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ふっーと息を吹き込むと、

歓声と笑顔に満たされた無限の輝きを纏った球体が現れる。

美しさと儚さが混ぜ合わさった無数に現われた球体は、

風に身を任せながら少しずつ空へと近づいていく。

太陽の光と重なり合い、その身に眩しさを纏いながら人知れず消えていく。

男は持っていたストローから口を離し、

そのすべてが消えゆくさまを無言のまま見つめていた。

『 どうしたの? 』

男の隣に腰かける少女が、不安そうな顔を男に向け訊ねてくる。

『 い、いや・・・。 ちょっと、昔の事を思い出してね・・・ 』

男は静かに答える。

『 楽しかったこと? 』

『 ああ。 もちろん。 』

『 じゃあ、お友達との思い出? 』

『 ああ、友達・・・友達のことさ。 』

『 ふ~ん 』

少女は、なんだか不満そうに口を尖らせた。

男はその様子を横目で見ながら、再びストローに口を付け、

無数の球体を作り出す。

わ~、という歓声を隣で感じ、ご機嫌を直すように少女にそれを手渡す。

少女は、無邪気にケタケタ笑いながら、無数の球体を放出させていく。

男はその作り出される球体を見つめながら、望郷へとその身を任していく。




■□■□■□■□■□■□■   プロローグ   ■□■□■□■□■□■□■



四月の春らしくない冷風を受けながら、

水谷 あかりは、なにかそわそわと緊張が取れない心持でいた。

北海道の片田舎の町、芽衣室めいむろ町、午後の駅のプラットホーム。

ホームには、水谷 明を含め三人が佇む。

水谷 明は、この土地で新生活を始める。

明の育ての親・吉野妃花よしのひめか

明の妹・水谷陽鞠みずたにひまりは札幌で暮らすことになっていた。

いま、二人の乗り込む札幌行の列車を待っている。

水谷 明は、羽織っているダークネイビーのPコートの胸元をなおす。

そして、所在無げに列車の来る方向に身体を向けながら、

何となく今までのことを思い返した。


八歳の時に実母を亡くし、

一年後の九歳の時に警察官だった父が教員の吉野妃花と再婚、

その一年後に父が失踪した。

当時十歳の明と七歳の陽鞠を、

血の繋がらない吉野妃花が見捨てることなく育ててくれた。

実母は肺病で病死と聞いているが、父の失踪に関しては全く判らない。

こと詳細は幼い明には、難しいと判断されたのか?

父の親戚からも、詳しい経緯を語ってもらったことがない。

妃花から、父は失踪当時刑事をしており、日頃から退職を考えていたと聞く。

もっと詳しく知りたいのは、やまやまだったが、

妹の陽鞠が程無く 失語症と対人関係を形成できない病を発症し、

殊の外 家の中でも外でも、父のことを話題にすることは ほぼ無くなった。

父の不可解な失踪、

その父のいなくなったことのショックが原因だと思われる陽鞠の発症、

自分達と血の繋がらない妃花との生活。

負担を掛けたくない思いが、タブーを作り仰々しさを助長させた部分があると、

二人を眺めながら、あかりは反省の念を抱いていた。


そんな明の自責を感じたのか、

黒のシックなコートを羽織った妃花がくるりと首だけをあかりに向け、

声を投げかける。

『 なにかネガティブなこと、考えていませんでしたか? あかりさん。 』

『 い、いや、別に。 』あかりは、わざとらしく首を振る。

『 ほんとにぃ? 』

ワザとらしく語尾をのばしながら、彼女の漆黒な瞳があかりを覗き込む。

あかりは「 はずかしいから、あんま見んな 」と、

軽口を叩きながら妃花からの視線を逃れる。

妃花や陽鞠に負担を掛けたくない。父はもういないのだ。

そう、いないのだから死んだも同然。

いや、そう割り切って先に進もうとしていたのか?

自分でも、いまだに混乱する。

でも、父のことはもう考えないようにしようと心掛けていたのは事実だ。

しかし、あの日から少し自分に変化が起きた。


父の購入した家があると発覚したのは、半年前のことだった。

とにかく不思議だった。 そして不思議なタイミングだった。

それは、あかりの十五歳の誕生日、妃花がご馳走を用意しながら、

ごく自然に「自分の実家がある札幌に一緒に行かないか?」と

あかりたちに提案した翌日のことである。

高校生活は札幌か・・・等と、少しぐらついた気持ちでいたところを、

北海道の身に覚えのない弁護士事務所からの電話で、

「 父の購入していた家を見に来てほしい 」との連絡があったのだ。

全くの寝耳に水の状態で、理解するのに時間を要したが、

二週間後、あかりたちは北風を一身に受け、さらに呆然と立ち尽くしていた。 

空港に迎えに来た横田と名乗る弁護士の車に乗せられること一時間半、

その着いた場所に妃花とあかりは虚を衝かれた。


北海道芽衣室町にある農村地帯の一角。少し小高い所にある広大な土地と、

広めの平屋の一軒家。

本州の人間が道楽で購入した、

まるでバブリーな感じ全開のほとんど利用価値を持たない家だ。

牛舎や馬小屋、サイロ、農機具小屋等は無く、

離農した農家の土地を購入した訳でもなさそうだ。

屋根は瓦などを利用した日本家屋。中も和室で占められている作りで、

土間や台所の勝手口もある。

とても、ミステリアス?というか不思議な物件だ。

ただ広大な緑の中にどんっと、家がある・・・。

そして家の裏手には300mはありそうな林というか森があり、

家の正面は玄関から敷地外の町道まで100mはある。

というか、100m先に郵便受けがある。

しかも、『 水谷 』とすでに表札が掲げられていた。

そして、隣家( 農家 )まで約1.5キロは離れており、

まったく孤立した場所に家があった。

町道は舗装にはなっているが、街灯らしきものが無く、

夜は真っ暗になるのかと思うと、ちょっと身震いをしてしまう。

( なぜ、こんな所を・・ )と、

疑いたくなるような、不思議かつ突然の父の遺産の出現。

電話や車内での説明で大まかな事の成り行きは理解していた。


父は約六年前、失踪の一年前にこの土地を購入、

そしてあかりの十五歳の誕生日まで秘匿と管理を横田弁護士に任せていた。

電話や車内での対応などでも感じていたが、

この弁護士は有名なミステリー映画で探偵に調査を頼む弁護士に

雰囲気も口調も似ている気がした。

お金を前金で受け取っているとはいえ、父の失踪も不安要素にせず、

筋を通すあたり弁護士の鑑だろう。

でも、やはりお金の問題が気になった。

横田弁護士の話では、今までの金銭面はクリアしているらしい。

しかし、今後の維持費や税金等の関係は白紙だと述べた。

そして妃花は父の意図を読み解くより、

金銭面の方が最重要課題となっていたと思う。

というのも、

妃花は自分の実家のある札幌で専門の治療を陽鞠に受けさせたいという

金銭面と環境的なモノで何か進展を目指したい考えがあった。

妃花の父はすでに他界しており、

母一人だけになっていることも一人娘として気になる部分もあり、実現すれば

今ある状態から少しでもいい状態に近づけるであろうという期待があった。

でも、この父の残したモノが妃花の表情を曇らせる。

あかりは東京への未練はなかったが、

あかりの父の遺産というか残してくれたものに対するせめてもの恩義というか、

いろいろな感情があり、いろいろと迷った。

父の何かを感じ取り、うまく言葉にできないが、

( ここで生活してみろ! )

