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サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第二部
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~第四話~

「あれはグロディア伯母様の手前、ああしただけですからね。私が貴方を認めた……なんて思って、つけ上がらないで下さいませね!」


 流石は一国の王女様だなあ~。公私を弁えてるんだ――と感心した直後の言葉だった。


 母グロディアが席を外した途端、これか? 

 何なんだ、この豹変ぶりは?


「別に、君に認めてもらいたいなんて思ってない。それより、用が終わったんならさっさと国に帰れ!」

「そんな訳にはいきませんわ。憧れのグロディア伯母様にもやっと再会出来ましたし……何より貴方がサザン王として相応しいかどうか見極めなくては!」

「はぁ~? ひょっとして、ついて来るつもりなのか? いくらサザンとの接触を極力避けるルートを通るって言ったって、俺たちと一緒だと命が幾つあっても足りないぞ!」

「それくらい存じてます」



    挿絵(By みてみん)



「はあぁあ……。何だかキリがないなあ~」


 溜息交じりのフリーの言葉を聞いて、セレナも


「お互い“天敵見つけた"って感じよね。ロトがあんな風にムキになるの、初めて見た」

「ですねぇ~。王子って普通に育った割りには達観してるって言うか、不平不満を表に出さないって言うか……」


 ――心の中では色々と不安な事もあるだろうに――


「まあ、何ですな。"従兄妹同士”の気安さもあるんだろうし、こういう風に発散出来る相手が出来たっていうのは、ある意味良かったのかもしれないですね」

「発散出来てるのか、余計にストレスが溜まってるのかは微妙……だけどね」

「確かに! でも王子にもこういう歳相応の部分があるんだって分かっただけでも私的には収穫ですけどね」


(それにしても何処かで見た事があるっていう俺の記憶は正しかったな。あれがアドラ・ジャウザ王の末姫様か。他の姫様方は何度か王宮でお会いした事はあるが、あの姫は遠目に一度だけ。『お転婆で王宮内にじっとしている事がほとんどない。男だったら良かったのに、彼の姫は生まれを間違えた』と嘆いておられたっけ。王子の居ない王にとってはそうだろうなあ~。あの姫が男ならさぞかし……)


 "我儘で高飛車なお嬢様"という第一印象しかなかったリンは、決してそれだけの少女ではなかった。

 意識しているのか無意識なのか?

 それは定かではないが、どちらにしてもリンが一国の王女……否、“王”としての資質を兼ね備えている事は確かだろう。

 そのリンとのやり取りの中で、俺は否応なしに"己は次代のサザン王なのだ"という自覚を持たされる事になる。


 リンへの対抗意識は、即ちこの少女に"自分を認めさせたい"という想いの裏返し。

 戦いの終わりが俺の旅の終焉ではない。

 その先にあるものこそが重要なのだ――と俺は気づき始めた。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 それは突然の出来事だった。

 林を抜けた先に広がる人気(ひとけ)のない荒野。

 其処へ俺たちが辿り着くのを待ち構えていたかのように“蒼い閃光”が俺目掛けて放たれた。


「蒼い光の、刃!?」


 俺はその攻撃を辛うじて避けた。

 防御壁(シールド)を張る余裕はなかった。


「大丈夫か、王子!?」

「ああ、何とか……」


 俺を気遣うフリーに、自身の無事を伝えようとした刹那


「ロト・オリオニス様ですね」


 目の前に一人の女性が現れた。


「何者だっ!?」


 腰の剣を抜きながらフリーが叫ぶ。


「私はエリカ・リシュルフドルフ・レイヴァと申します。ロト王子殿下、貴方に個人的な恨みはございませんが、我がレイヴァ一族の悲願の為、お命頂戴致します」


 目前に立ちふさがってそう告げた“敵”は、腰まである漆黒の髪と紫水晶の瞳を持つ美しい女性。

 凡そこんな闘いの場には不似合いな、けれど兜を纏ったその“出で立ち”が彼女が紛れもなく“戦士”である事を物語っていた。


「フリー、あいつの狙いは俺一人みたいだ。みんなは退()がっててくれ! セレナ、君もだっ!」

「えっ? でも、ロト……」


 セレナは心配をかけまいと平静を装っていたが、リマリオとの闘い以降、その“力”が徐々に失われている事に俺は気づいていた。

 それはフリーも同様だった。


「分かった! だが気をつけるんだぞ、王子!」


 セレナの腕を掴んで強引に退()がらせる。


 対能力者同士の闘いにおいて、そうでない者は足手纏いにしかならない。

 それは分かってはいるが、何の力にもなれない己に、フリーは苛立ちを隠せない。

 彼は悔しさに歯噛みしながら、それでも皆を連れて後方に退いた。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



  挿絵(By みてみん)



「新たな刺客を送り込んだのか?」

「ええ。今のところ、王子を秘密裏に葬り去るというサンダー様の方針に変更はないわ」

「…………」


(成る程、アル・サドマリクに近づけば話は別だろうが、ロト王子の生存は公にしない方が得策という事か。各地に燻る対サザン勢力が一斉蜂起する火種になりかねないからな)


 その時、ハロルドの目に蒼い閃光が映った。


「蒼い、炎?」

「そうよ、珍しいでしょう? 我が一族にも存在しない特殊な能力。だから興味があってね、此処で見てるのよ。……少し遠いけど」


 林の中からでは確かに人物を識別する事は不可能だった。

 しかし交錯する銀と蒼の閃光がその闘いの凄まじさを物語っている。


(この私ですら手も足も出なかった王子に、あの蒼い炎が何処まで通用するのか、見ものだしね)


「どう、ハロルド?」



    挿絵(By みてみん)



 何故、彼女が? 

 彼女は……エリカは、闘う事を放棄した筈だ!?

 補足ですが……

 この時点でのサザン側の思惑はロトの“暗殺”です。

 大っぴらに攻撃してレグルス・ナスルの後継の生存が公になる方が危険性(リスク)が高いからです。

 しかし、セレナたちがスィーにロトを迎えに来た時には、彼らに追っ手(サザン兵、若しくはサザンの息がかかった国の兵士)が居ましたよね。

 その後も追っ手からの逃避行は度々ありました。

 因みに、これはブラッドの一存です。

 この事がサンダーの耳に入って、ロト一行への対応が取りあえず統一されました。

 けれど今後はどうなるのか?

 サザン側も実は“一枚岩”ではないのです。

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