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サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第六部
89/236

~第一話~

 アガスティーア・エルゲバル──

 

 かつて、その門は常に開かれ、王城へと続く一本道を人々に指し示していた。

 だが一反その門が閉ざされると、それは巨大な砦へと変貌を遂げる。

 難攻不落の鉄壁の要塞。

 重く頑丈な扉は何者の侵入をも許さない。

 しかも、其処にはサンダー直属の精鋭軍とブラッド一族最強の能力者たちが、文字通り、最期の決戦を挑もうと対サザン連合軍を今や遅しと待ち構えている。

 俺達はそう、先遣隊からの報告を受けていた。


 しかし、アガスティーアの正門前の大広場へと歩を進めた連合軍は、其処で予期せぬ光景を目の当たりにする。

 閉じられている筈の門は開け放たれ、建物の彼方此方が(まるで爆破されたかのように)崩れ落ちていた。


「既に戦闘が行われたのか?」

「我らより早く此処に辿り着いた部隊があるのか!?」

「一体、何があった? それとも、これは我らを油断させる為の罠かっ!?」


 兵士たちが口々に疑問を投げかける。

 想像だにしなかった事態に、連合軍の中に動揺が拡がり始めていた。


「静か過ぎる。ロト様、罠だとしても……これは少し変です」


 タラゼドが俺に耳打ちする。


「人の気配が全く感じられません」

「ああ。何があったのか分からないけど、何時までも此処で二の足を踏んでいる訳にもいかないしな」


 そう言って俺は前に進もうとした。


「お待ち下さい、ロト王子殿下! 御一人で行かれるおつもりですか? 貴方は“総大将”としての自覚が無さ過ぎます!」


 そう言いながらネメシスが身を挺して進路を塞ぐ。


「えっ? いや、そんなつもりはなかったんだけど……。でも、中に居るのはブラッド一族最強の能力者たちだ。大部隊で闇雲に突っ込んでも意味がない。返り討ちに遭うだけだ!」

「では、どうなさると?」

「少数精鋭の先遣隊を組織して、まず中の様子を探る。ネメシスさん、俺と一緒に来てもらえますか?」


 ネメシスたちは俺が共に行く事を最後まで渋っていたが、ブラッド一族に対抗出来得る能力者が俺しか居ない以上、俺の同行を認めない訳にはいかなかった。

 俺はタラゼドに連合軍の指揮を託し(取りあえずは、その場で待機)ネメシス直属の一個小隊と共に、要塞への突入を敢行した。

 ネメシスたちには、くれぐれも能力者との戦闘を避けるように促しながら。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 だが、其処で俺たちを待っていたものは、外観以上に破壊された内部の惨状。


 それは、このアガスティーアで何かしらの戦闘行為が行われた事を如実に物語っていた。

 破壊された室内、散乱する瓦礫。

 そして、累々と横たわる屍――


 剣で切られた者も居るようだが、大半は“力”によって絶命させられていた。


「これは、一体……?」

「内部分裂でもあったのか?」


 兵士たちが口々に叫ぶ。


「…………」


 内部分裂? 

 サンダー直属の部下……それともブラッド一族の中に裏切りがあったのか? 

 でも皆、ほぼ即死に近い。

 圧倒的な力の差がなければ、こんな事は……。


 その時――


「ロト王子殿下、この女性(おんな)はっ!?」


 突然のネメシスの声に我に返った俺は


「カラバッジオ……っ!?」


 ネメシスが指し示す屍が、ブラッド一族最強の能力者カラバッジオのものである事に驚愕を隠せなかった。


「やはり、この女性がカラバッジオですか?」

「あ、ああ……」


 直に顔を見たのは一度きり。それもかなり遠い位置でだった。

 でも見間違える筈はない。

 エリカを死に追いやったブラッド一族最強の女戦士。


「カラバッジオも、一撃で絶命してる。多分、何が起こったのか……それすらも分からないまま殺られたんだ」


 何か信じられないものを見たような……見開かれた双眸が、彼女の命が一瞬にして奪い去られたという事を如実に示していた。


「リマリオさんと並び称された能力者。この女性(ひと)を一撃で? それほどの能力者が他にも居るのか? それとも、不意討ちだったのか? 自分が襲われるとは到底思えない相手の、裏切り?」


 否それよりも、カラバッジオが居るという事は、その配下だったラガン三姉妹も? 


「まさか、レイも此処に……っ!?」


 その考えに至った瞬間、俺はネメシスが止めるのも耳に入らず走り出していた。


 嫌な予感が脳裏を過ぎる。


「レイっ!」


 俺は無我夢中でレイの姿を捜す。

 此処には居てほしくない……という相反する想いと共に。


 だが、カラバッジオの直ぐ傍にラガン三姉妹の長女ロイの変わり果てた姿を。

 それから数メートルも離れていない場所で、折り重なるように倒れている三女ライとレイの姿が目に入った。


「ライさん! レイ――――っ!!」


 思わず駆け寄って二人の生死を確認する。

 しかし時既に遅く、二人とも疾うに事切れていた。


「レイ、どうして? 何で、君がこんな……っ!?」


 凄まじい悔恨と共に、彼女と別れたあの日の光景が蘇る。



    挿絵(By みてみん)



「俺だってそうだ。再び相見えた時は敵同士だと言うのなら、戦わなければならないのが俺たちの運命(さだめ)だと言うのなら……もう二度と、君に会いたくはなかった! ……なのに、どうして? こんな形で、再会する事になるなんて! 一体、誰が君をこんな目にっ!?」


 その時――



    挿絵(By みてみん)



「何で、あんたが此処にっ!?」


 それが愚問である事など、俺は疾うに理解していた。

 サンダー直属の精鋭軍、そしてブラッド一族最強の能力者たち。

 中でも、カラバッジオやラガン三姉妹の力を凌駕出来る者など、そうは居ない。

 居るとしたら、それは……


「これは……あんたがやったのか?」


 そう問いかけながら、それでも俺はハロルドから否定の言葉が返って来る事を期待していた。

 しかし……


「そうだ!」


 ハロルドは顔色一つ変えずに、俺の微かな希望を打ち砕く。


「嘘だっ! どうして、あんたがこんな事をする必要があるっ!?」

「…………」


 だが、ハロルドは俺の質問には答えず、容赦のない無慈悲な声でこう告げた。


「次は、お前の番だ!」と――


 ~ちょこっとブレイクタイム~で紹介したラガン三姉妹の次女レイとの再会のエピソードを少し加えてみました。

 ラガン三姉妹のエピソードは割愛してしまいましたしね。

 ブレイクタイムで“次にロトがレイと再会した時には……”と言葉を濁したのは(それ以上書くとネタバレにもなりますし)再会した時はもう既にレイが死亡していた――という悲劇的な結末だからです。


 ブラッド一族最強の能力者カラバッジオのビジュアルも、次回のブレイクタイムで紹介したいと思っております。

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