第二十二章 新たな決意
暗くなった霜白の町に、明かりがぽつぽつと灯りはじめる。石畳の通りには、握った手を楽しげに揺らす三人の影が落ちている。
雪姫は幼夢と早智乃の二人に手を繋がれながら、人気の少なくなりだした通り進んでいた。
その表情は明るく、晴れやかであった。もう大きく息を吸い込んでも、すすり上げることはない。
心の中で、先ほどのことを振り返る。
道のど真ん中で、雪姫は人目も憚らずにわんわん泣いた。いい歳して、鼻水まで垂らして、盛大に泣いたのである。羞恥を通り越して、むしろ清々しい。
あまりにも派手にやらかしたので、見ていた側も気持ちよかったのであろう。雪姫が泣き止んだあとは皆で笑い、じゃれ合って揉みくちゃになりながらまた一緒に笑った。
それから皆は屋敷までの道を、わざわざ遠回りしてくれた。お陰で、泣き腫らした目は落ち着きを取り戻しつつある。
「僕達だけ仲間外れなんですかー? そろそろ仲間に入れてくださいよ~!」
後方を歩いていた粋が、悪戯ぽく抗議する。早智乃が肩越しに、つんと鼻を高く上げてそれに応じた。
「五人で横一列に並んで歩いたりしたら、通行の邪魔です。我慢なさい」
締め出しである。
ここでまた笑いが起こった。雪姫も笑った。
さっきからずっとこんな調子が続いている。
不思議であった。散々泣いて、溜め込んだ感情を出しきったからだろうか。さらに、たくさん笑ったからだろうか。絶望的な状況であることに何ら変わりはないというのに、思考の方はすっかり前向きに変わっていた。
氷姫はいない。けれど、あきらめない。
きっと、何か別の手立てを考えてみせよう。最期まで白き闇に抗うと誓おう。今なら。今の雪姫ならば、自身を奮い起こし、もう一度立ち上がることができる。
(大丈夫、私は──)
まだやれる。まだ、頑張れる。
疾風が涙をくれたのだから。
こうして涙を受け止めてくれる、仲間がいてくれるのだから。