表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第一部
36/236

~第六話~

 俺の戦いは、決して自ら望んだものではなかった。


 何の自覚もないままに……

 ただ運命に翻弄され、巻き込まれただけの哀れな“被害者”に過ぎないのだと、何時も自分を慰めていた。

 けれど、だからと言って逃げ出す事も出来なかった。


 そして戦うには……

 人を傷つけるには理由が要る。


 最初は祖父の仇討ちが理由(それ)だった。


 しかし、やがて理由(それ)は"虐げられた人々を救いたい"という願いに変わっていく。

 それを支えているのは"己は正しいのだ"という想い。

 戦うには大義名分が必要だった。


 だが……

 立場が変われば“善悪”は変わる。

 それぞれの戦う理由、それぞれの正義。

 この世が人の世である以上、絶対的な正義も悪も存在しない。



 異能の能力を持つ一族の族長(おさ)ブラッドの娘テラとの出会いと別れが、そんな俺の戦いの結末を微かに予感させた。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 テラは最初、記憶喪失のフリをして俺たちに近づいて来た。

 俺たちの動向を探るのが目的だったが、あわよくば俺の暗殺を実行するつもりだったのだろう。


 けれど俺たちと一緒に旅をし、サザンの圧政に苦しむ人々を目の当たりにして、彼女は自らの一族の過ちに気づいた。


 それからの旅は多分、彼女にとっても苦悩の連続だったに違いない。


 彼女自身に一族を正したいという想いはあっても、裏切る気など毛頭なかった筈だ。


 しかし、実の姉イサドラが俺たちを襲った時(多分イサドラは俺たちと一緒に、一族を裏切ったテラを粛清するつもりだったのだろう)彼女は咄嗟に俺を庇った。


「ロト、危ない……っ!」



    挿絵(By みてみん)



 その光景は、故郷の村で祖父を失った刹那の記憶と交錯する。


 テラ……どうして? 何で、俺なんかを庇って……?


 何も出来ない。

 ただ見ている事しか出来ない、無力な自分への怒りがこみ上げてくる。


 嫌だっ! もうこれ以上、大切な人を失うのは!


 そう思った瞬間……



    挿絵(By みてみん)



 俺の超能力(ちから)は突如、覚醒した。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「くそ……っ、なんて力だ! まさか、王子の力がこれ程とは……」


 イサドラは脇腹と腕に傷を負っていた。


 俺の力が発動した瞬間、彼女は咄嗟に防御壁(シールド)を張ったが、俺の放った力は防御壁(それ)を易々と貫いた。

 

 全ての力が彼女に集中していれば、当然命は無かっただろう。

 怒りと哀しみに任せて突如爆発した俺の力は制御(コントロール)不能で、それが彼女には幸いしたのだ。


 だが、その場を逃れる為に瞬間移動(テレポート)した事で、彼女の傷は更に悪化していた。



    挿絵(By みてみん)

 テラのエピソードはカットするつもりだったのでキャラクター紹介をしたのですが、やっぱり後悔したくなかったので少しだけ記述させて頂きました。

 これを書かないと、この後の戦いもカットする事になりますし。


 今回はテラの姉イサドラの登場です。

 イサドラとテラは実の姉妹ですが容姿も性格も全く違います。

 イサドラは父親似、テラは母親似という設定なんですよね。

 因みに二人の母親は故人です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