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星の町  作者: えもと
11/18

夜空 2

食事の後、


「宿題は?」と英理さんに聞かれ、渋々と北斗君は自室で宿題を片付けていた。

英理さんはカチャカチャと皿洗いをしている。

私はというと、その横でせっせと皿を拭いていた。


「ここって、料理も提供してるんですか?」


この店は、喫茶店と言う割には調理器具がかなり充実している。

喫茶店、兼台所として使っている様なので普通かもしれないが。

二階には寝室しかなく、店はリビングとダイニング代わりらしい。


「ええ、と言ってもちょっとしたお菓子とか、軽食くらいですけど」


彼はそう答えた。


「へー。英理さんが作ってるんですよね?」


「そうですよ。何とかお客さんにも提供できる腕になりましたし」


彼は笑顔で答えて、最後に「まだまだですけどね」と謙遜の言葉を付け加えた。


「すごいなぁ。お店の経営もやって、料理も作って。大変そう」


「両親を亡くしてから、知識も無く、そのまま店を継いだんですけど、料理もコーヒーも好きなので、趣味がそのまま職になったという感じですね。それなりに苦労はありますけど、好きでやってる事だから楽しいですし、僕には向いてると思うんですよ」


そう言って、にっこりと笑った。


そんな彼を見て「しまった」と思ったが、もう遅い。


この家には、両親が居ないんだろうという事は予測がついていた。

北斗君の歳を考えて、お兄さんと二人暮らしは、少しばかり不自然だからだ。

だから、その事には触れない様に気を付けていたのに・・・。

自分の不用意な発言に後悔しつつ、無言になった私に、


「どうしました?」


と英理さんが聞いてくる。


「あ、嫌な事を、言わせちゃったと思って、その・・・」


はっきり言うのも悪い気がして、口ごもる私に、彼は何が言いたいのか解った顔を見せて、


「もしかして、両親の事ですか?」


念のため、といった感じで聞いてくる。


「えぇ。すみません、変な事を言わせてしまって」


そう言った私に、


「こちらこそ、気を使わせてしまって、すみません」


何故か彼も謝って、「でも」と続けた。


「全然、気にする事は無いんですよ。あれは、もう五年も前の話で・・・」


「わー。言わなくて良いです!」


何事か説明しようとする彼の言葉を、私は途中で遮った。


「聞きたいとか、言わせようとか思ったんじゃなくて、言いたくない事言わせちゃったかなって思っただけで・・・悪い事したなと。だから、言わなくて良いんです!」


自分でもおかしいくらい、必死になって、話を中断させた。


別に、身の上話に興味があるわけでも、聞きたいわけでもない。

彼だって、話したいわけじゃないだろう。

もう過去の事だとしたって、話して良い気持ちになる話題じゃないのは確かだ。

だから、言わせたくないし、聞きたくない。

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