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サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第五部
81/236

~第二話~

「お婆、ちょっといいかな?」


 俺はその夜、トゥバンの屋敷で客人として遇されている占い師のお婆の部屋を訪ねた。


「どうした、眠れぬのか?」

「いや、そんなんじゃないんだ。 明日はいよいよ出発だし、その前にお婆に聞いておきたい事があって……」


 翌朝、俺たち(俺とセレナ、タラゼド、ルクバー、そしてハマルの五人)は、お婆の案内でアマラントの青い石の封印場所に赴く事になっていた。

 それは、お婆と再会したあの日から一週間後。

 アマラントの青い石の封印を解くにはそれなりの体力が要る……というお婆の言葉に従ってトゥバンたちと決めた事だった。

 その間に魔獣出現の報が入りはしないかと気が気ではなかったが、ツイホォンはあれ以来一度も姿を現してはいない。


「私に聞きたい事?」

「ああ」

「わざわざ部屋まで来るという事は、皆には聞かれたくない話なのか?」

「あっ、いや……そういう訳じゃないんだけど、個人的な事だから」

「そうか」


「お婆は、じっちゃんの事を。じっちゃんの未来を占った事は、ある?」

「マイク・フライハイトの事を、か?」

「うん」

「ああ、あるよ。一度きりだがな。『運命が動くのは何時か?』と尋ねられた」

「運命が動く時? それで、お婆は何て?」


「『お前の養い子の13歳の誕生日だ!』と答えた」

「……っ!!」


 やっぱり、そうだったのか。じっちゃんは知ってたんだ! 

 だからあの日の朝、俺にサザンの話をしてくれたんだな。


「フライハイトは決して表には出さなかったが、ずっと苦しんでいたよ。ロト、お前を大切だと思えば思うほど、真実を知らせるべきか否かを……な。せめて、村に居る間は普通の子供として生きてほしいと。それが、お前の為に良い事なのか悪い事なのかは、分からぬがな。だから、ぎりぎりまで言い出せなかったのだろう」

「…………」


「そして、もう一つ。フライハイトには『その日がお前の命運の尽きる日だ』という事も伝えていたよ」

「えっ!?」


「道を選ぶチャンスはあったのだ。フライハイトはお前を連れて逃げる事も出来た。だが、彼はそうしなかった。全てを覚悟して迎えた“運命の日”だったのだ」



    挿絵(By みてみん)



(その歳で、その心境になるには一体どれだけの辛酸を舐めた事だろう。本当に成長したものだな、ロト。だが、お前の苦難はまだまだこんなものではない)


 私と同じ宿命(さだめ)持つ……

 ――翠玉の王、青銀の宿星(ほし)よ――



「ありがとう、お婆。話してくれて」

「それだけか? 他に聞きたい事は?」

「いや、それだけ……だよ」

「そうか。なら、明日は早い。もう休みなさい」

「うん、そうするよ。お休みなさい、お婆」


 そう告げて、俺はお婆の部屋を後にした。

 本当は聞きたい事は他にもあった。


 ――貴女は一体、何者なのか?――と。


 けれど、それは聞いてはいけない事のような……そんな気がして、俺はその問いを心の奥底に仕舞い込んだ。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 アマラントの青い石が封印されている場所はシュトルーフェの領内ではあったが、険しい山道を登るのは困難を極め、幼いハマルを連れての道中は思った以上に時間を要した。


「英雄王は最強の能力者だったからな。彼にとっては、さほど困難な道ではなかったのだろうよ」


 お婆は涼しい顔でそう言った。


 ――ほんと、お婆って何者なんだろう?――


 彼女の動きは軽やかで、とても老人とは思えない。

 尤も、すっぽりと頭を覆っている面紗(ベール)で顔もよく見えないし、全身黒装束だから歳などはよく分からない。

 本人が“占い師のお婆”と名乗っているから、そういう潜入観念で見ているに過ぎないのだが……。



 早朝にトゥバンの屋敷を出たにも関わらず、“其処”へ辿りついた時には辺りはもう、すっかり暗くなっていた。

 ふと見上げると空には満天の星。


 ――綺麗だ。そうか、こうして夜空を眺めるのも久しぶりだな――


 そう思った。不思議と心は穏やかだった。


「お婆様、この先に道なんてありませんよ」

「どうやって先に進めと言うんです? これではロト様が……」


 タラゼドたちが口々にそう言った。

 彼らが心底俺の身を案じてくれているのが分かる。


 ルクバーが照らしてくれる松明と星明りでぼんやりと見える薄暗い道は、しかし少し先で急に何かに切断されたように不自然に途切れていた。

 否、闇に溶け込んで途切れているように見える。


「お婆?」

「ロト、私を信じて進め! 道は見えぬ。それがこの地に張られた結界の持つ“守護”の力。お前ならば、この結界を通れる。否、この結界はお前しか受け入れない」


 ――何故なら、この結界は――


「分かった。貴方を信じて前に進むよ! 俺の失われた力を取り戻す為に! そして封じられた“アマラントの青い石”を手にする為に!」



「ロト、気をつけてね」

「オリオニスお兄ちゃん!」


 セレナとハマルが心配そうに俺を見つめる。


「ああ、大丈夫だよ。必ずアマラントの青い石を持って帰って来るから」


 二人を安心させようと俺は笑顔でそう言って、タラゼドたちの方に向き直ると


「じゃあ、行って来ます」


 そう言って、踵を返した。


 ――そう、信じて進め! 


 ロト……お前ならば、この結界を通れる。

 否、この結界はお前しか受け入れない。

 何故なら……この結界は、かつてのお前自身が張ったものだから。 

 それに触れる事に由って、自ら封じた力が戻るだけではなく、お前の中で眠っている全ての力が覚醒するだろう。

 お前は“かつてのお前”と、同じ力を使えるようになる。


 だからこそ、臆さず進め! ロト・オリオニス・サザン――



    挿絵(By みてみん)

 やっと「~時の道標(みちしるべ)~第二部」第一話の冒頭まで辿り着きました。

 いやあ~長かった! 「ラガン三姉妹篇」を割愛してるにも関わらず、まさかこんなに長くなろうとは……。

 それで言うと、如何に第一部の割愛が凄いかが分かりますけどね。村でのエピソードも省いてますし、テラのエピソードもほとんど割愛してますしね。

 実は、今でこそ明かせる話ですが「~時の道標(みちしるべ)~第二部」第一話の冒頭の挿絵にはセレナが登場してるんですよね。

 この時点でセレナ生存のネタバレを思いっきりしてたんですが、気づいてた方はいらっしゃるのだろうか……なんて、ふと思ったり。

 勿論「~時の道標(みちしるべ)~第二部」第一話よりは↑の方が詳しく書いてますけどね。

 この時点でタラゼドやルクバーの名前を出しても分からないので“村人”になってますし、ハマルもこの時点では全く知らないキャラなので出せませんでしたしね。


【追記】

 ハマルが一緒に行くって言った時は、勿論、全員が反対したんですけど、ハマルが一歩も退かずに皆が折れた形になりました。

 ハマルはこう見えても意思の強い子なんですよ。

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