表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「サザンの嵐篇」~時の道標(みちしるべ)~第一部
31/236

~第二話~

 大国“サザン”は平和で美しい国だった。


 だが、今から約13年前――


 待ちに待った世継ぎの御子の誕生を国中で祝っていた最中、信じられぬ事態が起こった。

 それは王に心酔していた臣下の反乱。

 “乳兄弟”として育ち、“腹心の友”と王が信じて疑わなかった右大臣の裏切り。


 王は(きさき)と産まれたばかりの御子を逃がす為にその命を散らした。

 しかしその甲斐もなく、二人の生死は不明。


 サザンの実権を握った右大臣サンダーは、その反乱に加担した或る一族を率いて次々と周囲の国々を侵略。

 強大な武力と異能を用い、逆らう者には容赦なく、悪魔のようなその所業に“世界”は暗黒の時代を迎えた。


 幾らスィーが辺境の国で世界の情勢には疎いと言っても、それくらいの情報は伝わる。

 何時か、この国にもサザンの脅威が及ぶかもしれない。

 口にこそ出さなかったが、そんな不安を大人たちは抱えていたのかもしれない。


 俺は13歳の誕生日の朝、唐突に祖父からその話を聞かされた。


「その御子様が生きていてくれたらいいね。悪い大臣から国を取り戻して、虐げられた人々を幸せにしてくれたらいいなあ~」


 俺は率直にそう答えた。



 誰もが憧れる“英雄譚”。

 世界を平和に導く“救世主伝説”。


 当然、自身が行動しようとは思わない。

 何処までも無責任で他力本願な願い。

 しかも、それは飽くまでも自分には関係のない遠い世界の“出来事”だと思っていた。


 けれど、そんな俺の想いとは裏腹に運命は動き始める。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「お迎えに上がりました、ロト様」


 白髪に白い髭を蓄えた厳格そうな初老の男が、俺の前に跪いてそう言った。

 その男の背後に控えていた右目に眼帯をした、がっちりした体格の男もそれに倣う。


 村人以外に、誰かが家に訪ねて来た事など一度もなかった。


 じっちゃんに客? 珍しい事もあるなあ~。


 そう思った矢先の、思いがけない出来事だった。


「おお……っ、何とご立派になられて。グロディア様譲りのアル・サドクリクの青銀の髪と翠玉(エメラルド・グリーン)の瞳。そして、亡き陛下に生き写しのその麗しきご尊顔。正に思い描いていた通りの……」


 跪いたまま俺の手を握り締め、涙で頬を濡らす男の声が遠くに聞こえる。



 ついさっき、祖父から聞かされたばかりの“物語”。


 遠い国の……

 自分には無縁の……

 ほとんど現実味のなかった“物語”の当事者が“己”なのだ――とその男は暗に語っている。


 俺は縋るように祖父を見た。


 "全て嘘だ"と……

 "そんな見知らぬ男の言葉を信じるな"と……

 そう言ってほしかった。


 だが祖父(かれ)は済まなそうに俺から視線を逸らすと、深々と(こうべ)を垂れた。


「じっ、ちゃん……」


 その瞬間――

 この男の語った言葉は全て“真実”なのだと、俺は直感した。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 気がつくと、俺は家を飛び出していた。

 頭の中が真っ白で何も考えられない。


 ただ足は、“占い師のお婆”の家へと向かっていた。


 ――旅に出る事になる――


 というお婆の占いはこの事だったのか?

 そう思ったからかもしれない。



 しかし、その途中……

 川の近くを通りかかった時、微かな声が聞こえた。


「未だ、傷は痛みますか?」


 真っ白だった俺の心に、不意に響いた“声”。


「誰か居る? 怪我をしてるのか?」


 俺はその声に導かれるように川辺に向かった。


 

    挿絵(By みてみん)



 俺と“彼女”の出逢いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