星の町 1
階段を下りると、まだオープン前の店内には、良い香りが漂っていた。
「おはようございます。ゆっくり休めましたか?」
「響子ねえちゃん、おはよう」
笑顔でフライパンを振りながら、そう言った英理さんの後に、北斗君が続けた。
「おはようございます。おかげでゆっくり眠れたんですが・・・すみません、すっかり寝坊してしまって」
私は二人の言葉に、力なくそう言った。
まさかの大寝坊・・・とんでもない大失態だ。
「ゆっくり眠れたなら良かったです。。もしかしたら眠れないんじゃないかと思って・・・。ほら、枕が変わると眠れなくなるって良く言うじゃないですか」
「そんな事ないですよ。良い部屋だったんで気持ちよく眠れました。ありがとうございます」
英理さんの言葉に、そう返す。
幸か不幸か、私は枕が変わったからといって、眠れなくなる程デリケートには出来ていないらしい。
それに、部屋は落ち着いた感じで、使い心地はとても良かった。
「そう言ってもらえて良かったです。さて、朝ご飯にしましょうか」
彼は言いながら、テーブルにパンとスクランブルエッグを並べてゆく。
「響子ねえちゃん、ご飯食べたら町を案内してあげるよ」
席に着きながら、北斗君がそう言った。
「あれ?学校は?」
「休みだよ」
「今日って、月曜日じゃなかったっけ?」
冬休みにはだいぶ早い筈だけど・・・と考えていると、
「今日は祝日ですよ。ハッピーマンデーですね」
英理さんが説明してくれた。
「そっか、すっかり忘れてた。じゃあ、お願いしようかな」
町を散策したかったから、案内役がいるのはありがたい。
「とっておきの場所があるんだ。楽しみにしててよ」
私のお願いに、北斗君は得意げ言って見せた。
「とっておきの場所」とはどんな所か気になったが、敢えて聞かないでおいた。
行くまでのお楽しみというヤツだ。
そして、三人で「いただきます」と声を合わせて、朝食に手を伸ばした。