~第三話~
最近よく、テラが外出するようになった。
様子も変だ。
何処がどう変わったという訳ではないが、何かがおかしい。
それは普通では気づかない程度の微妙な変化だったが、ノアールの生まれ持った“天性の勘”がそれを見逃さなかった。
テラに聞いてもはぐらかされるだけだと分かっていたから彼女を直接問い詰める事はしなかったが、だからと言って気づかないフリをしている事も出来そうになかった。
何か、変な事に巻き込まれてるんじゃないか?
悪い奴に利用されてるんじゃないのか?
一人で居ると悶々とよくない想像ばかりが頭を過ぎる。
何度かこっそり"テラの後をつけようか"とも思ったが、自身が追われる身である以上、下手に外出して追っ手に見つかれば、自分を匿ってくれているテラに迷惑が掛かる。
そう思って躊躇っていた。
しかし……
それは虫の知らせだったのかもしれない。
飲み屋の仕事が終わった深夜、こっそり部屋を抜け出したテラの後をノアールは追いかけた。
――テラは俺より強い。心も身体も!――
そんな事は分かっていたが、それでもノアールは彼女を護りたかった。
だが――
「居ないっ?」
通りを曲がったテラを追いかけて角を曲がった瞬間、彼女の姿は跡形もなく消えていた。
「一体、何処に行ったんだ?」
怪訝に思いながら、辺りを隈なく捜したが見つからない。
ドゥオォォオオオ――─――─ン!
その時、凄まじい爆発音が聞こえた。
直ぐ近くなのだろう、衝撃で地面が揺れる。
「テラ……っ」
見ると、爆発音のした方向が闇に紅く照らし出されている。
「火事? まさか、あそこに……!?」
ノアールはその方角に向かって一目散に走り出した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
其処は何かの工場のようだった。
あちこちで火の手が上がっている。
「……テラ! テラァ――――っ!!」
ノアールは必死にテラの名を呼んだ。
彼女が此処に居るという根拠がある訳ではなかったが、ノアールには確信に近い"何か"があったのだ。
その時、噴煙の向こうに人影が見えた。
(テラ?)
声をかけようとした瞬間、テラの死角から何者かが彼女を狙っているのが見えた。
「テラ――――っ!!」
叫ぶと同時に身体が動いていた。
自らの身体を盾にテラを護ろうとしたノアールは、頭部と背中に衝撃を受けたと思った瞬間、意識が途切れた。
「ノアール……! ノアール!」
(誰かが、俺を呼んでいる。……テラ? 怪我はないか? ああ、良かった。お前が無事なら、それでいい)
その直後、自分たちの傍に走り寄る複数の足音が聞こえた。
(誰、だ? お前の知り合い、なのか? 何を話しているのか、よく……聞こえない)
そして、ノアールは再び意識を失った。
二日後――
オルフィーに駐留していた銀河連邦軍空母の医務室のベッドで目を覚ましたノアールは、軍医の制止を振り切って、テラの働いていた飲み屋に舞い戻った。
しかし其処にはもう……彼女の姿はなかった。
以来12年、杳として彼女の消息は掴めない。
ドゥオォォオオオ――─――─ン!
凄まじい爆発音が聞こえた。
「っ!?」
それはアステリオン基地のある方角からだった。
「爆発っ?」
事故なのか?
それとも何者かの攻撃か?
12年前のあの時と同じような状況に、思わず記憶が交錯する。
ノアールは急いでアステリオン基地に戻ろうと走り出した。
その時――




