No.003 襲撃
「目的地まで約500時間、三週間はかかる」
「じゃあ、人造人間を創る機械を壊す?」
「それが良いね、でも、904の性能や創作目的は不明なままだから調べないと」
「説明書が欲しい所だな」
「じゃ、ここは......」
広くて何も無くて真っ白な部屋の中央にポツンと置かれた机を彼を含めた5人が囲んでいる。
僕は窓際に立って外を眺めている。
星が綺麗だ。
人間はこんな景色を見ると、言葉にしたくなるという奇行とも取れる行動を取るらしいが、僕はこんな綺麗な物の前に声を出そうとも思えない。
もう遠くに見える火星の地面。
あの美しかった大地も人間が手を加えたことで汚くなってしまった。
地球も同じだ。
人間は愚かだ。己の周りの美しさ、ありがたさをまるで分かっていない。
自分や自分の生活のことにしか頭にない。
現に僕達人造人間が作られたんだ。
人間達の勝手な自由の為に。
彼等も同じだ。
小柄で橙色の髪をして黄色の目をしたNo.187。
金色というより黄色の髪をしたNo.023。
背の高い深い青色の髪をしたNo.529。
最後に紫色の髪で前髪が目が隠れるくらい長いNo.378。
それと赤い髪の彼。
皆『成功作』または『不良品』とマスター達が言っていた。
だから彼、000も僕が僕のことを『不良品』と言った時あんなに動揺したんだろう。
皆、何処かイキイキとしている。
僕の周りの皆は死んだ目をしていた。
どうせ、碌な生き方出来るわけ無いと。
「星が美しいのは、夢を抱えているから......」
いつか、僕によくしてくれたNo.903が言っていたことだ。
彼女は僕に姉妹の様に接してくれた。
彼女は最期まで笑顔だった。
「随分とロマンチックなことを言うんだねぇ」
いつの間に来ていたのか隣にいたNo.023。
ニコニコと笑う顔に何故か僕は不信感を覚えた。
この人は、苦手だ。
「......別に、903が言っていただけ」
「ふーん」
さして興味も無さそうな声。
嫌いだ。何か嫌いだ。
「もー、レーニーサン!904ちゃんが吃驚してるじゃん!」
「あはは、わりーわりー。そんなに怒んなよ187」
笑う187も寄って来て023(レーニーサン?)と話をしだす。
兄弟の様だと思った。
ふと、窓の外に目を向けると火星の裏側から見えた船体。
戦艦だ。
何本もの大砲。掲げている旗はクロリアス基地の物と、停船を促す物。
チカチカと舟信号のライトで此方に信号を送っている。
「戦艦......、気付かれた......?」
「......え?っ!戦艦が来てるよ!」
呟いた僕の声を拾ったのか窓を見て目を見開いた187。
瞬時に他の四人に大声で伝えた。
此方に来ていなかった他の三人も窓に駆け寄る。
「あれは、......ノージャスティ号、クロリアス基地で一番早い戦艦だ」
「研究所のスピードじゃすぐに追いつかれるぞ」
「なら、破壊するしかねーだろ」
最後の000の言葉に皆は賛成なのか、なにも言わずに何処からかそれぞれの武器を取り出した。
023は二つの拳銃を、
187は短剣を、
529は細身の長い剣を、
378は爆弾と思しき物を、
000は先程も使っていた銃を、
皆、一様に険しい顔をしている。
僕は戦闘のプログラムをされていないから戦えないが、この五人なら大丈夫だと根拠のない確信が芽生えた。
「904は、此処にいろ」
クシャリと僕の頭を一撫でした000は他の四人と一緒に出口に向かう。
五人が出て行った後もあの頭を撫でられた感覚が忘れられなかった。