と言われているようでもあった。 というか、

そう思いたかったのかも・・・しれない。

「 妃花さん、俺ここに住んでみたい。ここで、高校生やってみたい 」

いっときの別離、なぜかそれが運命であるかのようにも感じていた。



( 別れって、ほんと気まずいな )

そんなことを考えながら、あかりは所在無げに目のやり場を探す。


『 あかりさん。 なにかあったら、すぐに連絡をくださいね 』


妃花が、そんなあかりの顔を撫でながら心配そうに覗き込む。

吉野 妃花。 

父の二番目の妻であり、あかりの育ての親。

純和風な顔立ちで、ストレートロングの黒髪。

30代には見えない程の落ち着きと、知性を隠さないオーラがあり、

あかり自身びくっとすることが何度かある。

二人には 隔たりのようなものはないのだが、最初から

『 ひめか と呼んでね、私はあかりさんと呼ばせてもらうから 』

と、いった経緯がある。

そんな感じが6年経っても、続いている。

ゆっくり感情をもって話す口調は、ほんと教師という感じが素直に現われていて、

あかりは( 俺はそんなに こどもじゃない )と

強く反抗したい気持ちもときにはあるが・・・

ちょっぴり複雑な感情を抱えているので、素直になり切れないところがある。


『 ひめかさん、大丈夫です。 』


そう言いながら、恥ずかしそうに妃花の手から顔を遠退ける。

そして、妃花の隣で いつものようにだんまりの妹に顔を向ける。


『 ひまり・・・ 』


兄の呼びかけに、俯いた顔を少しあげ、ほんの少し目線をあかりに向けた。

水谷 陽鞠。

水谷 明 の妹。 十二歳。

背は低く、特徴的な大きくて まん丸の目。 ボリュームのあるボブカット。

多少男っぽくみえる風貌。今日着込んでいる深緑色のブルゾンのジャケットが

女の子らしさを消している要素でもある。


『 ・・・ 』


無言で言葉を待つ陽鞠に、

あかりは少し照れながらも何か兄らしく背伸びした良い言葉を探す。


『 その・・・、一人の時間とか多くなるけど、その・・・頑張れよ。

俺も同じだから 』

『 ・・・・・・』

『 なにか、あるか? その、言いたいこと、とか・・・さ 』


陽鞠は両手に持った鞄を無造作にその場に下ろし、再度あかりを見上げる。

ジッと一直線に見つめる目。

何か訴えているように見えるが、あかりには判らない。

兄という立場でもちょっと正視できない力のある瞳を向けられ、

困ったように妃花に視線を逸らしつつ、繋ぐ言葉を探す。


『 その・・ひめかさんの負担にならないように、・・・な 』

『 ・・・・・・ 』

『 あと、良くなるから・・・その、環境も変わる訳だし・・・

その、お前の病気も・・』

『 ・・・ ぅ 』

『 い、いや~・・・、そしたら、モテまくりだな、その ・・・

お前、けっこう可愛いし。

その、今日着ているN2Bも、ちょっと男っぽいけど良く似合ってるし・・・ 』

『 ・・・ぅぅ 』


陽鞠が何かを発しようと両手の拳を握りしめながら、それを胸元に引き寄せる。

そして目には うっすら光るものを滲ませている。

その時、それを遮るようにホームにアナウンスの声が聞こえてきた。


『 あと五分で、十尾帯とおおび市方面、札幌行き列車が到着します。

停車時間は一分です。ご乗車の方は、白線内側・・・ 』



< 聞こ・・・え、る? >



あかりの脳内に、一瞬何かの声が流れ込んできたように感じた。

しかも、男とも女とも取れる不思議な感覚。その声。

一瞬、陽鞠から発せられた言葉かと思ったが、

耳からというより脳の中に入り込んだ、という表現が正確な感じがし、

あかりは少し動揺した。

幻聴か?

陽鞠は、まだ拳を握ったまま同じポーズで、少し震えている。


『 もうすぐ、列車が来るわ。別れの挨拶は済んだのかしら? 』

『 あ・・・、はい 』


あかりは、取り繕った笑顔を作りながら陽鞠の髪をくしゃくしゃと撫でた。

妃花は場を和ませるような柔らかな笑みを浮かべ、くすっと声を出して笑った。

陽鞠は何も言わず兄に頭を撫でられていたが、

次第に肩の力が抜けたように握った拳を解き、

甘えたようにあかりの傍に半歩 体をゆだねる。

あかりは、そんな陽鞠を傍らに肩を抱く。

何かを伝えたいと気持ちが焦るが、

自分の正直な気持ちを伝えるのは少し恥ずかしかった。

ふと、視線を戻すと妃花が微笑んでいる、ように見えた。

しかし、それはなんだか作りモノのような、寂しさを帯びたような・・・

あかりは陽鞠を傍らに、そして妃花の左手をそっと握った。

妃花は一瞬きょとんとし、あかりを見つめる。

だが、すぐに自身の右手も差し出してきた。



『 陽鞠のことを投げ出したみたいで・・・その、ごめん。 』


あかりの突然の言葉に、妃花は驚き目を見開く。

陽鞠も動揺しているのが窺える。


『 そんなこと・・・、 』と、妃花が口籠る。

『 あと、妃花さんのことをずっと、ひめかさんって呼んでいて、

その・・ごめん、なさい 』

『 もう、何言ってるの! 』妃花が頬を赤らめる。

『 なんだか、言わないといけないことだと思うから・・・ 』

あかりは必死で言葉を繋ぐ。

そんなあかりの言葉を受け、妃花が明らかに動揺している。

『 もう、私をなんっ・ 』

『 あの! あの、その・・・』

あかりが、妃花の言葉を遮る。

あかりは、さよならが言いたくなかった。


『 ありがと、・・・おかあさん。 』

あかりは、心から思うことがある。

感謝の言葉は、自身の口で伝えないと・・・

それを、相手が受け取ってくれる喜びを自分は大切にしたいと・・・

妃花の涙の滲んだ満面の笑みは、とても大切な絆の表れであり、

あかりには恥ずかしさも吹き飛んでしまうくらい、大切な瞬間だった。



二人を見送った帰り道。

あかりは妃花に買って貰った新品の通学用自転車を漕ぎながら、

まだ雪が残る日高山脈の山々を視界の真横に捉えていた。


『 あの山々の向こうか・・・ 』


誰に聞かせるでもなく、ぽつりと独り言が漏れた。

( ここから列車で三時間はかかるみたいだし、かなり遠いよな )

