No.002 動キ出ス
その姿は正に『鬼』だった。
十人は夕に超えている戦闘用の人造人間を物ともせず倒して行く。銃を扱い、足を使い。
恐怖と驚愕の感情に染まったマスターの顔は愉快だと思った。
目を見開き、顔を蒼白にして震えている。
一人では何もできないのに偉そうにしていた人間が目の前で怯えている。自分達の手で作り上げたものに。
愉快、愉快だ。
でも、こんな時にどんな表情をしたら良いのかわからない。
僕がくだらないことを考えている間に全員倒したらしく、彼は僕を肩に担いだままマスターの前に仁王立ちをしていた。
銃をマスターの眉間に向ける彼。
「ま、待て!何が望みだ?何でも叶えてやるぞ!最高級のオイルでも、性能の良いスリープ機能でも、なんでも......!」
「............」
ガンッと形容し難い音を立て、マスターの眉間を一寸の狂い無く貫いた鉛玉。
その様子を見ることはできなかったが、血の量や音からして眉間に綺麗に入ったのだろう。
「お前は、何故こんなことをする?」
「......もう、誰かに自分のことを縛られんのはごめんなんだよ」
呟いた彼の声は悲しげで、その表情を見て取れることはできなかったが恐らく悲しそうな顔をしているのだろう。
何も言えずに地面を見ていると、僅かに振動していて音が聞こえる。
ゴゴゴゴゴ、と何かがせり上がるような地響きに僕は思わず彼の服を掴む。
彼は特に気にした様子も無く、歩き出す。
壁の窓から外を見ると、星が見えた。
星も見えたが、地面も見えた。
「第六宇宙研究所の状態」
呟いたら現れるメニュー。未だに出ているERRORの文字を隅に追いやって研究所のステータス、状況、意図を確認する。
今現在、火星に設置されていた研究所が動きだし、移動中らしい。
目的地は地球。
遥か昔に人間が捨てた惑星。
「何故、地球に行くの?」
「植物を取りに行く」
「しょくぶつ......?」
「二酸化炭素を消費して酸素を生み出す物質だ」
そんなもの、聞いたことがない。
人間が嘗て試みた所業をそのしょくぶつはやれるのか?
「何故、それを取りに行く?」
「新しい惑星を作る為に必要だ」
新しい惑星?
遥か昔に破棄された『ニューアース計画』と同じ様なことを言っている。
そもそも、新しい惑星は沢山の隕石や引力が組み合わさってできる全くの偶然の産物だ。
それを人工的に作り出せる訳がない。
不可能だ。
「言っておくが、惑星は人工的に創る訳じゃねぇぞ」
「なら、どの様にして創る?」
「それは言えねえ」
それだけ言って彼は黙り込んだ。
♦︎
しばらくして彼はある大きな扉の前で止まった。
なんの躊躇も無く入るところを見ると、危険な場所ではないと判断出来た。
中は薄暗く、まだ目が慣れ無くて中がよく見えない
だが、何人かの気配も感じる。
恐らく、マスター達では無く彼の仲間だろう。
その内の一人がピクリと反応した。
「......000、その小娘はなんだ?」
「俺たちと同じ『革命軍』になり得る者だ」
迷い無く答えたその言葉に僕には疑問が浮かんだ。
革命軍とはなんだ?
考えていると不意に床に降ろされた。
「俺たちは『革命軍』理想郷を創る組織だ」
「ボク達も、勿論君も、あのクズ共に作られた人造人間」
「それでも、反旗を翻す」
「俺たちは、『革命軍』でもあり、『抵抗軍』でもある」
重苦しい雰囲気と、落ち着いた声音があちこちから聞こえる。
革命軍、抵抗軍、マスター達に逆らう者。
「お前の名は?」
彼に名を問われた。
随分昔に誰かがつけた名前、
「......僕は、No.904、未完成の人造人間」