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サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第一部
37/236

~第七話~

 防御壁(シールド)を張る事も思い浮かばなかった。

 気がついたら身体が動いていた。

 ……ああ、そうか! 

 君は、私にとってそれほど大切な存在になってたんだね。



    挿絵(By みてみん)



「ロト、ごめんね。私の一族……父や姉の事、許してなんて言えないね。本当にごめん、ね……」


 感謝と謝罪と……。


 彼女は自身の不条理な運命を恨む事もなく……

 俺の腕の中で微笑みながら逝った。

 

 俺は彼女を護れなかった。


 

 数日後――


「貴方が持っててあげて。その方が彼女も喜ぶと思うから」


 テラの額飾り(フェロニエール)に付いていた紅い宝石(いし)を、セレナが首飾り(ペンダント)にして俺に手渡してくれた。


「ありがとう」


 俺は言われるままに、その首飾り(ペンダント)を肌身離さず常に首に掛けていた。

 それが俺たちに遺された、テラの唯一の形見だったのだ。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 やっとの想いで俺たちは、(あと)三日程でシュンガの港に着く――という処まで辿り着いた。

 峠を越えると港町に出る。


 其処は山の中腹の一本道だった。


 俺とセレナが並んで先頭を歩いていた。

 ハーリス、母グロディア、そして最後尾をフリーが護る。



 後から冷静になって考えてみれば、の話だが……確かに違和感はあった。

 それまでとは違った不可思議な感覚。


 気になって振り向くと、後ろを歩いていた筈のハーリスたちの姿が消えている。


「ロト、気をつけて。これは罠。此処は、誰かの張った結界の中……異空間だわ」


 セレナが俺に耳打ちした。


「異空間……っ!?」



…───…───…───…───…───…───…───…



 一方、俺たち以上に驚いたのはハーリスたちの方だった。


 前を行く俺とセレナの姿が一瞬にして掻き消えた――と思った瞬間、ハーリスは何かにぶつかったような衝撃を受けた。

 其処には目には見えない“透明な壁”が存在していたのだ。


「何だ、これはっ!?」


 フリーが力任せに壁を叩くがどうにもならない。


「セレナ姫! 王子――――っ!!」



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「それは結界だ」


 途方に暮れていたフリーたちの背後から、いきなり声が聞こえた。

 驚いて振り向くと、其処には漆黒の髪の男が立っている。


「ハロルド・コル・レオニスっ! 何故、貴様が此処に!?」


 フリーは母グロディアとハーリスを背後に庇いながら、腰の剣に手を掛けた。


「これはブロッドの一族でも一、二を争う能力者リマリオの張った結界だ。お前たちでは到底破れん。王子たちの事は私に任せておけ」

「貴様になら破れると言うのか? だが、何故貴様が王子を助ける? 貴様は……」


 警戒心を露わにするフリーに


「事態は一刻を争う。目覚めたばかりで、制御(コントロール)も碌に出来ない王子の力などリマリオには通用しない。私を信用しろとは言わないが、王子を死なせたくないのなら私の邪魔をするな! 其処で黙って見ていろ、フリー・サルガス!」


 そう言い放つとハロルドは結界に手を伸ばした。



    挿絵(By みてみん)



 凄いっ! やはり、この男は強い! 


 ブラッドの一族でも一、二を争うほどの能力者の張った結界をこうも易々と。

 確かにこの男がその気になれば、今の俺たちなど一たまりもない。

 味方であるなら、これ以上に頼もしい存在は居ないだろう。

 だが、この男を信用していいのか? 


 ――こいつは紛れもなく、敵だっ!――

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