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星の町  作者: えもと
12/18

夜空 3

私の必死な姿に驚いたのか、英理さんは少しキョトンとした顔を見せた後に、


「そこまで言うなら、言わないでおきますね」


そう言った後に、「でもね」と付け加えて、


「両親が居ないのは残念ですけど、今、幸せなんです。だから、気を使ってくれたのは嬉しいけど、響子さんが悪い事を聞いたって思うことは無いんですよ」


微笑みながら、そう言った。


気を使ったつもりが、逆に気を使わせてしまっている。


やっぱり、悪い事したなと思う反面、何だか羨ましくもあった。

ハッキリと「今、幸せだ」と言い切れる彼が。


「幸せ・・・かぁ」


ぽつりと、半ば無意識に呟いていた。


私は、きっと恵まれている。

両親もいるし、友達もいる。生活に苦労しているわけでもない。

そんな自分を不幸だとは決して思わないが、「幸せか」と問われたら、胸を張って「幸せだ」と言い切る自信が私には、無い。

そんな事を考えていると、


「そうだ!」


唐突に、彼は声を上げた。


「へ?な、なんですか?」


大きな声にビックリして、裏返った声で聞くと、


「あ、それだけ拭いちゃってもらえますか?」


彼は質問には答えずに、そう言った。


話の飛び方が突然すぎて、もう一度、何事か聞き返すことも、突っ込みを入れる事も出来なかった。

やっぱり、どこか掴めない人だ。

そう思いつつも、彼の言葉に素直に従って、手に持っていた最後の一枚を拭き上げると、


「ちょっと、来てください」


英理さんは言いながら、二階へと続く階段を上がって行く。

一体何だろうと思いつつも、私は黙って付いて行った。


彼は階段を上り、廊下の突き当りに来た所で、天井に棒らしき物を突き立てて、グッと引くと、


バコンッ


派手な音を立てて天井の一部が開く。

と、そこからさらに上へ続く階段が現われた。


ここは、忍者屋敷か。

そう思いつつ、ポカンと見ている私を他所に、


「あ、足元に気をつけて下さいね」


彼はそう注意を促しつつ、現われた階段を上っていく。

とりあえず、後に続くという選択肢しかない私は、ソロソロと真っ暗な階段を上った。

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