そう考えると、急に孤独感が襲ってきて手足が覚束なくなる。

あかりは自転車を止め、ふと来た方向を振り返る。

今、走ってきた道に人っ子一人いない。

しかも駅周辺の商店街を抜けてから30分、まだ誰にもすれ違っていない。

まわりを注意深く見渡す。

あたりは農家の畑に囲まれた田園風景。

遠くにトラクターが一台、また遥か遠くに一台、農作業に従事している者の姿か、

動く影も極僅かに確認できる。それも注意深く見ればの話だ。

比較的大きな町道の歩道にあかりは、

自転車に跨りながら動作を止めて辺りを見渡してみる。

しかし、ほんとに人がいない。

車も通らない。勿論、コンビニ、自動販売機も見当たらない。

隔絶された陸の孤島か、ゴーストタウン?いや、それは失礼か。

これが北海道の本来の姿なんだな、

あかりはそう言い聞かせ、ハンドルを握り直す。

四月のまだ冷たい寒冷地の北風があかりを歓迎する。


( 俺が十五で良かったな、まだ始まっていない。 

 一人で高校三年間、頑張ってみせる。 )


北の大地で、あかりはそう心の中で宣言をした。






■□■□■□■□■□■□■    入学前日    ■□■□■□■□■□■□■



翌日。

心の宣言は、空しくも砕け散りそうになる。

あかりは、妃花に買って貰った自転車を全速力で走らせていた。

入学式を明日に控え、あかりは通学距離と時間を計っていた。


( 休憩なしで、一時間半も漕いでるのに、まだ着かないとは・・・

どういうことだ! )


あかりの気持ちが入学前に折れそうになる。

あかりは、自分の住む芽衣室町の隣町・十尾帯市にある私立十幸学園へ

通うことになっていた。

地元では進学校として有名な学校であるが、

少子化も伴って入学にはある程度の学力と推薦があれば、

なんとか入学できるという堅苦しくない少しユルい学校であった。

指定制服はあるが男女共学、選択教科の導入や部活動の加入が強制で無い、

アルバイトも自由等、あかりには魅力的な感じではあった。


( 少し迷ったとはいえ、もう、かれこれ1時間40分。

もう、着いてもいいんじゃ・・ )


足の疲労もそうだが、なかなか辿り着かない不安があかりを覆い始める。

あかりは自転車を止め、辺りを見渡す。

車の通行量は多くなっているが、歩行者は全く見当たらない。


( 誰かに尋ねる相手もなしか・・・。おっ、百円自販機の看板発見。

あそこでジュース、いや水を買って少し休むかな・・・ )


あかりは、自転車を押しながら20mほど先の自販機の看板を目指す。

そのとき、ガッシャーンと、不安を高める威圧音が聞こえた気がした。そして、

『 おまえ、なめてんのか? 』という攻撃的な男の声がし、

気のせいではないことに気付かされる。

あかりはすぐ後ろを振り返るが、だれもいない。


( なんだ、喧嘩か? どこで・・・もしかして、あの自販機付近からか? )


そして、新たに『 こっちは、用はねぇーんだよ 』と、女性の声。


( 痴話げんか? )


あかりは、自転車を押す手を止める。

声は、やはり自販機付近だ。

看板が歩道から見えているが、

自販機のある窪んだスペース付近から聞こえる気がする。


( どう、しようか・・・ )


