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18.相棒の魔法の才能は

「普段の授業で学んだことがあるだろうが、無属性と言うのは戦争がなくても役に立つ属性だ。どのような点で役に立つか知ってるか?」

 そういうと、先生は教室をぐるりと見回した。属性の特徴は基礎中の基礎であるから、みんな知ってい

「なん――け?」

 ……どうやら相棒は知らないらしい。キャムにこっそり尋ねていた。

 が、先生がダッシーという人、エジーマという人、俺、と右から――先生からしたら左から――見ていき、俺の左の人物で視線を止める。

 丁度キャムがフラットの質問に答えようとしていたが、先生に視線で直接的にではないとはいえ注意されてしまえば言うことは出来ない。

 目を向けられている当の本人は奇妙な、笑い顔と言えるか半端な顔をして下を向いた。メガネから焦っている雰囲気を感じる。……何故メガネから感じるのだろうか。

「フラット。答えてみろ」

 名前を呼ばれると下を向いたまま頬をピクッと引き攣らせた。そして俯いたままゆっくりと立ち上がる。

「……え、と。……え、あえ」

 頭がパニックになっているのか声に焦りが滲み出ている。パニックのために頭が回らないのか、自分で答えようと思っているのかは知らないがテレパシーで俺に訊くということはしないらしい。

 いつもの授業ではこのまま「わかりません」と言って違う人に回答権が移る。たまに答えているが……。

「……ざ、雑用です」

 ……答えた。顔に浮かぶ表情からして精一杯頭の中の知識を振り絞って答えたらしい、が。

「あー……確かに、その通りだな」

 雑用だなんて授業は説明してはいないのだ。

 先生は困ったような顔をしたあと、腑に落ちたとでもいうように顔を少しだけ呆けさせた。どうやら雑用という言葉に心当たりがあるようだ。

「でも響きが悪い。他の奴にも当てるぞ」

 その一言にフラットが着席する。

 先生はそのまま視線をフラットからキャムへ、キャムからナルニーナへと映すとそこで止まった。

「ナルニーナ。お前が答えてみろ」

「は、はい!」

 慌てたように立ち上がるナルニーナと言う人。バタバタしているが答えることはできるらしい。……まぁ、こういう基本問題を答えられないほうが珍しいのだが、と自分の相棒を考えながら思う。

「ひ、日ごろから常に人を手助けする役割です!」

「そうだな。じゃ、座っていいぞ」

 慌てふためきながら答えたナルニーナはその一言を聞くと、安心したように息を一つ吐いて座った。立ちあがったときとは違い、座り方には気品がある。やはり貴族なのだろう。

「ま、レアで頼りにもされるけど、所詮は雑用だが……魔法を使うのには変わりはない。それに、無属性と言うのは一番魔法の素質があるといっていい。」

 雑用と聞いて意気込みが下がっていくエジーマを見て、一息置いてからこの授業の内容をもう一度確認させる。魔法を使う、という点にやる気を復活させたようだ。……エジーマという人は単純なのか。

 無属性が一番素質がある? 授業でやったことはないし、先生が自分の属性を上に持ち上げたいだけなのかもしれないから真偽はわからない。だが先生はそういう性格ではないのだ。

「まずは……色を変える魔法でもやるか」

 やっと魔法の授業に入るらしい。変色魔法か……。

 隣からは「うわー――雑用――――」などと聞こえるがその声には期待が滲み出ている。

「対象にするのはみんなが巻いているこのバンダナだ」

 先生はそう言いながら自分の手首に付けているバンダナを外す。

「だが、このバンダナには悪戯、他属性に変装するのを防止するために特殊な魔法をかけてある。それを解禁するから、みんな動くなよ」

 魔法を使うのに必要なのは念だ。基になるのはその一つのみである。

 念じている間に動かれると照準がずれて失敗しやすい。ウドさんのように熟練された魔法使いは、狙いが動いていても簡単に魔法が使えるらしい。

 先生は静かに、一人一人の手首についているバンダナを見ていく。一人数秒かけてバンダナを見ていき、魔法を解いているのだろう。

「よし、いいぞ」

 動くなと言われ張りつめた空気が流れていた教室がその一言で一瞬にして気が緩む。

 唯一それを感じさせなかったのはフラットぐらいだ。相棒は机に突っ伏していた。寝ている様子はないが動く様子もない。動くなと言われてからそうしているがわざわざ突っ伏さなくてもいいと思うのだが。

「じゃあみんなバンダナを外して変色魔法をかけてみてくれ。あー、キャム。お前の好きな色を行ってみろ」

「あ、はい、桃色です」

「桃色か。女の子らしくていいな」

 先生に褒められたために照れて顔を真っ赤にしているキャム。心なしかその隣でフラットが先生を睨んでいるような……しかもダシタムという人も先生を睨んでいるような……。

 二人の視線に困ったような顔をしながら口を開く。

「このバンダナが桃色になるようやってみろ」

 その言葉にみんなが念じ始めた。




 結果。

 俺はできた。ダシタムという人もできた。キャムは少し俺のより色が薄かったが、キャムの中では桃色がそういう色なのだろう。エジーマという人は灰色と桃色が混じった色に。ナルニーナという人は一部がきれいな桃色となったがほとんどは灰色のまま。

 肝心の相棒のフラットは。

 ……変化、なし。灰色のままだった。

 本人は魔法が使えなかったことにショックを受けることもなく、

「魔法無理だー」

というように気丈に笑っている。落ち込んでいるのを悟られないように笑っている、という訳でもない。

 このことを気に俺はある事実に直面してしまった。

 俺の使い魔は体力がなく、馬鹿であり、魔法の才能もない、と。


キャムが照れたので先生を睨む。ちょっとした嫉妬だと思われ

キャムは優秀です。×××××だから。


感想、評価、アドバイスなど頂けたら幸いです。


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