猫に鰹節
私が住んでるアパートは基本的にはペット禁止だ。基本的にはというのは、例外があるという訳で。
シュッシュッ
茶色の毛と白い毛が同じくらいの割合の愛想の良い猫が1匹よく大家さんや私の所のアパートに来るのだ。彼、大家さん曰く彼は去勢されてないオス猫だという彼だけは大家さんのお気に入りで入居する際彼を可愛がれるかを聞かれたのだ。
シュッシュッ
別に猫アレルギーという訳でもないし、邪険にはしないと伝えたら笑って入居許可を得たのだ。……別にそれだけが許可の理由ではないと思う。恥ずかしい話、仕事を得ているのに地方に住む親からいまだに仕送りを貰ってる為に滞納はしないというのが一番大きいと思う。
シュッシュッ
そんな、親の脛を齧りまくりな私に今回送られてきた仕送りの中に削られてない鰹節がデーンと複数存在していたのだ。これで、出汁を取れとでもいうのか?そんな暇は無い。
ニャー
ここで件の猫にあげればとは、思うかもしれないけど猫に鰹節はダメなのだ。チョコとかあげてもダメだけど鰹節はマグネシウムが原因で結石が出来やすくなるのだ。可愛がってる大家さん直々に止めるように言われれば上げるわけがない。
因みに送ってきた親曰く、これで彼氏の胃を掴みなさいといない彼へのアピールの為だったらしい。余計なお世話である。
そんな訳で、ココ最近の休日は、鰹節を削っているが食べる量が一人暮らしで作る量が少ないからか減らないのだ。贅沢な悩みとは分かっているけれどこればかりはどうしようもない気がするのである。
何故、今までこんなにも鰹節について考えているかというとただの現実逃避である。先程から、台所近くから鰹節を削る音がしているような気がするのである。
駅から近いという理由で借りてる為、部屋数は多くできないのである。多い方が望ましいけど増やしたら家賃が払えなくなるから大家さんに悪いけど狭い我がアパートに入居を決めたのである。つまり、寝室と台所はかなり近いのである。
……だからきっとこれは気の所為ではない。考えてみて欲しい、うら若き乙女(年は秘密である)が寝ているそばで侵入者が多分、鰹節を削っているのである意味がわからないし怖いと思わないか?現金を漁るわけでもなければ襲うわけでもない、目当ては鰹節なのだ。
ある意味悔しくないか?
あっ、なんかイラついてきたぞ。多分、このテンションで迎え撃てば侵入者にすらも勝てる気がする。
そんな感じのテンションで布団からでた私が明かりをつけて見た光景はかなり珍妙であった。
2匹の猫が、その小さい身体で鰹節を削っているのだ。1匹は尾っぽが二つに裂けているようにも見える、怪我でもしてるのだろうか?もう1匹はあの猫だった。
焦ったように今まで削っていたのであろう鰹節を抱えて彼らはドアを開けて出ていったのだ。鍵はかかっていなかったから、私のせいなのであろう。もし、鍵を閉め忘れてなければこんな体験はしなかったはずだ。
そして、一つの問題がある。私は今まで通りにあの猫を可愛いがれるかということである。流石に、あれはない。あんな、人間みたいにドアを開けたり鰹節を削る猫を不気味と思ってしまったからには可愛いがれる自身がないのだ。
そして、私は新しい所へ引っ越すという痛い出費をしたのであった。
「猫に鰹節」意味
油断できない状況を招くこと。 また、危険な状況にあることのたとえ。
お題
体に悪いと貰えない好物の鰹節を手に入れようとする猫でしたー。