故郷にて 3
見事に退職を果たした私は、すぐに仕事を探す気にもなれず、しばらくの間、これと言って何もせずに過ごした。
が、さすがに飽きてきた。
何もしないというのが、こんなに苦痛だとは思わなかった。
さて、どうしようか考えて、旅行にでも行こうと思い立った。
温泉に行くも良し、「そうだ京都に行こう」なんてCMを思い出して、観光も良いかな、等とあれこれ思いを巡らせた。
そんな時、ふと生まれ故郷に行ってみようかと思いついた。
「生まれ故郷」なんて言っても、生後一年しかいなかった私には、その記憶なんて全く無い。
親戚や友人が居るわけでも、懐かしい思い出があるわけでもないが、ちょっと行ってみたいなとは思っていたのだ。
この機に行くのも悪くない。
そう思い立って、ほとんど勢い任せに、ボストンバックに荷物をつめて、ワンルームの狭い部屋を飛び出した。
そして、今この状況下にいる。
飛行機のチケットがその場であっさり取れたから、泊まる場所も何とかなるだろうと高をくくっていたのだが・・・.
どうやら甘かったらしい。
都内でずっと過ごしてきた私は、ホテルなんてそこら辺にある物だと思い込んでしまっていた。
最悪は「漫画喫茶かファミレスで一夜を過ごして、ちゃんとしたホテルは次の日でも良いか」
などと考えていたのだが、ファミレスどころか、24時間営業のコンビニすら無い。
「7時から11時まで営業」
という文字を、さっき改札外のコンビニでちらりと見かけた。
・・・初期のセブンイレブンじゃないか。
「はあ」
思わず、ため息がこぼれる。