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21.考えてなさそうな相棒は

 昼食を食べ終われば授業が待っている。

 エジーマと別れて灰組の教室に向かう。途中でロジスと合流した。

 第二学年からは午前中が魔法、午後が勉学である。午後の最初の授業は歴史であり、真面目にノートを取っていれば寝てる人もいる。……特に相棒とか。

 定位置である右列の最後尾にロジスと並んで座っているわけだが向こうの向こうで相棒が授業も聞かずにウトウトしていた。

なんとなく、イライラした。

こいつはっ! 勉強ぐらい真面目にしないか! 次期騎士の使い魔として色々、っ!

エジーマとそういうことを話したからだろうか。どうやら自分の心は少し荒れているようだ。大体召喚したのは俺自身であり……、これが俺の実力だったということが証明されただけにすぎないのだ。

フラットは普段から授業中は寝ていたりする人だ。別に今日に限った事でもない。国に恩を返す気はあるのかと訊けばあるのだろうけどやる気は感じられない。

今の授業は俺がすでに家で学んだものであり――学園でやる魔法以外のことは大体やったことあるものなのだが――フラットも寝ているし、起こすついでに明日の事を言ってしまおうか。

「(おい起き)」

 ろ、と言おうとするとフラットがハッとしたように顔を上げ背筋をまっすぐ伸ばした。ゆっくりと左右を見て前を見る。教団では先生がいつもの様子で授業をしており、先生に呼ばれて起きたのではないことを理解すると安心したように背筋を曲げた。

 隣のキャムに自分を起こしたかどうか確認するように、身振り手振りを付けて一言二言小声で交わしている。キャムが否定するように横に頭を振ると、フラットはふーんとでもいうように口を尖らせて縦に頭を振った。

 机の上に転がされていた鉛筆を持ち黒板に書かれてことをノートに写していくフラット。……ノートを書き始めてしまったなら話しかけるのは申し訳ないし。いや、起きたらノートを写し始めるのは当たり前じゃないか。何故自分はさっき起こして話そうと思ったのか。

 変なことを考えて自分に呆れつつ、鉛筆を持ってフラットと同じように黒板を写す。やったことはあるし覚えてもいるが復習することが悪いわけがない。

 とりあえず、授業中にフラットに明日の事を話すのは諦めて授業後にすることにした。




「(今平気か?)」

 授業の後、寮に着いたあとにフラットにテレパシーをする。

 今日の教室はいつもと違い、初の魔法授業の事もあるが貴族の生徒による明日の話題で持ち切りであった。

 クラスの人気者と言えど当事者ではないフラットは話の輪に入れるはずもなく、放課後教室に残って話し続ける生徒を余所にキャムさっさと教室から出て言ってしまった。モニーも一緒に出て行こうとしたがフラットに止められていた。

 話をしていたのは基本的に女子生徒であるが、男子生徒も全く話さないわけではない。俺も話を振られたらきちんと返すが、使い魔が使い魔であるためか全く話しかけられなかった。前に座っていたのは二人の男子生徒だったが、一度こちらを見たあとは気にしているのか話し声が小さくなった。

 俺がいるとその二人の男子生徒は話しにくいだろうし、フラットやキャムと同じように孤児院出身であるロジスも話すことがない。ロジスと目を合わせ帰ろう、と合図をして立ち上がる。自分の使い魔の小人を抱き上げながら頷いて立ち上がると俺の後ろに続いて歩き出した。

 廊下に出るとフラットがキャムと腕を組んでのんびりまったり歩いていた。腕はフラットが一方的に組んでいて体重までかけており、その二人の後ろにはキャムの使い魔のルーがいる。

 ゆっくりと喋りながら歩く二人の隣をロジスと通り越すと、「ばいばーい」とフラットに脱力した声で言われた。キャムには「じゃあね」と小さな声で言われて思ったのだが、何故同じ孤児院の出であるのにここまで違うんだ。いや、人間だし、と自己完結する。

 寮に着いたあとにフラット達がそのまま歩いていたらそろそろ着いてるかという時間を予測してテレパシーをしたわけだ。

 中々応答しないので都合が悪いのかなと思い、あとでまたテレパシーで話しかけようとしたところに返事が来た。

「(ごめ、遅くった! なんぞ?)」

「(明日の事なんだが)」

「(ん? 明日は貴族の使い魔おひろ……あ。そか、そか、そっか。あー……)」

「(知ってるなら話は早いんだが)」

 モニーとも仲がいいし、明日の事は知っているのだろう。ただ自分が行くとは考えていなかったとか。

「(んー……)」

 けれどもフラットは何か思い悩んだように唸っている。普通の女子ならばどんな形であれパーティーに出席できるのはうれしいことのはずだよな? まぁフラットがそういうのを好まないのはなんとなく察するが……。

「(あのー、ですねー……)」

「(なんだ?)」

 何か嫌な理由でもあるのだろうか?

「(こう、アンダールイスは次期騎士ではないっすか。んで、少なからず期待されてるってかされてたっしょ? なんだっけ、お父様が先代の王族守れなくて色々恨まれてるとかそんな感じもあって? それに普段は頭もいいし? そんで結局召喚したのは魔法使いカッコ生徒カッコ閉じ。けれども馬鹿で体力なくて魔法も使えない。風当たり、強い、よね……?)」

 不安と戸惑いを声に含ませる使い魔に、少し、驚いた。

 フラットは色々考えているのだ、と。

「(あ、明日空いてるは空いてるよー?)」

 さっきと変わっていつもののんびりした口調で話しかけられる。フラットらしいといえばフラットらしい。何か深く考えているのはフラットに似合わないというか。

「(複雑ですまないな)」

「(ううん気にしない気にしない。一応君の使い魔だぜマスターよ!)」

 テレパシーだと言うのに無駄に明るい声だ。一人部屋の中でフッと口から笑いを洩らす。

「(時間は――)」

「(あ、ごめん、ちょと用事が! 時間なら他の子に聞くまたは夕食のあとってことでばーい!)」

 午前、と続けようとしたところで一方的に会話を終わらせられてしまった。

 夕食か……。

 六人組での食事。去年はロジスと二人で取っていたりしたが基本的には一人だった。大人数で食事を取るのはあまり好きではないが、何故だろう。この六人で食事をするのは悪くない。……相棒のおかげか? まさかな、と思いつつ自分のベットに倒れ込んだ。


フラットは意外と考える子だった。まぁそうじゃないと庶民でクラスの中心やってらんない。


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