『 なんで声掛けたぐらいで、そんな口聞かれなきゃ、いけないんだ? んあっ!』

『 何度も言わすな、こっちは、用はねぇーんだよ 』

口汚い言葉が双方から発せられている。

あかりは腕力、喧嘩仲裁には自信ないが、可愛い女性なら

ちょっとカッコつけたい気持ちも正直あった。

でも、今は学校にたどり着けず、喉もカラカラ・・・。

あかりは、まぁいいや、何とかなれと決意を決める。

喉への潤いが最優先。それ以外やましい気持ちはない。

それに双方、興奮気味だから、こちらには大して気には留めないだろう、と。

あかりは、歩き出す。

すると、やはり自販機の看板の陰から二人の人物が見えてきた。


一人は無骨そうな男、20代くらい、たいした印象は無い。

翌日会っても覚えていないくらいな感じ。

もう一人は、女性。やっぱ、女の子か。

少し低めの声だから、もしかしたらと思ったが・・・。

黒髪のセミロング、少しつり目の勝気な顔。同じ年か、いっこ下くらいか。

まあ、いいや。

あかりが、機械的に自転車を止め、

ごく自然に何事も無かったように自販機の前に歩み寄る。

自動販売機は三つある。その真ん中へと歩を進めていく。

いきなり二人の前を割って入るように現れた少年に、

二人とも( なんだ、こいつ )と言いたそうに、

会話( ? )もしくは言い争いが滞る。

そして、あかりの動作に注視する。

あかりは財布を開け、小銭部分を見た。百円玉が無く、十円玉が十枚ほどあった。

あかりは二人の視線を感じていたが、

当たり前の様に平常心で十円玉を投入口へ入れていく。

一枚、二枚、三枚と。

十枚入れ終え、ランプが一斉に点灯するが、

あかりの購入目的のペットボトル水が点灯しない。平常心を保ったつもりだが、

購入目的の水のペットボトルが売り切れていたのを確認していなかった。

( まずった )そう思い、こちらを見ているであろう二人を横目で確認する。

何度も押す姿が面白かったのであろうか、二人とも少し口に手を当てている。

あかりは、急に恥ずかしくなり急いで返却レバーを引っ張る。

ちゃりいん。なんだか、心細い響きが一つ。

『 あっ、・・・両替? 』

百円玉一枚持って、呆然とするあかりを見て二人は大爆笑する。

『 おまえ、なんなの? 』と、吹き出しながら笑う男。

『 おかっしぃ 』と、バカにするようにケタケタ笑いをする女の子。

あかりは火車のような顔でもう一台の自販機に硬貨を投げ入れ、

ペットボトルの水を購入する。

男はそれを見ながら、

『 なんかバカらしくなったから、もういいや。 』

と、女の子を置いて行ってしまった。

あかりは、取り残された女の子を見る。

凛々しい眉、黒目が大きく、少しつり目。

笑っているせいか、頬を少し赤らめている。

セミロングの黒髪が風になびき、笑いを堪えながら、

体裁を整えようと黒のダッフルコートから薄赤い手袋を取り出している。

そして少女は、視線を真っ直ぐあかりに向け、一言言い放つ。

『 あんた、じろじろ見すぎだよ! 』

あかりは、『 ごめんなさい 』と、ばたばたと分かり易いくらい悪意の無い、

他意のないことをアピールした。

その動作が可笑しかったのか、

また少女は苦笑交じりに手を顔に当てながら、一歩あかりに足を向けた。

『 うそ、冗談だよ。それに、

こっちは相当あんたのこと見て、笑ってたし・・・ 』と、

少女は少しはにかみながら言う。

そして、その少女はまた一歩近づき、あかりをまじまじと見ながら尋ねる。

『 あんた、サチ高の生徒? 』

『 さちこう? 』

『 十幸学園のこと、地元じゃサチ高って呼んでる・・・って、

地元じゃないの? 』

『 おれ、その十幸学園を探している最中で・・・ 』

そう言いながら、あかりは道端に止めた自転車へと視線を向ける。

少女は、「へぇ~」っと感動の無い生返事をし、自転車を確認する。

『 同い年くらいに見えるけど、じゃあ新一年生? 』と、あかりに向き直る。

『 そ、そうだけど、君は? 』

『 アタシも、一緒だよ。明日から新一年生、じゃあ仲間だね。 』

そう言いながら、少女はまた一歩近づく。

あかりは、もうほぼ隣に立っている少女をまじまじと見つめる。

髪は不純色などまるでない漆黒の艶を帯びていて、まつ毛も長く切れ長の目で・・

『 また、見てる・・ 』

『 そういうわけじゃ・・・その、ごめん 』あかりは、そう済まなそうに俯くと、

少女は、ばんっと少年の背中を押した。

あかりはその反動で自転車の近くまで、ふらふら歩を進め、少女の方を振り返る。

『 学校なら、この道を真っ直ぐ行った先の最初に見える信号を左折、

 少し緩くなった坂を下り切ると、橋が架かっているから 』

あかりは、矢継ぎ早の道案内に耳の神経を集中させる。

『 その橋を渡ったら、すぐ神社があるから。その神社を通り過ぎたら、

あんたの目的地があるよ。 学校は神社の隣りだからな 』

『 あ、ありがとう 』

『 あんた、名前は? 』少女は道案内と同じトーンで尋ねてくる。

『 水谷明、明るいって書いて、あかり 』

すると少女は短く笑い、手袋をもて遊びながら、あかりに近づく。

『 そこまで、聞いてないよ 』

少女は、年下の男児に諭すように小声で言った。


あかりは礼を述べると、すぐさま自転車に飛び乗った。

もう、恥ずかしさでいっぱいだった。

そして、なんだか感覚が鈍くなったなと感じた。

俺って、いつの間にあんな情けない声しか出せなくなったんだろう。

これまでの自分って、同世代の女の子に、あんなに卑屈というか

オドオドしていたかなぁ。

知らない土地で独り暮らし、同世代の異性との遭遇、明日は入学式、

見知らぬ生徒や先生と日々を送る。

自分では感じていなかった緊張が、露骨に現われたようで少し動揺した。

いつもの自分じゃない。いつも通りでないと、俺はどうなってしまうんだ。

いつもの感じって、どんな感じだ?

あかりは、自転車を漕ぎながら中学時代を思い出していた。

特に浮いた存在でもなく、勉強やスポーツも中の上くらいだ。

イジメにも無関係、男女関係なく話もでき、遊んだりもする。

それに料理も得意だ。下校の際はスーパーに立ち寄り、夕飯の買い出しをする。

帰宅すると、帰りの遅い妃花の代わりに夕飯の準備・調理をする。

出来たものを妹と無言で食べる。食器を片づけ、

妹のいるソファに並んで座り、テレビを無言で見る。

宿題や予習をしながら、明日の準備をする。

って、あれ? なんでこんなことを思い出しているんだ?


気付くと、あかりは神社の横を通りすぎた辺り、

学校の校門が見えるところで自転車を止めていた。

まったく、何やってるんだか・・・というか、何考えているんだか・・・

あ・・・そういえば、あの子の名前を聞いてないや・・・。

あかりは、そう思いながら腕時計に目をやる。ジャスト2時間。

迷わず、寄り道等しなかったら、1時間45分くらいか・・・

標準タイプの映画と同じくらい。

映画二本分の登下校になるかと思うと、あかりはちょっと憂鬱になった。

天候とタイヤのパンクには気を付けないと。



1時間45分後、あかりは誰も待っていない我が家に到着した。

町道から我が家までの100mは粒の細かい砂利道で繋がっている。

そして、ちょっとホラーハウスのような重厚な雰囲気がある平屋の日本家屋が

無言で主人を受け入れる。

ほんと、誰もいないことを意識すると、ほんのり薄気味悪い感じがする。

この家には物置が無いので、

あかりは玄関を潜り、広めの土間部分に自転車を止める。

靴を脱ぎながら、辺りを改めて見直す。

そういえば足りないものって、あるかな?

無いモノは、自分で揃えないといけないわけだし・・・。

炊飯場こそないが、ちょっとした作業場が設けられている土間部分を見渡し、

そして足元を見る。

( 必要なモノ、サンダル一足。 )

そう呟いて、床に腰かけていた体を背中ごと放り出し、天井を仰ぎ見る。

ほんと、何時代だよ!っと、十五歳のあかりは軽くツッコミを入れる。

この居間部分のほかに、和室が二つ、台所・風呂・トイレが各一つずつ、

そして、陽のあたる南側の東西に延びる大広間が一つ。掃除だけでも大変そうだ。

風呂は薪で湯を沸かす時代錯誤の代物

ストーブもちょっと大きめのルンペン・ストーブ。

これも、薪が必要か・・・。

妃花には無理を言って、ここでの新生活を始めさせてもらっているので、

あまり愚痴は言いたくない。

光熱費のほかに、生活費等の仕送りもしてもらうことになっていて、

負担も掛けたくない。


『 ゴールデンウィークまでには、バイトを見つけないとな 』

あかりは漠然とした予定を呟いてみる。

そう考えると、買いたいものが次々に出てくる。

帰ってくるときに気を付けてみていたのだが、やはり外灯が極端に少なかった。

携帯型の懐中電灯が必要だろう。 あと、自転車の空気入れ。

これは家用と携帯用の二ついるな。

あと雨天用の雨具カッパも必要だな。

なんだか通学用品ばかりで、気が滅入ってくる。

あかりは、右腕で目を覆いながら目を閉じる。

( 1時間45分か・・・疲れたなぁ。 )

今日の行動を振り返りながら、あかりはウトウトし始める。

昨日は、なんだか寝付けなかった。

家の中のしんとした空気、家屋のきしむ木の音さえ聞こえず、

なんだか不気味だった。

二人と別れてから、いろいろ考えを巡らしたが、

新生活の不安がやっぱり拭いきれなかった。

緊張していた。こんなにビビリだったかと、愕然とするほどだった。

楽しいことを考えたい。外で変な音がしても、熊ではないと信じたい。

新生活、楽しい仲間と一緒にいたい。恋人もできたら、いいな。

そして、妹の陽鞠が喋れるようになると・・・ほんと、いいな・・・。

あかりは目をつむり、独り勝手な妄想を夢見ながら、

ゆっくりとやってきた睡魔に身を委ねた。


数時間後、あかりは悲鳴を上げながら飛び起きた。

ちょっと夢にうなされて起きたのだが、

目を開けても辺りが真っ暗だったので、びっくりして声を上げてしまった。

( もう、陽が沈んでいたのか・・・ )

あかりは、覚束ない足取りで、

壁に手を押し当てながら電気のスウィッチを探し見つける。

パチッ、ちかちか・・。 蛍光灯が元気なく、薄明るく辺りを照らす。

あかりは灯る蛍光灯を、ぼんやり眺める。

昨夜も感じたが、やっぱり暗いなぁ。

電気って、やっぱ大切だな

( 必要なモノ、替えの蛍光灯・非常用のロウソク )

