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04.ワンちゃんの声は

「さっきね、使い魔とテレパシーしたんだ!」

 かけっこで華々しくブルーに勝利したあたしは、さっそく使い魔とテレパシーしたことを喋ってみた。

「お、さっそくか! 何話したん?」

「よろしく、って。ね、ワンちゃん?」

「ワンっ」

 あたしとお揃いの灰色のバンダナをしたワンちゃんは、まっすぐ目を見て返事をしてくれた。これ、信頼関係が気付けてるってことでいいのかな?

「犬っころと仲がよろしいこと……。オレ、シャワー浴びてくるよ。あとは二人だけで仲良くどーぞー」

 二人だけで仲良く、って……。茶化されてる、の?

 言ったとおりにブルーは自分のクローゼットから部屋着を取り出してお風呂場に行ってしまった。そしてここにいるのは、あたしと、ワンちゃん。

 話しかけるべきか、話しかけないべきか。少し逡巡したあとに話しかけることにした。

 声に出した方がいいのか、出さない方がいいのか。どっちにしようかな、とこのことについても少し考える。

 そういえば、さっきテレパシーしたときに『体験したことあるかも』って思ったっけ。あ、でもそれはワンちゃんが返事してくれた時か。……うーん?

「あの、あの、マスター?」

 悩んで悩んで悩みまくっていたらワンちゃんから話しかけてくれた。さっきテレパシーしてくれたときのような頭に木霊するような感じはしない。

 ……え? し……、

「喋った?」

 口から出た間抜けな声。だって、すごいビックリしたんだもん……。

 でも、なんでワンちゃんが喋ってるの……? 今口を開いてワンって鳴いてなかった? 人型を取れるもの以外は喋れないんじゃないの? それとも、あたしのこの耳に何か原因があるの……?

「わぁ! やっぱりマスターはわたしが何言ってるかわかるんだ!」

「どういう、こと?」

「ん? マスター、獣混(ミックス)じゃないの?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 マスターに召喚されてから、ずっと思ってたんだ。どうしてマスターは獣の匂いがするんだろう、ってね。ほんの少しの、獣臭。わたしは犬だから、感じ取ったんだよ。匂いはどこからするんだろう、って思って集中してみたんだ。そしたら、頭から匂いがした。

 マスターのヘッドドレスに潰されているあたりに。匂いの元が、二つ。

 だから、ピンと来たんだよ。もしかして、獣耳かなって。


 もしかして、獣混(ミックス)じゃないのかなってね。


 獣混なら、わたしの鳴き声がしっかりと言葉としてわかるはず。そう思って、返事をするときに「ワンっ(うん)」って鳴いたけど、相手をされなかった。でも、よく考えて人がいるところで返事できるわけないよね。獣混は、あまりバレたくないものだもん。ブルーっていう人が傍にいたのもあるし。

 マスターがテレパシーでよろしく、って言ってきたときはびっくりしちゃった。条件反射でわたしもテレパシーでよろしく、って返しちゃったけどね。

 マスター達の部屋について、ブルーっていう人はシャワー浴びに行ったから、マスターに話しかけるチャンスは今しかないって、思ったの。どうせわたしの鳴き声は傍からみたらワンワン鳴いてるようにしか聞こえないし。

「あの、あの、マスター?」

 そう話しかけると、マスターは笑った後に怪訝な顔をした。

「喋った?」

 マスターの表情については少し気になったけど、マスターと会話できた方がうれしかった。

「わぁ!やっぱりマスターはわたしが何言ってるかわかるんだ!」

「どういう、こと?」

「? マスター、獣混(ミックス)じゃないの?」

「みっくす、って何?」

 マスター、獣混って言葉、知らないんですかって言おうとして、その言葉を飲み込んだ。

 もしかして、

「マスター、わたしの声を聞いたのは今がはじめてなの?」

「う、うん……。テレパシーでなら聞いたけど……」

 マスターは、今のわたしの「あの、あの、マスター?」ではじめて声を聞いた、らしい。つまり、今まで聞こえてなかったんだ。わたしがテレパシーをするまで。しかも獣耳はヘッドドレスをして隠している。そして獣混という言葉を知らない。

 もしかして、マスターって。

 マスターって。

 ×××××なんですか?

「え、っと……。みっくすって、何かな?」

 マスターに話しかけられて、あわてて思考の海から顔を出す。

「あ、獣混っていうのは獣の体が混じってる人間のことを言うんだよ!」

「もしかして、あたしの耳のこと……?」

 わたしに獣耳のことがバレてるとは思わなかったのか、マスターは困惑した表情をしている。

「そうだよ! だからマスターにはわたしの声が聞こえるの。傍から見たらわたしはワンワン鳴いてるようにしか見えないんだよ」

「そう、なんだ……。つまり、あたしはみっくすだから君の声が聞こえるの?」

 マスターは無理やり自分を納得させたみたいだった。ホントに理解しているのかな?

「そうだよ」

「そっか」

 マスターは獣混について一応は納得したみたい。マスターは1人でうんうん頷いたあと、わたしの方を向いて尋ねた。

「じゃあ、他の人の使い魔の鳴き声も何を言ってるかわかるのかな?」

「うーん。無理だと思うよ。マスターも、わたしの声が分かるようになったのはテレパシーしてからだしね」

「そっか。……うん、説明、ありがとう」

 マスターがにっこりとほほ笑む。その表情はとても柔らかいもので。

 たとえ、マスターが×××××であろうと。これからもずーっと付いて行きたくなるような顔だった。ま、わたしはマスターの使い魔なんだから、一生ついて行くのは当たり前だけどね!

「さて、と。ちょっと疲れちゃったなぁ。シャワー浴びて来ようっと。君もおいで」

 マスターが胸の前で両手を大きく広げる。飛び乗ってこいってことかな? じゃあ遠慮なくっ

「わっ元気良いね~。あたし達とブルーで洗いっこしよっか」

 そういうと、マスターはさっきブルーっていう人が使っていたクローゼットとはまた違うクローゼットから服を取り出して、わたしを抱き上げたままお風呂場へと向かった。

 


 洗いっこは、すごく楽しかった。マスターに言ったら怒られるだろうけど、マスターは着やせするタイプみたいでね。そう、すごくおおきかったんだ。何がとは言えないけど。

 ブルーっていう人は……。うん、彼女のためにも言わないでおくとするよ。


 

フラットは貧乳みたいです。決して作者の趣味ではありません。

×××××ってなんだろ。


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