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サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第六部
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~第三話~

「ハロルドさん、あんた左手に怪我してるのか?」


 あれこれ思い悩んでも仕方がない。

 俺は単刀直入にハロルドに疑問を投げかけた。


「さあ、どうかな? 知りたいのなら、私が左手を使わねばならない状況に追いやってみればどうだ? お前にそれが出来るのならば、な!」

「っ……!!」


 挑発とも取れるハロルドの言葉。


「くそっ! なら……!」


 俺は“力”をハロルドの左側に集中させた。


 ――少しでも彼の左手の状況が分かれば――


 そう思ったが、それは徒労に過ぎず、彼は尽く右手だけで全てを受け止めてしまった。


「どうした? 私に左手を使わせるんじゃなかったのか? その程度の力では、私に左手を使わせる事など到底叶わん! お前の相手など、右手だけで充分だ!」

「…………」


 ――違う! やっぱりハロルドさんは左手が使えないんだ!―― 


 昔の俺だったら気づかずに、彼の言葉を鵜呑みにしたかもしれない。

 でも、今なら解る。

 幾らハロルドさんが最強を誇る能力者と言えど、ブラッド一族とサンダー直属の精鋭軍が相手の“多勢に無勢”の戦いで、無傷でいられる筈がないんだ。

 もし仮に、彼の言っている事が真実だとして、彼が俺とブラッド一族――能力者の殲滅――を目論んでいたのだとしたら……何故、先に俺たちを戦わせなかった? 

 両者を戦わせて、双方が消耗したところを叩けば、もっと容易に目的を達せられた筈だ。

 なのに、何故!?


 味方を裏切って、自分が傷つく危険(リスク)を背負って、そしてネメシスさんや連合軍の人たちの前で、殊更に自分こそが悪だと吹聴した。

 何故、其処まで自分を貶める必要がある?


 まるで己が悪の権化なのだから、己を倒せば全てが終わる――とでも言うように?


 ……まさか、そうなのか?

 ハロルドさんは最初から、そのつもりで!?――

 

「試して、みるか!」


 俺は力で強化されたハロルドの右手の攻撃を防御壁(シールド)で防いでいたが、思い切ってそれを解除した。

 それが無謀な行為だとは充分に承知していた。

 ハロルドの力をモロに食らえば怪我どころでは済まない。

 下手をすれば命に関わる事態になる。

 それでも俺は彼の真意を確かめたかった。


 而してハロルドは案の定、俺が防御壁を解除した事に気づくや否や、彼もまた右手の強化を解除する。



    挿絵(By みてみん)



「この状況で防御壁を解除するなど、無謀以外の何者でもないっ! 死にたいのかっ!?」

「あんた、俺を殺したいんじゃないのか? 何で殺そうとする人間の心配をする?」


 俺は真っ直ぐにハロルドの瞳を見据えてそう言った。


「……私を試したの、か?」

「…………」


 やっぱり、そうだ。

 ハロルドさんは俺を殺す気なんか、最初からない! 

 彼は……


「ハロルドさん! まさか、あんた死ぬつもりなんじゃないだろうな? 自分を全ての悪役にしてっ!?」


『敵に情けを掛けるな! 躊躇えば自らが命を落とす事になる。相手の息の根を止める事が、その相手を“救う”事もあるのだ……という事を覚えておけ!』


「俺と最初に会った時、あんたが言ったあの言葉。あれは、あんた自身の事を言ってたのか? あの時から俺に『自分を殺せ!』って……。そう、言ってたのかっ!?」

「っ!!」

「何で、あんたがそんな事を? 何で、あんたが死ななきゃならない? 死んだ方が救われるなんて、何でそんな事っ!?」

「そんな筈がないだろう! 私は、私の野心の為に動いていただけだ! この世界の覇者となる為に!!」


 そう叫ぶハロルドの身体から、凄まじい(オーラ)が陽炎のように揺らめいた……と思ったその瞬間


「ハロルドさん!」


 ハロルドの右手から紫銀に輝く“光の剣”が現れた。


「っ!!」


 それは凄まじい“力”に因って形作られた、何ものをも切り裂く光の刃!

 俺は咄嗟に防御壁を張ってその剣を受け止めたが、光の剣は徐々に防御壁を圧倒していく。


「防御壁如きでこの剣を防げる等と思うな! 反撃しなければ、今度こそお前の命はないっ!!」

「くっ……!」


 光の剣が触れている部分がバチバチと激しい音を立てて歪む。

 俺はその一点に力を集中させて防御壁を強化する。

 ……が、防御壁が破られるのは時間の問題だった。


 このままじゃ……。あの光の剣をどうにかしないと……!


 俺は防御壁を右手で維持したまま、左手に(エネルギー)を蓄えて、それを剣にぶつけて相殺しようとした、その刹那――

 突然、ハロルドの力が弱まった。


「え……っ?」


 けれど、勢いは止められない!!


 俺の力は光の剣を消滅させ、そしてハロルドの身体を遥か後方に弾き飛ばした。

 彼は背後の壁に凄まじい勢いで激突する。



    挿絵(By みてみん)



 思わず駆け寄ろうとした俺に


「来るなっ!!」


 彼はそう叫んだが、俺は聞く耳を持たなかった。

 何らかの反撃がある事も覚悟していたが、彼はその場から動かない。

 否、動けないのか?


「何で、あそこで力を緩めた? 俺は光の剣さえ消滅出来たら、それで……」

「…………」


 ハロルドを助け起こそうとした俺は、手にぬるりとした生暖かいものが触れるのを感じた。

 嫌な予感が脳裏を過ぎる。


「こ、れは……!?」


 それは夥しい鮮血。


「ハロルドさん! まさか、今の衝撃で?」


 俺はハロルドの傷を確認しようと思った。

 最後まで頑なに使わなかった左手も気にかかる。


「止めろ! 私に触る、な……」


 ハロルドは俺の腕を振り払おうとしたが、


「ぐっ……!!」


 その瞬間、ハロルドの全身を凄まじい激痛が襲った。


(さっきの衝撃で傷口が開いた? 痛みが闘いの妨げにならぬよう、痛覚の伝達を遮断していたが、それも……もう限界、か?)


「ハロルドさん! 兎に角、傷を見せて」


 俺は強引にハロルドの黒いマントを捲って彼の身体の傷を確認しようとした。


 傷ついているのなら、一刻も早く手当てをしなければ……!


 そう思った。

 だが……


「っ!!」


 ハロルドの身体を見た途端、俺の全身が凍りつく。


「左腕が……な、い!?」


 ハロルドの左腕は上腕部の半ばから、バッサリと切断されていた。

 恐らく、左後方から刺されたであろう背中の傷からも大量の血が流れ出ている。


「ハロルドさん! あんた、こんな身体で……今まで俺と闘ってたのか!?」

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