あれ、いま何時だろう・・・、夕飯の支度と明日の朝食も考えないと・・・

台所に向かいながら、なんだか力なく溜息をつく。 思ったより、大変だな。

起きていると、いろんなことを考えてしまって、なんだか正直つらい。

学校が始まってしまうと、また変わるのかもしれないが・・・。


あかりは台所に向かい、米櫃から一合分取り出し、米を研ぐ。

味噌汁を作るために湯を沸かす。具に入れるための大根を冷蔵庫から取り出し、

ピーラーで皮を剥き、包丁を入れていく。

トントンと小さな音が滑らかに響く。三枚入りの中揚げから一枚取り出し、

それも包丁を入れていく。そしてダシ入り味噌を用意しながら、おかずを考える。と、あかりは気付いたように視線を落とす。

火を掛けているレンジ周りは、妃花が磨いていったのできれいだった。

食器や調理器具も、食器棚や戸棚にきれいに収納されている。

そういえば、三角コーナーのネットまできちんとしてある。

昨日は、用意した弁当やコンビニのパン等で済ましていたので、気付かなかった。


( 妃花さんは、やっぱりお母さんだよな )


あかりはしみじみそう感じ、心から感謝した。

独り飯を済ませ、食器を洗い、明日の朝食の準備をする。

歯を磨き、目覚ましをセットし、明日着る制服もチェックする。

トイレを済ませ、寝室に使用している大広間へ足を向ける。

そして、薄暗闇の中をあかりは白くぼんやり存在するモノに向かって、

感覚で歩を進めていく。

駄々広い畳の部屋の中央にデスクライトの置いた小さな机が一つ、

その傍らに布団が一式敷いてある。

あかりは、デスクライトを付けて腰を下ろす。

机の上には一冊の新しいノートと筆箱が置かれている。

あかりはノートのページを開き、筆箱から馴染んだサインペンを取り出す。

しかし、すぐ考えあえぐように、

キャップの付いたままのペンで机を小突き始める。


『 あ~、これをやらなきゃ、一日が終わらないのか・・・ 』

あかりは、溜息混りに呟いてみる。

それは、妃花への日記。というか、妃花のための日々の報告書。

これは独り暮らしを許可する条件に、あかりに課せられた義務である。

( 非行防止も兼ねて )

などと笑いながら言っていたが、教育者として少し本音の部分もあるのだろう。

妃花の方は、手紙を定期的に出すといっていたが、

あかりもそっちの方がよかった。

でも「楽しみにしている」と、真顔で言われると無下に断れない性格なのだ。

『 楽しみにしている、か・・・ 』、あかりは声に出して呟いてみる。

( うん、よし! )

あかりは気持ちを入れ直し、ペンのキャップを外す。


「 入学式前日。今日、学校までの時間を計ってみた。

なんと、自転車休憩なしで1時間45分も掛かった。

道も判らず、ちょっと苦労した。

でも、道案内をしてくれた少女がいて、すごく助かった。

おかあさんと、ひまりは・・・

いや、かあさんでいいよね?


えっと、


元気ですか? 」





■□■□■□■■□■□■□    入学初日    □■□■□■■□■□■□■



翌日。入学式としては風もなく、晴れた心地の良い日のなか、

水谷明は自転車で風を切って進んでいく。学校が近づくにつれ人が多くなり、

あかりは自転車を降り片手でハンドルを支えながら押し進む。

十幸学園の入学式は、ちょっと変わっていた。

在校生(上級生)たちが学校の校門の壁際に立ち、

新入生たちを祝いながら学校へと導いてくれるのだ。

それは、新入部員の勧誘・獲得も兼ねている恒例の新学期イベントだ。

邪魔にならないように、みんな勧誘チラシではなく、

勧誘名刺なるものを手渡している。

表に部活名・裏に活動内容が記載されている。

入部に関しては強制はないと聞いていたので、

あかりはサッカー部の名刺をもらいながら少々驚いた。

ふと辺りを見渡すと、母親や父親たちの笑顔に付き添われた新入学生たちが、

みな同じように戸惑いつつ大量の名刺を貰いながら校門をくぐっていく。

あかりに差し出される名刺をもった大量の手と、拍手や歓声、

クラッカーを鳴らす者までいる。

あかりは自転車を押しながら皆とは外れ、

入学案内にも記載されていた一年生用の駐輪スペースへと進む。

まだ一台も止まっていない駐輪場に、カタンと小さな音を立て自転車を置くと、

あかりはひとり立ち尽くす。


なんだか、圧倒された。予想外だった。

なんだか楽しいことが待っている気がした。でも・・・

あかりは手にした勧誘名刺の数々を見つめる。

サッカー部、野球部、手芸部、映画研究部、映像制作部、落語研究部、

空手部、図書研究部、ボランティア活動部などなど、一枚ずつ見つめる。

『 今は部活より、バイトをしないと。お金が必要だし 』

そう呟くとあかりは、名残惜しそうに名刺たちを自転車の籠へと放り投げた。

すると同時にクラッカーが鳴り響いた。

あかりの真上から鳴った気がして、空を仰ぎ見る。

澄み切った青い空。

なんだか、東京では感じられなかった空の青さがあかりの胸を打った。

そうだ、前へ進もう。妃花や陽鞠に情けないところを見せられないな。

あかりは決意を改めて振り絞り、視線を戻す。


リン。


鈴の音( ? )が一音、あかりの耳に届いた気がした。

すると、一人の少女が歩いてくるのをあかりの視線が捉えた。

まるで舞い降りてきたかのように自然な足取りで、

あかりの方を正面から向かってくる。

長い黒髪を靡かせ、背筋がすっと伸びた長身の少女が歩いてくる。

あかりは、自分が無意識にまじまじ見つめているのに気付き、

悪いクセだとあえて視線を落とす。

そうだ、教室は新校舎の二階とあったが何処だろう。

あかりは入学案内に記載されていた校舎案内図を取り出す。

新校舎は、旧校舎の東側に位置している。

あかりはサドルに案内図を広げ、一人思案する。

一年D組、クラスは全部で36名。

担任の先生は女性、しかも今年から赴任と書いてある。

( みんなここが初めてか・・・ )

そう考えると、なんだか新鮮さが増した気がするな。

( えぇーと、ここからだと・・・うわっ! )

あかりがひとり案内図を指で追っていると、

知らないうちに先程の少女が彼の真正面に立っていた。


リン。


鈴の音が再度、あかりには響いたように感じた。

あかりは、正面に立つ少女を恐る恐る見つめ直す。

息が止まるとは、このことか。あかりは動揺した。

目を伏せたい気持ちもあるが、見ていたい。いや、永遠に見つめていたい。

そんなあかりを一瞬で虜にする少女が、そこにいた。

背の高いその少女は少し屈みながら、あかりの見ている案内図を確認する。

少し甘くていい香りと共に無言の笑みをあかりに投げかける。

誰もが一瞬で虜になってしまいそうな、

瞬殺的笑顔にあかりは全く思考が停止してしまった。

今まで見たことも感じたこともない感覚とその存在感。

大きな瞳をまっすぐに少年に向けている少女。

言葉も無く見つめ返す少年。

まるでそこだけが別世界に存在しているような不思議な空間。


( はじめまして )


( はじめまして、おちびさん )


もしかしたら、自然と言葉が発せられていて、そんな挨拶をしたのかもしれない。


どれほどの時間が過ぎたのだろう。ほんの一瞬のことだったのだろうか?

