~第五話~
「そんな話を信じるとでも思ってるのかい? 中身は何処にあるんだ!?」
そう言うや否や、女たちは容赦ないESP攻撃を仕掛けてきた。
ロトはそれを防御壁で防ぎながら
「ノアールさん、俺が敵の攻撃を食い止めてる間に此処から離れろ! その男を連れて早く逃げるんだ!」
「し、しかし……」
「いいから行け!」
「分かった!」
そう言うと、ノアールはカノープスを抱えて歩き出した。
ロトの事は心配だったが、彼なら大丈夫だろう。
――俺たちが居た方が、却って足手纏いになる――
ノアールはそう判断した。
それよりも問題はこちらの方だ。
敵は女エスパーだけではない。
まだ戦闘が継続しているのだろう……あちこちで銃声が響いている。
ノアールは僅かな味方と合流して基地からの脱出を計ったが、負傷したカノープスを連れてのそれは困難を極めた。
しかし丁度その時、救援要請を受けた銀河連邦軍がアステリオン基地に到着した。
ノアールは"此れ幸い"とカノープスを彼らに託し、再び基地内に舞い戻った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ロトくん、大丈夫か?」
「ああ」
ノアールがロトの許に駆け付けた時には、もう既に決着はついていた。
ロトの傍らに三人の女戦士が倒れている。
……が、三人とも気を失っているだけだった。
「あの男は?」
「ああ、カノープス司令なら大丈夫だ。ちょうど援軍が到着して、彼らに任せた。それより一旦此処を出よう。事後処理も彼らがやってくれる筈だ」
「そうだな」
そう言ってロトが出口の方に向き直った刹那、倒れていた女エスパーの一人が起き上がり様にロトにESP攻撃を放った。
「危ない、ロトくんっ!」
思わず身体が動く。
ノアールは全身でロトを抱え込んで床に転がった。
「ノア……っ!?」
頭部と背中に感じた強い衝撃。
それは12年前のあの時に酷似していた。
記憶がフラッシュバックする――
…───…───…───…───…───…───…───…
「ノアール……。ノアール!」
俺を呼ぶ声が聞こえる。
ロトくん? 違う、この声は……。
「テ、ラ……?」
テラが俺を呼んでいる。
……怪我はないか?
「今、応急手当するから……じっとしてるんだ」
ああ、良かった。お前が無事なら、それでいい。
「君たち、大丈夫か?」
誰かが走り寄って来る。
……誰、だ?
「……フォーマルハウト! ノアールを……彼を頼む!」
フォーマル、ハウト?
お前の知り合い……なの、か?
「私の名を知って、いる? もしやと思っていたが……やはり君だったのか、ロト!」
ロト……?
何を言ってるんだ? 彼女はそんな名じゃない!
ノアールは思わず飛び起きた。
その瞬間、頭部と背中に凄まじい痛みが走る。
「急に起きちゃダメだ! あんたの治癒能力を高めたから一応、血は止まってるが……暫く動かない方がいい。じっとしてればそのうち助けが来るだろう」
「…………」
女エスパーは今度は完全に昏倒していた。
「済まなかった。あんたをこんな目に遭わせてしまって。俺が手加減したばっかりに……。何度経験しても、人を傷つける事には慣れないんだ」
「…………」
「俺は、もう行く。あんたは兎も角、連邦と接触する訳にはいかないしな」
「待ってくれ、ロトくん! 君に、聞きたい事がある」
立ち上がって入り口の方に歩きだそうとしたロトをノアールは呼び止めた。
「……?」
「君はさっき、ケースの中には最初から何も入ってないって言ったな。あれはどういう意味なんだ? 何故そんな事を知っている?」
「別に、大した意味はない。俺はあんたの任務を把握してる訳じゃないからな。単なるその場凌ぎだ」
ロトには、決して根拠がない訳ではなかった。
フォーマルハウトの目的がノアールを此処(惑星オルフィー)に来させる為だとしたら、ケースの中身は重要ではないと思ってはいた。
だが、まさか本当に空だったとは!
「それじゃあ、あれは……? 君は私に『きっと、此処に戻ると思ってた』って言ったな? 此処に“来る”ではなく“戻る”と。私がこのオルフィーの出身だと、君は知ってたのか?」
「っ!」
ロトはその質問には答えようとはせず、矢庭に踵を返した。
「答えてくれ、ロトくん! 君は……」




