~最終話~
惑星GHI-EK4で発掘された遺跡。
其処で発見された碑文には、サザンの王(まだ即位していなかったから“王子”と呼ぶ方が正確なのだが)と“ツイホォン”と呼ばれる伝説の魔獣との壮絶な戦いの物語が刻まれていた。
それまで安定した惑星だったGHI-EK4は、その戦いの後、惑星全土に及ぶ天変地異に見舞われ文明は壊滅。
それ以後、周期的な天変地異が至るところで起こる不安定な惑星となった。
「星をも砕く力を持った伝説の魔獣を倒す為に王が使ったとされるのが“アマラントの青い石”か」
その戦いは相討ちに終わり、両者は消滅。
アマラントの青い石も砕け散った。
「確かに“夢物語”だな。文明を滅ぼした天変地異の理由として後付されたものと解釈するのが妥当だと思うが、アマラントの青い石が実在するとしたら、単なる“作り話”と一概に否定は出来ないという事か」
ソールから手渡された書類には箇条書きでそんな内容が記されていた。
アル・ハサム博士の私事な日記の中に散在するGHI-EK4に関する情報だけを、ソールが抜き出してくれたのだろう。
その手間を思うと、ノアールは思わず彼に感謝せずにはいられなかった。
しかし、これだけではあまりにも情報が少なすぎる。
ノアールはダメ元で連邦に徴収されたというスラファト・アル・ハサム博士の研究報告書を調べてみようと思った。
だが"今では閲覧禁止の最重要機密事項扱いになっている"とソールは言っていたが、最重要機密事項どころか、GHI-EK4に関する報告書自体が既に存在しなかった。
「やはり抹消されたのか?」
――SDAが連邦の上層部に入り込んでるっていう噂は、強ちデタラメではないかもしれないぞ――
ソールの言葉がノアールの心に重く圧し掛かる。
その時、通信機の呼び出し音が鳴った。
「ウェルナー大尉。休暇中のところを申し訳ありませんが、サンダー長官からの緊急呼出です。至急、連邦本部にお戻り下さい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ウェルナー大尉、これをある人物に届ける事が今回の君の任務だ」
ノアールが長官室に入るや否や、サンダーは3㎝四方の小さなジュラルミン・ケースをノアールに手渡した。
「これは?」
「中身を君が知る必要はない。君はこれをアステリオンのカノープス司令に渡してくれればいい。その後は、残りの休暇を消化してくれて構わんよ」
「アステリオン?」
「惑星オルフィーの連邦軍基地だ」
「っ!」
惑星オルフィー。
久しぶりに聞くその惑星の名はノアールの心をざわつかせた。
「君は確か、オルフィーの出身だったな?」
「はい」
ノアールにはサンダーの意図が掴めない。
ノアールは“Z・ナンバー”の任務を継続している。
それは何を措いても最優先すべきものの筈だ。
だからこそノアールは、休暇中も何時でも対応出来るようにと常に配慮を怠らなかった。
この任務はそれに追随するものなのか?
それとも――?
故郷を懐かしんで来い等という温情があるとは思えない。
だが任務を遂行した後、休暇を消化しろとわざわざ付け加えたという事は、そのまま“其処”に滞在しろという事なのだろう。
――長官は一体、俺に何をさせたいんだ?――
サンダーはそれ以上の事は何も言わなかった。
あまりにも不可解な任務。
而して彼は、十数年ぶりに故郷の惑星オルフィーを訪れる事になる。
~アマラントの青い石~ 完




