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月神の都、アキウトゥミクの物語 9
月神を奉じる最大の王を打ち破った将軍エルミアスは、時をおかずにアキウトゥミクを包囲した。月神の神殿の富を我が物とする為である。しかし大規模な地震がおき、都市は地割れに飲み込まれた。都市を包囲していた軍勢も壊滅的な被害を受け散り散りになった。
将軍の親友であり、智将と呼ばれたルシウス将軍はエルミアス軍壊滅の知らせを聞くと自らの持ち場を直ちに放棄し、アキウトゥミクへと急いだ。そして自軍をアキウトゥミクに一番近い都市へ駐留させ、エルミアス軍の生き残りを捜した。行方不明になったエルミアスの消息を尋ねる為であった。
しかし、はかばかしい情報は得られなかった。仕方なくルシウス将軍は、単身アキウトゥミクに向かった。他の誰も月神の怒りを恐れてアキウトゥミクに近寄ろうとはしなかった為である。