少女は無言のまま立ち去っていくその間、

まるで夢でも見ていたかのような浮遊感に包まれながら、

あかりは立ち尽くしていた。


甘く心地良い静寂から特別な門出を祝う喧騒へと、あかりはフワフワした足取りで、潜り抜けていく。

『 遅かったじゃない 』

時間ぎりぎりでクラスに入り込もうとするあかりを出迎えたのは、

昨日の少女だった。

教室のドアの前で番人のように立ちふさぎながら、

黒髪少女のセミロングが軽く揺れている。

『 きみは、昨日の・・・ 』

黒髪少女は挑むような眼指しで、自分より少し背の高いあかりを見上げる。

『 道順、ちゃんと教えたよね? 』

『 うん、昨日はありがとう 』

『 迷ってないなら、早く来なさいよ! 』

( なんで、怒っているんだ? このコは・・・ )

『 その、ごめんなさい 』 とりあえず、謝っておこう。

その言葉が聞こえたのか、返事のないまま少女は教室の中へずんずん進んでいく。

なんだ、同じクラスになったのか・・・

うわぁ~、それにしても知らない子だらけだな、ってあたりまえだけど

なんてバカなことを考えつつ、闇雲に教室の中へ入っていく。

二~三人で談笑している者たちや、

あかりと同じように一人で緊張して着席している者たちの間をすり抜けていく。

なんだか緊張もするが、これから始まるかと思うとわくわくしてくる。

そんな気持ちのなか、

あかりは黒板に書かれた[入学おめでとう]の文字に目を止める。

在校生の女の子が書いたと思われる丸い可愛らしい文字。

その文字をぼんやりと見つめていると、すぐ真横から声がした。


『 ねぇ、あなた何中? 』

声のする方へ視線を落とすと、

頬杖をつきながらあかりを見上げている一人の少女がいた。

目を細めてニコニコとあかりを見つめているその少女は、

自然な感じの栗毛色の髪がふんわりカールしていて、声と妙にマッチしていた。

『 わたし、成実木愛。ミドリ中出身。席を探しているんなら、五十音順だよ。 』

あかりが口を開く前に、その少女は自己紹介を始めた。

『 あ、ありがとう。おれ、みずたに・・ 』

『 あかり! あんたの席はここだよ! 』

あかりの返事を、窓際の中央付近からあの少女が大声で掻き消す。

見ると、黒髪少女が腕を組みながら、今か今かと待ち構えている。

『 あれぇ、りんごと知り合い? 』

『 りんご? 』

『 知り合いじゃないの? 』

『 昨日、道を教えてもらって・・ 』

『 そうなんだぁ。すっごいフラグ立ってるね。 』

『 フラグ? 』

あかりの疑問符反応を見て、( いいの、いいの )と手を振りながら

彼女は話を続ける。

『 彼女は青森あかね。みんな、りんごって呼んでる。おんなじミドリ中でさ・・・

( 彼女の方を見つつ )読書の好きなとても優しくて、

素敵な可愛い女の子だよ。 』

『 ・・・・・ 』

『 あれ? リアクション薄いね 』

『 やさしくて、すてき・・・ 』

『 道教えてくれたんでしょ、優しいじゃん、素敵じゃん、可愛い・・じゃん? 』

『 じゃん?・・・ジャン。ジャン。 』

『 セン? 』 彼女は首を傾げながら、聞き返す。

あかりは、おもむろに笑いだす。 ノッてくれた。

『 あなた、絵好きなの? 』

『 妹がちょっと、好きな方で・・・ 』

『 へぇ・・・、シブいね 』

そこへ、痺れを切らしたように黒髪少女・青森あかねが割って入る。

『 随分、楽しそうね 』

『 りんご、あんたのいいとこ褒めてたとこだよ 』

『 そんなの頼んでないわよ! 』

低いトーンの声で否定されると、正直恐ろしくなる。

あかりは何か他の話題に移せないか牽制球を探す。

でも、成実木愛は扱いなれたように、( いいの、いいの )と手を振り、

『 もう、席に着こうよ。みずたに、あかりくん。 』

あかりに向けられたその笑みは、ちょっと恥ずかしくなるほど嬉しい顔だった。

『 うん 』

『 うん。じゃねーよ、まったく 』

口を尖らせるりんごに、あかりは最大限優しい声を作る。

『 席に着こう、りんごさん 』

『 りんごさんじゃねぇよ! 青森あかね、だ 』

『 じゃあ、青森さん 』

『 そうじゃねぇだろ、・・・あかね・・でいいよ 』

『 じゃあ、あかねさん。 』

『 う・・・うん 』

『 昨日は、ありがとね。助かったよ 』

『 う・・うん。 』

『 これから、よろしく・・・おねがいします 』

『 うん 』

『 あの~、さっきから、見てるこっちが恥ずかしいんですけど・・ 』

成実木愛が唇でハートマークを作りながら、冷かしてくる。

意外に器用な奴なんだなぁ。

あかりは、りんごに腕を引かれながら席に案内される。

少々乱暴な扱いだったが、

あかりは一気に知り合いが増えたことに自然と笑みがこぼれる。

その横顔を見たりんごは、

『 気持ち悪いヤツ 』と口を尖らせながら、独り言を言う。

それでも、上機嫌の男にはりんごの言葉が届いていないようだった。


その後すぐに担任の女性教師がやってきて短い挨拶があり、

入学式へと滞りなく進んでいく。

緊張感が伝わるような空気の中、

やはり校長の言葉は半分以上記憶に留めることはない。

( 校長先生、もう一度。

そう、一週間後に再度言ってもらえると有難い言葉のすべてが、

落ち着いた気持ちで受け止めることができます。ご存知でしょうか? )

などと、バカな考えが数度横切ったが、やはり時の流れは早い。

教室に戻って今後の概要&各生徒自己紹介へと突入し、

思っている以上に物事が流れ作業のように進んでいく。

みんなの自己紹介を聞きながら、

( みんな上手いなぁ。あんなにリラックスして自分の紹介ができるなんて、

一種の才能かもしれない )

などと感心しているうちに自分の番になってしまった。

『 次で最後ね、水谷明さん、お願いします。 』

『 はい。 』

返事良く立ち上がるが、さて何をどう紹介したら良いのだろう?

