故郷にて 4
とりあえず、地元の人にでも泊まれそうな所を聞くしかない。
そう思って、商店街に来た。
日曜日の夕方とあって、それなりに人が多く行き交っていた。
「すみません」
と、優しそうなおばさんに声をかけた。
「はい、何でしょう?」
「あの、この辺りで泊まれる所ありませんか?」
私の質問に、おばさんは「うーん」と考えてから、
「この近くには無いわねぇ。もう少し奥地に行くと温泉地だから有るでしょうけど」
おばさんは無情にも「無い」宣言をした。
「泊るところが無いの?もしかしたら、私が知らないだけで、どこか有るかも知れないから、一緒に探しましょうか?」
と、親切にも申し出てくれたが、遠慮しておいた。
通りすがりなのに、そんな迷惑はかけられない気がしたからだ。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
そう、お礼を言っておばさんと別れてから、さて、どうしようかと考えた。
この町を散策してみたかったのだが、寝床が無いのなら他に行くしかない。
女ひとりで外で過ごす度胸など無いし、先にも言ったが、この寒さで野宿なんかしたら凍死するのは間違いない。
とすると、もう少し探してみるか、温泉地とやらまで行くか・・・。
どうせなら温泉にでも浸かって、散策は明日また出直せばいいか。
そう決めて駅に向かって歩き出そうとした時、
「泊るところ、探してるの?」
唐突に声をかけられた。
見ると、年の頃は10歳前後の小学生らしき男の子が、私を見上げていた。
「うん、そうなんだ。どこか知らない・・・よね」
少しかがんで、男の子目線を合わせて聞いてみる。
まあ、「知らない」と言われるのは目に見えているのだが。
「おれ、知ってるよ。泊まれるところ」
男の子は予想外の事を言った。
「本当に?」
私の言葉に、こくりと頷き、
「ついてきて」
男の子は、そう言いながら歩き出した。
おばさんは知らなかったのに、こんな子供が知っているのだろうか?
少し疑問に思ったが、まさか嘘を吐いているとも思えず、とりあえずは後に付いて行く事にした。