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氷雪記  作者: ゐく
第二部
20/101

***

  むかしむかし。あるところに、「氷」という名の美しく、心優しいお姫様が住んでいました。


 お姫様は、皆から氷姫(こおりひめ)と呼ばれていました。


 しかし、氷姫は普通の人とは違っていました。

 それは、生まれつき強い霊力と、雪のような白い肌と、輝く銀色の髪を持っていたからでした。そしていつまでも年を取らず、ずっと若い娘の姿でいられたからでした。


 人々は氷姫のことを“生き神様だ”と言って崇めていました。




 ある日のことです。氷姫は夢を見ました。それは予知夢でした。

 もうすぐ夏になろうという頃なのに、霜が降りてくる夢です。


 寒さを呼ぶ災いの霜が降り、そのせいで村や町は凍りつき、目も開けられないほどの激しい吹雪が何日も何日も続くという、とても恐ろしい夢でした。


 なぜそのようなことが起こるのかは、わかりません。しかし、氷姫には強い霊力があります。災いの霜が降りる時、氷姫は霊力を使ってそれを防ぎ、国の人々を救ったのでした。



 ところが、この災いの霜は再びやってきました。

 今度は遠くの国に霜が降りるという夢を見た氷姫は、その国の人々を助けに行こうとしました。でも、皇宮を出ることを許してはもらえませんでした。それどろか、閉じ込められてしまったのです。


 そうしているうちに、遠くの国に災いの霜が降り、村や町に吹雪が襲いかかりました。


 その国は雪と氷で閉ざされ、逃げ遅れたたくさんの人達が凍えて死んでしまったのでした。

 吹雪が止むまでは、誰もその国に近づくことはできなかったそうです。



 噂は、たちまち他の国にも広がりました。そして災いの霜は「白き闇」と呼ばれ、恐れられるようになりました。


 氷姫は泣きくずれました。無理にでも皇宮を出ていれば、多くの命を救えたはずです。

 深く後悔した氷姫は、皇女という地位を捨て、皇宮を出ることを決心しました。


 追ってくるたくさんの兵士たちも霊力を使って追い返し、なんとか外に出ることに成功した氷姫は、そのあと、たった一人でいろいろな国を旅してまわりました。

 そして、その後もたびだびやってくる白き闇に誰よりも早く気付き、すぐにその場に駆け付け、人々を守りました。


 お陰で、もう二度と白き闇のせいで村や町が猛吹雪に襲われることは、なくなったのでした。




 これは、遠い遠い昔のお話です。

 風見ヶ丘に雪姫という名の女の子が生まれるより、ずっとずっと昔のお話……

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