って出てくる。
「そこは構わなくないでしょ!?」
そう言いたい。
彼は、私の前にコーヒーを置いて「どうぞ」と進めてくれた。
「どうも」
そう言って受け取ってから、私は話し始めた。
「あのですね。なんだか凄い話になってますけど、これは北斗君の勘違いと言いますか、あたしの勘違いといいますか」
「勘違いじゃないよ。泊まるところ無いって言ったじゃん」
私の説明を、途中でぶっちぎって北斗君が抗議の声をあげた。
そんな私達を見ながら、彼は笑顔のまま、
「あ、コーヒー冷めない内にどうぞ」
と言った。
完全にペースを崩されている。
しかし、そう言われて飲まない訳にもいかず、砂糖をひとかけら入れて、コーヒーに口をつけた。
「おいしい・・・」
自然と、そう呟いていた。
結構コーヒーは飲むほうだが、心からおいしいと思ったのは初めてかも知れない。
「英兄のコーヒーは世界一なんだよ」
そう言いながら、北斗君は砂糖もミルクも入れないで、そのまま飲んだ。
「ブラックで飲むの?」
驚いて声をあげた私に、
「北斗はもっと小さい時からコーヒー飲んでますから、慣れているんでしょうね。なかなか味にうるさいんですよ」
彼は苦笑しつつそう説明して「それで、さっきの続きですが」と話し始めた。
「もし、言い難い事情があるなら、無理に言わなくても良いですよ?今晩は泊まっていって頂いても構いませんし」
にっこりと笑いながら、そう言った。




