夜空 1
自分で言うのも何だが、カレーの出来は結構良かった。
その証拠に、北斗君は「おいしい」と言いながら平らげてみせた。
「そう、良かった。おかわりは?」
そう聞く私に、頷きながらカレー皿を差し出した。
これは、食べるってことか。
笑顔でお皿を受け取り、おかわりをよそう。
「はい。いっぱい食べて、おっきくなるのよ」
言いながらおかわりを渡すと、「うん」と大きく頷いてみせた。
再びカレーを食べ始めた北斗君の横で、
「響子さんは料理が上手なんですねぇ。よくされるんですか?」
と、英理さんが聞いてきた。
そこまで感心したような声を出されると、いくらなんでもオーバーな気がする。
小学校の調理実習の方が、もっと高度な物を作っているはずだ。
私は苦笑しつつ、
「大袈裟ですよ。カレーなんて小学生でも作れますよ。でも、料理はしますね。一人暮らしな
もので、作らないと食べられませんからね」
そう答えた。
「そうだったんですか。でも、自分で作ってばかりいると、たまには人が作った物が食べたくなりませんか?」
「なりますねぇ。誰かの手料理が恋しくなりますよね」
「今日、久しぶりにキッチンに立たずにおいしい料理が食べられて、なんだか悪い気もするんですけど、嬉しくて。ありがとうございます」
彼はそう言って笑った。
「いえ、一宿一飯のお礼には届きませんけど、喜んでもらえたんなら良かったです」
私も笑顔でそう返すと、
「こないだ、学校で『ちんじゃおろーすー』習ったから、今度はおれが作る」
北斗君は元気良く、そう宣言した。
「ほんと?それは楽しみだわ」
「キッチンは壊さないようにね」
私の言葉に続けて、本気か冗談か、英理さんは朗らかに言った。
その言葉に、北斗君はちょっとバツの悪そうな顔を見せる。
前科があるのか・・・。
「大丈夫。次は上手くやるよ」
どこから来たものか、北斗君は自信満々に言う。
そんな風に、和やかに時間は過ぎていった。