『 水谷明です。明るいと書いてあかりです。チャリ通で、一人暮らしです。

どうぞ、よろしくお願いします。 』

『 よろしく、りんごの彼氏! 』

自分のちょうど前に座る男子生徒が茶化すように振り向きざまに声を上げる。

すぐさま、青森あかねが席から立ち上がり鬼の形相で、

茶化した同じ中学なのであろう男子生徒を睨み付ける。

ひぃ、という声と共に男子が露骨に椅子から崩れ落ちそうになる。

と、同時に笑い声が湧き上がる。

その生徒は振り向き様に彼女にではなく、

あかりに小声で( わりぃ )とささやく。

( 彼氏って・・・、俺のこと、か? )

『 まだ、彼氏じゃねぇよ 』

りんごがあかりの言うべき台詞を代弁するように、その生徒に向け吐き捨てる。

『 まだって、あんた・・・ 』成実木のツッコミが、再度笑いを誘う。

( ミドリ中という中学から来た生徒が意外と多いクラスなのかな・・・

なんか緊張感の無い馴染んだ空気があるよな、このクラスは・・・ )

『 えっと、隣町の芽衣室町から通ってます 』

『 おい、まだ続けるのかよ? 』 りんごが真顔であかりを見射る。

りんごのお蔭か、

大して話もせずにインパクトを残し、自己紹介を終えることができた。

( それにしても、青森あかねって子・・・変わっているな。

なんか気になる、ちょっと入学初日だしバタバタしていて、

はっきりとした気持ちは判らないけど・・・ )


帰りの支度をしていると、

先ほどの件を詫びながら、前席に座る男子生徒があかりに話しかけてくる。

『 さっきは、悪かったね。 』

『 いいって。 でも、彼女には謝っておいた方がいいんじゃない、か? 』

『 あいつに? あ~、いいのいいの。りんごはそんなの気にしないし 』

( なんか聞いたことのあるフレーズだった気が・・・ )

『 それよっかさ、ほんとに付き合ってないの? 』

『 なんでそうなるの? 』

『 今朝のやり取り見てたからさ 』

『 あぁ・・・なんであんな風になったのかぁ、昨日会ったばかりなのに・・ 』

『 あいつ、激情型で口は悪いけど、基本いいヤツだよ、

小っちゃくて可愛いと思うよ・・』

そう言いながらも、なぜか笑いを堪えるように口元に手をやっている。

その生徒と向き合っていたあかりだったが、

視線の先に渦中のりんごの姿が見えた。

少し疲れたようにゆっくりとした動作の彼女が見える。

数人の女子に話しかけられながらも、

小さな肩で小さな溜息を漏らしているのがわかる。

( 案外可愛いかも・・・でも、なんか怖いな・・・

よく知らない自分になんか絡んでくるし・・ )

などと考えていることを察知したのか?

遠くの小さな背中がくるっと回った。鋭い眼光があかりに向けられている。

目の前にいる男子生徒がぶるっと、身震いした。

『 ど、どうした? 』

『 い、いや・・なんか鋭いモノが体を貫いた感じが・・・ 』

『 あぁ、あながち間違ってないかも・・ 』

と、あかりは軽く笑みを漏らす。

それに呼応するように、男子生徒があかりに手を差し出す。

『 俺、前川洋平。これから、よろしく 』

『 水谷明。 よろしく、お願いします 』

( なんだか、いい感じに友達ができた気がした。 )

『 じゃあ、俺そろそろ行くわ 』

『 うん、また明日 』

『 あ、あと・・お願いします、は要らないからな 』

『 あ、うん・・そうする、よ 』

その言葉を聞き、洋平は軽く笑い、

『 じゃあ 』と小走りにさっさと教室を後にした。



あかりは、教室の備え付けの時計に目をやる。時刻は正午10分前。

どうやら無事に初日を終えそうだ。

まだ座席に着いたままのあかりは、明日からの予定表に目を落とし、思案する。

今日と同じ朝五時起床、これをこれから毎日か・・・。

授業、ホームルーム終了は三時半くらいだとして、家に着くのは六時前か。

わかっていたが、ちょっと苦しいかも。いや、苦しくない。

あかりはネガティブ思考を払いのけながら、食事のことを考える。

帰りに買い物をしなければ・・・。駅前の商店街よりも

国道沿いの郊外型スーパーマーケットに足を延ばしてみるかな・・・

なんか食事のことを考えると、気分が楽になっていく。

あかりは食事を作るのは好きな方だ。

妃花の負担軽減のために始めた夕飯作りだが、献立作っての買い物、

そして料理をするのは好きだった。

妹の陽鞠も嫌な顔せずに食していたし、味もそこそこだと自負もある。

妃花は『 私より美味しいから、お弁当もお願いしたいくらい 』などと、

持ち上げていた。


『 あ! 』

あかりは思わず声を上げる。

そうだ、弁当作りを忘れていた。

帰りに弁当箱を買わないと、あと朝は朝飯作りと弁当作りの兼用となると・・

『 なに、変な声出してるのよ 』

気付くと、りんごが不機嫌?そうに近づいてくる。

『 あ、あかねさん。 いや、弁当のことを思い出して・・ 』

『 お弁当? 』

『 明日から弁当が必要だって、今気付いたから・・・悪い、変な声出して 』

『 なんで、そんなこと気になんの? うちと同じで母親が作るでしょ 』

『 いや、その、自分で作るんだけどね・・・』

『 え、なんで? 』りんごが不思議そうに顔を覗き込んでくる。

『 自己紹介でも言ったけど、一人暮らしなんだ。 』

『 ! 』

自己紹介を聞いていなかったのか?

それとも、そのほかに何か思うことがあったのか?

彼女はその場で硬直するように絶句していた。

『 おー、感心だね。 』

言葉を出せない彼女の隣で、成実木がちょこんと顔を出す。

『 なるみ、さんだっけ? 』 彼女は成美木愛なみきあい

あかりは名前を間違えていた。

『 なるみさん・・・いいねぇ、そう呼んでいいよ 』

『 おい、話に割り込むな 』 りんごが復活したように、成実木に食って掛かる。

『 あかりは、ここの人じゃないんでしょ? 』成実木が尋ねる。

『 うん。東京から、芽衣室町に引っ越してきたんだ。 』

『 へぇ、東京から芽衣室に・・・、意外だね。ねぇ、どうして? 』

『 親の持っていた家がこっちにあって 』

『 へぇ~、でも、一人暮らしなんだよね? 親とかは? 』

『 母親と妹は訳あって、札幌暮らしなんだ 』

『 そうなんだ・・、ふんふん。で、お父さんは? 』

『 おい、私は空気か? 何で、無視して会話続けてんだよ? 』

りんごがあかりの机を軽く叩き、不満の声を上げる。

『 え? あ、ごめん、ごめん。 』成実木が口先だけの謝罪を口にする。

『 それで、親の持っていた家って、やっぱ一軒家?それともアパートとか? 』

『 平屋の一軒家だよ。 』

『 なにそれ~、すごくない?』

『 古い家だよ。それに、ここから自転車で2時間弱掛かるし・・ 』

『 2時間? 』 成実木が目を丸くする。

『 休みなしで漕ぐと、1時間45分くらいかな・・ 』あかりが言い添える。

『 うわ~、なんか凄いね 』と言いながら、成実木は笑う。

あかりもつられて笑う。

『 おい、いつまで続けてんだよ! 』

あかりの机に置かれたりんごの手が徐々に力がみなぎっていくのがわかる。

黒髪の少女は少し勝気な顔立ちをさらに挑戦的な眼差しで成実木を睨んでいる。

顔を紅潮させ、苗字と伴い『りんご』と呼ばれる由縁も判る気がした。

成実木は、まるでいつものことのように( いいの、いいの )と、

あかりに目で合図する。

かなり怒っているようだが、本当に大丈夫なのか?

