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05.襲撃される猫は

 僕は猫である。名前はあるけどマスターにはまだ教えてない。だから名乗らないでおくよ。

 マスターにまだ名前を教えてない理由? いや、召喚されたばかりなのにテレパシーがすぐ使えるようになるわけないでしょ? 使えたらそれはかなり優秀、またはわけありだけだよ。僕はテレパシーが使えるけど、マスターは僕の声を聞くことさえできない。

 だから明日、マスターの先生の元でコツを教わってから真名の交換儀式をするのだ。

 つまり。

 明日まで僕はマスターと意思疎通ができないんだ。

 でも、僕たち使い魔は人間の言葉が分かるから、はい、かいいえで答えられることなら大丈夫だけど。首を、首がない使い魔は体を、上下か横に振るだけでいい。だから多くの使い魔と主人はそれで初日を乗り切るのだ。それは僕とマスターにも適用される。

 この日数回この方法でやりとりをしたときのこと。

「私は食事をとってきます。あそこは使い魔が入れないのでここで待っててくださいね」

 食堂に着くと、そこにはイスとテーブルがただひたすら並んでいた。僕の背丈は全然ないから、イスとテーブルの脚しか見えないけど、右を見ても左を見ても前を見ても向こうがぎりぎり見えるか見えないかというところ。前は厨房みたいだ。

 入口と厨房の中間ぐらいまで歩き、そこのイスの足元で待たされることとなった。

 マスターが自分ので厨房に行ったところを見ると、どうやら食事は自分で席まで取ってくるらしい。

 キビキビと歩いて行くマスターを見送ったあと、僕は首だけ起こして腹這いになった。疲れていたわけじゃなかったけど、なんとなく休息を取ろうと思ったんだ。

 しかし。

 それは襲撃者――――いや、マスターのクラスメイトによって邪魔されることになる。

「ね、猫だ! 猫だー! 」

 いきなり抱きついてきたその人には見覚えがあった。目を覆い尽くすような前髪、そして淡い青い眼鏡。マスターのクラスメイトで、召喚された人間。確か……フラットという名前だったような。

「あ、オレ君のマスターの友達! 警戒しないでね!」

 警戒してるつもりはない。だからとりあえず首を縦に振っておいた。

 それに満足したかのように笑うと、フラットさんは僕の体をずっと撫でていた。僕の体をなでるその手つきはとても気持ちいい。

 フラットさんに身を任せ、幸せに浸っていた僕に、唐突に疑問が浮かび上がる。

 どうしてフラットさんは僕が友達の使い魔だとわかったのだろうか。灰と黒の虎模様の猫。別に多いというわけではないが、同じような猫が他にいても珍しくはない。なのに僕だと、友達の使い魔だとわかった。

 どうしてだろう。考えても分からない。

 フラットさんの腕に抱かれたまま考え続けていると、突然フラットさんが声を上げた。

「あ、キャム」

「どこいったか探したんだよ? あれ? ……赤いバンダナの猫? あ、もしかしてさっき召喚されてた?」

 フラットさんの友達が僕たちに近づいてきた。

 その会話を聞いたあと、僕の思考はフル活動した。フラットさんの友達の言葉によって疑問が解消されたからだ。

 そうだ、僕は首に赤いバンダナを巻いている。猫なのに? 無属性じゃないの? と思うだろう。そう、僕は火属性だ。猫なのに火属性。

 それには訳がある。まぁ今はそれは置いておこう。

 そうか、だからフラットさんは僕がマスターの使い魔だとわかったのか。猫で火属性と言うのはとても少ないからね。

「ワンちゃんはあっちで待たせてるから一緒に待っててくれない?」

「ん、りょーかい。猫ちゃん、バイバイ!」

 フラットさんは僕を腕から下ろすと、走り去って行った。下町の服を着てペンギン走りをするフラットさんに少し笑った。人にぶつかりそうになったのか、足をつんのめらせていた。

 なんとなく、厨房に向かって行ったフラットさんの友達の、えっと、キャムさん?に視線を走らせる。ゆっくりと足取りで厨房に向かって歩いている。

 すると、丁度マスターがこっちに向かって歩いてきた。手には夕食を乗せていると思われるトレイを持っている。マスターとキャムさんはお互いの存在を確認したのか、立ち止まって一言二言言葉を交わすと、また歩き出した。マスターは厨房に行ったときと変わらないキビキビとした足取りだ。

「待たせちゃってごめんなさい。さて、食事にしましょうか」

 マスターはトレイから僕の食事だと思われるお皿を一枚床に置いた。うん、おいしそうだ。



 その後はマスターに話しかけられながら食事を取り、食後は寮に戻った。

 少し疲れてしまい、欠伸をするとマスターに「眠いですか?」と眠気を孕んだ声で質問された。眠気を少し帯びた頭でゆっくり頷く。そうですか、私も疲れてるので一緒に寝ましょう、とマスターに抱き抱えられ、そのマスターの髪から香る良い花の匂いに包まれながら僕の意識は闇に沈んで行った。


 

 

 


火属性の猫とかやばいな僕。

マスターの名前は考え中です。


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