第1話 亀裂の応急処置
今回から本格的にラブコメしていきます。
織館神姫。彼女を詳しく知っている生徒は恐らく僕だけだろう。なぜなら彼女の幼馴染みだから。しかしそれを名乗る資格が僕にはない。なぜなら僕は彼女を裏切ったからだ。僕は誰よりも大切だった彼女よりも表面上だけの関係の男友達を選んだ。大切な人と流れに逆らう事よりも大切な人を捨て流れに従う事を選んだ。けれど僕はその事をひどく後悔している。なぜなら彼女が壊れた。元々人気者だった僕にいつもくっついていた彼女は憎まれていたために友達がいなかった。恐らくいじめられていた。そんな彼女を僕が裏切ったせいで彼女は独りぼっちになった。笑わなくなった。それから5年がたった今でも彼女は元に戻らない。だが僕にはそんな彼女を助ける資格がない。いや違う。自分にないのは資格なんかじゃない。勇気だ。
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キャッキャッバッシャァン
可愛い女の子が水を浴びてはしゃいでいるのを僕は木の上から眺めていた。眺めるしかできなかった。彼女とは距離を置かないと...そうしないと僕がいじめられてしまう。僕も小学五年生。そろそろ幼馴染み離れしないといけない。
「ひこりんも水着忘れるなんて災難だったねぇ」
「いやいや水着なんか持ち物に入ってねぇから。てかいくらなんでも自由時間に川で水浴びなんかするか?」
本当は水着を持ってきている。考えることは2人とも同じなのだ。でも2人で遊ぶ事は出来ない。彼女とは距離を置かないと。
バッシャァン
その時大きな水音がした。詳しく言うと彼女が溺れた。
僕は気にせずに溺れる彼女を眺めていた。本当は彼女を助けたい。けれど脳がそれを許さなかった。それが彼女のためでもあるから。幼馴染み離れできない彼女をを助ける事になるから。
いや、違う。それはただの言い訳だ。幼馴染み離れできない自分を説得するための言い訳だ。
「助けて...助けてよひこりん。助けてッ!!!」
ガバッ
「はぁはぁ...なんだ夢か...」
「大丈夫?授業中に居眠りしてうなされてたから無理矢理保健室連れてきたけど...」
どうやら早瀬がずっと隣で見守っていてくれたらしい。
「ずぅっとかみひめ〜かみひめ〜って言ってたよ?織姫ちゃんずっとクスクス笑ってたよ?」
おいおいマジかよ。俺重症過ぎだろ。
「プーっミンミン顔真っ赤ぁ」
「おいからかうなよ....てかお前1人でよく運べたな。帰宅部だろ?」
「1人じゃないよ?ほら」
え?早瀬が指した方を見てみるとそこには神姫がちょこんと座りながら文庫本を読んでいた。そういえばこいつ文芸部の部長だっけ。
「どう...プッ...もぉ..」
「おい、笑うな」
恥ずかしィッ!!!メッチャ恥ずかしィッ!!!
「だってぇ、見捨てた女のあだ名を連呼してるんだよ?プッ」
「ちょ...見捨てたって...」
めちゃくちゃ聞こえ悪いなそれ。俺最低じゃん。
「じゃあ私はこれで...」
早瀬が空気を読んで出ていこうとする。だが俺には二人っきりで昔のように話す自信がまだ無い。
「じゃあ俺も行くよ。」
あんたチキンなの?みたいな目で見られた。はいはいそーですよ。僕はチキンですよー。
「じゃあ私も。」
結局全員出ていく事になった。
廊下に出て気になっていた事をきいた。
「そういえば今何時?」
一体僕はどのくらい寝ていたのだろう。
「6時半」
神姫が答ぇ...ええええええ!?
「ろ、6時半!?」
マジかよ観たいアニメ録画し忘れたァ。
「そういえばミンミン放課後補習だったねw」
早瀬がメチャクチャどうでもいい事を言ってきた。んなん最初から行く気ねぇよ。
「アニメなら全部録画してるから大丈夫。なんなら今から観に来る?」
神姫スゲェな。エスパーかよ...って
「お、お前いきなり男をお持ち帰りだなんて卑猥な...」
「今日は両親家族旅行で帰って来ないから大丈夫。」
ででで出たー。アニメとかで良くある家族旅行出たー。てか何が大丈夫なんだよ。問題そこじゃねぇよ。
「お、おおお持ち帰りだなんて....」
隣で早瀬が震え始めた。お前普通に俺と下ネタ言い合ってるだろ...
「てか俺達そういう仲じゃないから。普通に幼馴染みだから」
「捨てたけどね」
俺が真面目に言い訳してるの時に横からわりこむな...てか結構根に持ってるな...。
「ごめん。それは結構本気で悪いと思ってる...」
「まぁいいや。じゃああたしんちにレッツゴー。」
まぁコイツの家はガキのときに死ぬほど行ってるからいいか。
「そうだな。じゃあ行くか」
「どうしよ織姫ちゃんのキャラが崩壊してくんだけど...」
確かに...
え?この話って幼馴染みとの仲を修復する話じゃなかったの?解決しちゃったんだけど。と思っているそこのあなた。安心してください次回修羅b((殴