故郷にて 1
「あらすじ」固く書きましたが、ギャグ要素も多く入れたつもりです。
力を入れず、軽い気持ちで読んで下さい。
「うー、さむっ」
電車を降りて、私が開口一番に言った台詞はこれだった。
とりあえず、ホームに立っていても寒いだけなので歩き出す。
とある田舎の駅。
駅ビルもなければ、構内にコンビニすらも無い。
かろうじてあった自動改札を出ると、目に飛び込むのは「田舎」を絵に描いたような光景だった。
左手には商店街、正面には申し訳程度に立っているバス停の看板。
およそメイン通りとは言い難い道からは、細い路地があちこちに延びている。
後は住宅と、商店街から外れた店がぽつりぽつりとある程度だった。
高いビルも、ショッピングセンターも、大型スーパーも無い。
私は、その光景に立ち尽くした。
この分じゃ、ホテルなんて無いかも知れない。
しかし、今日の寝床だけは何としても確保したい。
野宿なんて冗談じゃないし、この寒さで一晩外に居たら凍死する。
それこそ冗談じゃない。
そう思いながら、人が行き交っている方―――商店街の方に足を運んだ。
何で女ひとりで、こんな田舎を宛ても無くさ迷っているかと言うと、
「逃走した」
と言うのが、しっくり来るかもしれない。
話は、一ヶ月ほど前に遡る。