本の隙間「巌窟王の宝石」
「巌窟王の宝石」
いつもの日曜日図書館。
「モンテクリスト伯」、「巌窟王」が並んでいる。
その中で、巌窟王の宝石という本が目に入った。
作者名は、不明、見慣れぬ本だ。
あまりに薄くて、今まで気が付かなかったのだろう。
手に取りページをめくる。
一瞬、何が書いているのかわからなかった。
奇妙な感覚だ。確かに日本語で書かれているのだが、
頭の中にスーッと入ってこない。
その本を手に取ると、社会人席へと座ってしっかりと読み始めた。
太陽がその島の岩を照りつけていた。
黒髪の一寸、小粋な男が一人、銃と鶴嘴を持って、船を見送っていた。
男は、怪我をしているように見えた。
私は岩と羊の群れに隠れていた。
船が見えなくなると、男は、飛び跳ねるように歩き出した。
「うそかよ」、私は、心の中で言った。
男の怪我は今別れた船の仲間たちと離れる口実だったようだ。
男は、辺りを警戒し、島を歩きまわった。
何かを探しているようだった。
私はその男に見つからないように、こそこそとついていった。
もし見つかったらどうなるんだろう。
まず、言葉は通じなさそうだし、その背の高い筋肉質の男と対面でコミュニケーションをとろうとしても、小柄で小太りのアジア人を目にした瞬間に、どれだけ驚かせるだろうと思うと、こそこそしているほうが、まだましのような気がした。
男はどうやら目的の場所を見つけたようだ。
岩の中にある円形の大きな石の前で立ち止まり、何かを仕掛けたようだった。
「ドカーン」という、大きな音が島中に響き渡った。
洞窟の入り口が顔をだした。
私は、岩から身を乗り出して、男の作業を見ていた。
突然、男はつるはしを振る作業を止めると、目を擦りながら、こちらを見た。
「やべ」っと慌てて岩陰に身を隠した。
どうにか見られずにすんだようだが、一瞬、首を傾げる素振りを見せたが、作業を再開した。
男は、何度か洞窟と外を行ったり来たりしていた。
暫くして、男が駆け足で、洞窟から出てきた。
私も、覗いていた洞窟から慌てて近くの岩場に身を隠した。
男の顔は高潮し、気が狂ったかのように、走り回り、神に感謝するように何度も天に祈った。
それから何日間か、男は、辺りを警戒するのみで、何事も無かったかのように過した。
私は、空腹の余り、男の用意したビスケットと葡萄酒を、その男が洞窟に入っている隙を狙って少しずつ頂戴したが、その減り具合にいぶかりながらも、気づいた様子はなかった。
迎えの船が到着し、男は船で去っていった。
男が去ると、私は男が丁寧に埋めた洞窟を探った。
洞窟の行き止まりの土をどけると、宝の山が出てきた。
私は、アーモンドほどのダイヤを5個ほど、ポケットに入れ、宝の山を埋め戻した。
ふと気が付くと、いつもの図書館の社会人席に座っていた。
どうやら眠っていたようだ。
確かに手にしていたはずの本はいつの間にか、無くなっていた。
慌てて本棚に戻って確認しても、本があった隙間だけが残っていた。
どこから夢かなと思い、ポケットに手を入れた。
何やら入っているはずの無い感触が手に伝わってきた。
おそるおそる取り出してみると、本物のダイヤがそこにあった。