喫茶店にて 1
行き着いた先は、さっきの商店街から歩く事およそ5分。
ログハウス風の外観。
入口の周りには花やグリーンが飾られている。
この田舎町には似合わないようなオシャレな建物だったが、町並みから浮く事は無く、不思議と馴染んで見えた。
おそらく、木の優しい感じがそうさせているのだろう。
しかし、大きな問題がひとつ。
風に揺れる看板には「珈琲」と書かれていた。
そう、ここはどう見ても喫茶店だった。
「ここ?」
一応、聞いてみると、
「うん。ここだよ」
あっさりした返事が返ってきた。
・・・違う。
「ここは喫茶店であって、寝泊りする場所じゃない!コーヒーを飲んでくつろぐ場所だっ!」
と、大人相手ならツッコミを入れる事も出来るが、相手は子供だ。
親切心でしてくれたのに、抗議なんて出来ようはずも無い。
まあ、大きな勘違いをしているのだが。
立ち尽くす私を他所に、ここに来るまでに「北斗」と名乗った男の子は、扉を開けて中に入って行く。
チリンチリン―――とベルが鳴った。
仕方なく後に続くと、店内も外観同様シャレていた。
蛍光灯の白い光ではなく、オレンジっぽい優しい色の照明。
全て木で作られた、イスとテーブル。
ディスプレイに、アンティークらしき物が飾られていたが、それらは存在を主張しすぎず、店内に納まっていた。
壁に飾られた絵だけが鮮やかな色をしていたが、この空間と上手く溶け合って、店内を明るく見せる役割をしていた。