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銀山に憑りつかれた男 -あの時代で銀山をもう一度-  作者: 有坂総一郎
魂の再会したら何故か天文3年に居ました
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いきなりイベント発生です 

 気が付くと見慣れない天井を見上げていた。


「殿、御目覚めですか」


 覗き込んでくる女性を見て安心した。


 彼女はつい先程再会したばかりの石見銀山の精霊(自称)の白露である……はずだ……。


「しら……つゆ……か?」


「はい、殿、御加減は如何ですか?」


 私が起き上がろうとすると彼女はさっと助け起こしてくれた。


 どうも寝起きの時と同じ感じであるが、違和感がありいまいち体が馴染んでいないように思える。


「殿、もう暫くは転移酔いで気分が優れないと思いますがご辛抱ください」


 ぼんやりする頭では彼女が何を言っているのかわからない……。


 いまいちすっきりしない頭ではあるが周囲を見渡してみる。ここはどうやら和室である様だ。社寺仏閣の様な感じの建物で、畳を敷いていない板敷きの部屋である。


 冬になったらとんでもなく寒いだろうなと感じながらも夏の快適な状態であったことを心底ありがたく思った。


 ――夏だって?


 確か、俺は正月休みで帰省して石見銀山に行っていた筈だ。


 百歩譲ってここが石見銀山の大森の町のどこかであるとしてもだ、季節が変わっているというのはどういうことだ?


「殿、まだ転移されたばかりです、無理をなさってはなりません」


 ――転移?


 どういうことだ?


「白露、ここはどこだ?そして、なんで季節が冬から夏に変わっている!説明してくれ!」


 ドタドタドタ


 彼女を問い詰めようとしたその時、間の悪いことに誰かがこの部屋にやってきたようだ。


「若殿!若殿!御免仕る!」


 部屋の障子を開くと同時に筋骨隆々とした武人が現れた。


「叔父上、如何した?」


「興久が降伏、自害した」


 ――今、俺、叔父上って言ったよな?しかも無自覚で……。


 叔父上……つまり、このどこぞの月の裏側の片田舎から独立戦争始めた独裁者の三男坊みたいなこのオッサン……泣く子も大泣きする新宮党の親分、尼子国久ってことか?


 ――待てよ、ってことはここは戦国時代、しかも塩冶興久の乱の直後……。


「叔父上、御爺様……大殿はこのことを……」


「おぅ、もう知らせてある。父上も此度のことで酷く心を痛めておったわ」


 あぁ、なんだかホント、どこぞの三男坊みたいな感じだなこのオッサン。残念ながら、従うべき長男坊はとっくに死んでるんだがな……。ってことは、今度狙われるの俺か?いやいや、じゃあ、興久はアレか?赤いいけ好かない野郎に騙されて特攻した四男坊か?


「どうした?」


「……いや、興久叔父の冥福を祈っていたのだ……」


「そうか、あやつもこのようなことをせねば尼子の未来を担う武人として活躍出来ただろうに……」


「叔父上、これからは興久叔父の様な叛乱を許すわけにはいかぬ……」


「……おおぅ……詮久……よくぞ申した、それでこそ尼子の棟梁……父上も安堵致そうぞ!グァハハハハ……」


 叔父上、否、国久は満足そうに高笑いで部屋を出て行った。


 ――なんてことだ……まさかこんな世界に飛ばされるなんて……。


 白露を見ると彼女はニコッと笑っている。


「白露、説明してもらおうか……」


「殿、これはあなたに与えられたチャンスなのです……もう一度、尼子詮久、晴久としての人生を歩むのです。そして、わたくしを今度はお守りください」


 彼女の期待の眼差しに最早何も言う気力も失ってしまったのである。

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