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22.意外にあいつの魔法の才能は

 意外だった。

 ロジスがまったく魔法が使えないなんて、意外だった。むしろおかしかった。

 夕食。なんとなくつるむようになり、昨日からの六人で取っていたわけだが、話は今日の魔法の授業が中心となった。ロジスとチェリアとキャムは孤児院出だから、明日のパーティーには出ない。

パーティーは確かに第二学年の貴族が全員参加ではあるが、偽名を使ってる人は出なくてもいい。モニーは偽名を使っている人であるし、家名を掲げて出てしまった偽名を使ってる意味がないので出ない。そう考えるとナルニーナも偽名だし出ないのだろう。

まぁ、六人中四人はパーティーには出ない。だから必然的に話題は魔法の事になったわけだが……。

「あー、実はボク魔法が使えなかったんだ」

 フラットを除き、みんなが少しは使えたと言っている中でこの発言。

 本人は平然と切り出したがこちらは驚きで一杯だ。顔には出さないがな。

 無属性クラス以外でも魔法を使えなかった人はいたらしい。だからこの発言がおかしいというわけでもない。

 だが。

 ロジスの使い魔はスティーなのだ。小人、なのだ。

 小人は小さくても人型である。エルフには及ばないが人型である。

 つまり、ロジスにはそれ相応の魔法の才能があるはずなのだ。

「うっそだー? ロジー、ぼくを騙そうなんて百年早いよ?」

「いやいやホントなんだって」

 チェリアは一度固まったものの、すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべてロジスをからかう。それにロジスは困ったように両手を前で振りながら答えた。

「ふーん。ま、シフターもオレのお仲間ですね! よろしく!」

 いぇーい、と二人で声を重ねながらハイタッチをするロジスとフラット。フラットはロジスの発言を聞いたとき、目をいつもより大きく開けて口を尖らせて何か考え事をしていたようだがどうでもよくなかったらしい。いつも通りへらへらした顔で笑っている。魔法使えない仲間が出来てうれしいらしい。

 モニーとキャムは意外だとしか言わなかった。そしてロジスの使い魔、スティーは無表情だった。

 怒っているらしく、ロジスが触れようとすると避ける。謝ってもそっぽを向く。この二人に何かあったらしいが、主人と使い魔の事に他人は口を挟むべきではない。とりあえず放っておいた。

 チェリアとモニーの火属性ではマッチを燃やすことから始めたらしい。チェリアは一発で燃やしたらしく、クラスでも相当優秀らしい。モニーは結果を話そうとしなかった。燃やせなかったのだろうか?

 ロジス達は自らの指に針を指して、その小さな傷を治すことから始めたらしい。しっかり魔法が出来なかった人は先生に治療してもらったとか。

 フラットが無属性のクラスの授業内容を言うと非常に驚かれた。地味だ、と。

 そしてモニーはバンダナに特殊な魔法がかけてあることについて非常に驚いた。俺達もそれを今日初めて聞いて驚いたけどな。

「だからバンダナって濡れたり汚れたりしないのですね! 疑問が解けてよかったですわ」

「え、何それ初耳!」

 俺もそれは聞いたことがない。バンダナを付け始めたのは昨日からの事であるし、さっそく汚したモニーにも驚いたのだが。

 特殊な魔法の事とモニーの発言を聞いて、ここにいる五人は全員驚いているわけだが、キャムだけ何かを不審がる様に眉をしかめている。何か不都合があるのだろうか? まぁ置いておこう。

「私、昨日、バンダナを手首に付けたまま手を洗ったのですが、水がバンダナにかかってしまいまして……」

「う? 防水の布?」

「あら、そうですわ。防水の布と特殊な魔法の二つがかけられてるのかもしれませんわ。汚れを防止する魔法もありえますわね」

 私勝手に解釈をしてしまいましたわ、と申し訳なさそうにするモニーを見ながら、特殊な魔法は魔法から防御する役割なのか、または防水などの機能もついているのかと考える。

「よっと」

 考える俺の横で――チェリアが自分のバンダナにソースを付けた。

 唖然。

 ソースは野菜の炒め物に使われていたものだがこの際は置いておこう。

 バンダナは、汚れなかった。それはいいとして。

 こいつは何を考えているんだ……。もし汚れたらどうするともりだったんだ?いや、洗えばいいのだろうけど……。

「んー? この結果じゃよーわからんけど、とりまバンダナにゃ何しても無駄ってことかな?」

 地方の国民の訛を少し交えて言うフラット。

 フラット孤児院が地方にあったのかもしれないが、キャムには訛がない。何故フラットだけに訛が? 今度聞いてみるか。

「そうですわね」

「じゃあボクも」

 そう言いながら自分のバンダナに水をかけようとするロジスに「馬鹿なことするな」と叱って止めつつ、騒がしく夕食の時間は過ぎていく。



 夕食を取り終わり、食堂から出たフラット、キャム、モニーが右に曲がる。寮に帰るならまっすぐでいいはずだが……一体どこへ?

「これから図書室いってくらー(その本読み始めたら呼ぶから説明よろろん!)」

「いってらっしゃーい! また明日!」

 喋りながら俺にテレパシーを飛ばすという荒業をやってのけたフラット。実際にやってみればわかるがテレパシーと言ってることが混ざって変になることが多い。フラットはこういうのは得意らしいが……。才能の無駄遣い……?

 男子寮へと帰る俺達三人の後ろにはルギーとスティーがいる。スティーは相変わらず無表情で、軽くロジスの後ろ姿を睨んでいる気がしないでもない。ルギーはそんなスティーに抱きしめられており、「ウュー?」と鳴いてスティーのことを気にかけている。……ルギーって鳴くのか。

「何があったんだ?」

「色々、ね」

 意味深そうなものを言葉に含ませるロジスに「へえ」と言っておく。これ以上詮索されるのはよしてほしいのだろうし。

 フラットにはどう説明しようかと考えつつ、三人で雑談をしながら寮に帰った。


フラットが真っ先にバンダナを汚してみようとするものですがね

スティーは不貞腐れてます。


感想、評価、アドバイスなど頂けたら幸いです。


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