あかりは斜めから自分の方へ、身を乗り出している成実木を注視する。

カールしたショートのボリュームのある栗色の髪。屈託のないあどけない瞳。

可愛らしいと、一言でいうのも・・・


『 そんなに、見ないでよ。 』

成実木のおどけたような声が、あかりの思考を遮る。

その声に呼応して、『 おまえが、そこにいるからだろ! 』と、りんごが怒鳴る。

『 ちょっと、りんごに言ったんじゃないんだけど 』

『 はぁ? 』

『 ちょっと、ちょっと、もうその辺にして、さ 』あかりが割って入る。

このままだと、どうなるかわかったもんじゃない。

すると、成実木がりんごに向けた目をあかりに戻し、

『 あ、そうだ。ねぇ、メアド交換しようよ。 』

『 ちょっと! あんた何言ってんの? 』

『 あんたは昨日交換してんでしょ? 私はまだだからさ 』と、

成実木はにっと笑った。

『 私だって、まだ・・・ 』りんごの語気が照れも入って弱々しくなる。

『 なに? まだ、メアドも教えてもらってないのに、その態度?

ちょっと、どんだけツン出してるのよ・・・嫌われるよ。ねぇ~、あかり? 』

『 うっ! 』りんごはその言葉に、自分の態度を鑑みる。

あかりは、りんごを見つめる。


この子は、自分にちょっと粗暴に関わってくるようにみえるが、

これはツンデレと呼ばれる、ツンの部分なのかと考える。

でも、まだ入学初日で接点と言える出会いは少ない方だと思う。

何もしていないのに、人に好かれることなんてあるのだろうか?

そんな経験は今まで無いし、これからも、そして自分もすることはないだろう。

でも、人に好かれるのは嫌いじゃない。 むしろ、好きな方だ。

じゃあ、好意を持ってもらうようにするには、

人はどんなことをすればいいのだろう。

今まで、考えたことも無かったけど・・・。

いや、今回はむしろ、逆に嫌われているのかな?


『 そ、そんなに、見ないで、よ。 』

たどたどしい、りんごの声があかりに向けられる。

『 あぁ、ごめん。 』条件反射のように、あかりは俯いた。

どうも、考え事をしているとき、思考を中断されてしまうな・・・

しかも、無意識に見つめているらしいし・・・

中学の時とか、こんなことで注意されたことあったかな?

『 なんか、変な空気にしちゃったね、ごめん。 』成実木が取り繕う。

『 あたしさ、りんごの様子見て楽しんでた節もあるし、その謝るよ。

 ごめんね。 』

『 あい・・・ 』

そのやり取りを横目にあかりが脈絡無視で、口を開く。

『 ごめん。俺、ケータイ持ってないんだ 』

『 ちょっと、流れ無視したいきなり発言! 』成実木が驚き戸惑う。

『 昨日さ、あかねさんの名前聞かなかったの、ちょっと後悔してる。

同じ学校の新一年生ってわかってたのに、道を教えてもらったのに、

後日お礼を言いに行くこととか、全然考えてない思考回路で、

その、無礼な態度をして、ごめん、なさい。 』

二人とも、びっくり固まった表情でいる。

あかりは自分が先程から無意識に非礼を招き、謝罪している。

やっぱり、この子はちゃんと挨拶をしなかった自分を責め、

何かとまとわりついているのではないか、

そう結論付けた。

嫌われないうちに、

そう、ケンカなどにならないうちに手を打っておいた方が賢明だ。

あかりは彼女たちの表情など把握せず、かばんから目新しい手帳を取り出す。


『 なんかいろいろ迷惑かけそうだから、その・・・メアドの交換はできないけど

これさ、俺の手帳なんだけど、これに連絡先を書いてくれないか? 』


二人ともあかりの差し出した手帳をまじまじと見つめる。

すると、成実木がケタケタと腹を抱えて笑い出した。

なぜ笑うのか全く理解できないあかりは、りんごの方をみる。

彼女は笑いもせず、出された手帳を手に取り、

真っ新なページをぱらぱらめくり始める。

『 なんか、変だったかな? 』

『 ははは、うん、ごめん。あかりがあんまり唐突で、真面目すぎるから、

つい・・・ふふ。

一応、メアドは簡単・気兼ねなくがモットーだから、通話は・・・ 』

と、言いかけると、無言のりんごの方から、ポンとキャップが外される音がした。

二人揃って、彼女を見つめると、

りんごは頬を赤めながらも、

すらすらと自分の氏名・住所・電話番号を書き始めた。

『 あ、ありがとう。 』あかりが、安心したように礼を述べる。

『 あとで、自分のも教えろよ。 』あかりに視線を向けず、一心にペンを進める。

その様子を隣で見ながら、成実木も『 あたしも、書いてあげる 』そう、呟いた。

あかりは無言で手帳にペンを走らせる彼女たちに礼を述べ、

机の中から今度はメモ帳を取り出し自分の連絡先を二人分作成し、

それを手渡した。



ゆっくり自転車を漕いでゆくと、

なんだか北海道の雄大な景色が自分を歓迎してくれているようで、

ほんと心地良い。

ゆっくり流れる景色は、つい昨日までのものと見違えるようだ。

あかりは自分のスピードで風を切って、自転車を走らせていく。

とても気持ちがいい。

あの後、三人で自転車を押しながら並んで帰った。

成実木は国道沿いのスーパーマーケットを知っているらしく、

いろいろとアドバイスしてくれた。

宅配サービスやポイントカードの類など他愛のないことかもしれないが、

あかりにとってはとても嬉しい情報と気遣いだった。

隣りのりんごは始終無言で、時折相槌を打つ程度だったのが気になったが、

成実木は目配せで( 気にするな )と言っているので、

あえて話題を振ることもなかった。

途中、二人と別れてから、スーパーマーケットを目指し一人自転車を走らせる。

かなりの時間を費やし、店へ辿り着いた。

店内では野菜を物色する高校生がかなり珍しいのか、

結構見られていたような気がする。

米や弁当箱なども購入したので、成実木のいう宅配サービスの無料額に達し、

早速購入した商品の宅配サービスをお願いした。荷物が無いのが、何よりだ。

これで荷物を抱え、またかなりの時間を掛け、自転車を漕いで自宅を目指すのは、正直しんどい。

そんなことを、いろいろ思い返していたが周りの風景に目を奪われ、

自分の小さな考えなどすぐに飛散した。

自分のスピードで進む自転車。ゆっくり流れる午後のひととき。

とても気持ちが晴れ晴れする。


「 入学式。とても順調で言うことなし。それに友達もできました。

たぶん・・・ね。

明日から、弁当作り頑張ります。」





~つづく~


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