時の境目
『時の境目』
突き当たりにあるのは、時の境目に違いなかった。
僕は、初めて世界を知った気分で、貪欲に辺りを飽きもせず見回った。
虹色の橋の下には、霞を口にするトキがいて、羽根を一枚一枚抜きとっていた。
まるで、こんなもの不要だとでもいうかのように、あっさりとそれは捨てられていた。
不燃物をあきらめたようにおきはなした足元には、湿りきって役に立たないマッチの箱が未使用のまま投げだされている。
僕は、ここにきた誰もがそうしたように、それらを空気のように眺め、そこに、新たな不燃物をおきはなした。
不燃物は、動きだすことはなく、僕は、それを当たり前に理解していた。
不燃物として、そこにすわりこんだ僕は、不燃物になりきっているだろう見知らぬ男に話し掛けた。
男は、タバコの煙りを吐き出しながら、物憂げな表情で、すべてを放棄したかのようだった。
霞を食べては、羽根を抜き取るトキを見つめながら、男は、空っぽだからと口にした。
不燃物になった彼等は、放棄して、期待することを忘れた。
わざと羽根を抜き、霞を食べている。
時の境目で、僕は、貪欲にそれを求めた。