星の町 3
「せーの」
とタイミングを合わせて、同時に鍵盤をたたいた。
いつ以来だろうか。
ピアノなんて触るのは。
弾けるかどうか怪しかったが、意外とちゃんと弾けて驚いた。
『ちゃん、ちゃん』と最後のオチまでつけて、
「ちゃんと弾けるじゃん。上手だったよ」
北斗君はそう言ってくれた。
「ありがと」
「どう?楽しかった?」
「うん。一緒に弾くのって面白いんだね。すごく楽しかったよ。北斗君は?」
「おれも、楽しかった!」
笑顔で答える彼に、
「ありがとね」
私がもう一度、お礼を言うと、
「それは、さっき聞いたよ?」
小首をかしげて、そう言った。
「さっきのは、褒めてくれてありがとう」
「じゃあ、今のは?」
「優しくしてくれて、ありがとう。元気付けようとしてくれたんだよね。違う?」
私の言葉に、ちょっと考えてから、
「昨日、疲れちゃったって言ってたから・・・。ここでピアノ弾けば元気になるかなぁと思って。元気になった?」
そう言った北斗君を、私はぎゅっと抱きしめた。
「わっ!なになに?」
言いながら、私の腕の中でジタバタしている。
「いや、いい子だなぁと思って。あ、なんか弾いて欲しいなー」
私が言うと、
「じゃ、じゃあ、離してよ」
ちょっと照れた様に、抗議の声をあげた。
手を離して立ち上がると、
「どんなのが良い?」
と聞いてきた。
「北斗君が、好きな曲が良いな」
私の言葉に、少し考えてから、
「じゃあ、おれの一番好きな曲、弾くよ?」
そう言って、うなずくあたしを見てから、鍵盤に手を伸ばした。
曲は―――「きらきら星」だ。
北斗君の指が、リズムを刻む。
それを聞きながら、窓の外の青い空を眺めた。